「名工の肖像」
令和元年( 2019年 )は、色々な出来事があった年でした。
大きな出来事としては、2019年4月にコスモテックの現場が箔押しの匠 佐藤勇から現場リーダー 前田瑠璃に引き継がれたということ。 11月には匠 佐藤勇が天国へと旅立ってしまったということ。
そして、来たる12月。
僕が楽しみにしていた書籍 『 印刷・紙づくりを支えてきた 34人の名工の肖像 』( 著者 雪朱里さん、写真 池田晶紀さん・川瀬一絵さん )が発売します。この書籍は、『 デザインのひきだし 』に長年連載している、日本の印刷や紙づくりを支えてきた凄腕の職人や技術者達へのインタビューをまとめたものです。
我らが箔押しの匠 佐藤勇も、名工34人の一人として名だたる方々と共に掲載されております。
【 内容紹介 】
印刷現場を生き抜いた名工の言葉に潜む学びと感動。
『 デザインのひきだし 』で好評連載中の連載 「 名工の肖像 」。
日本の印刷や紙づくりを支えてきた凄腕の職人や技術者にその仕事について、心がけて来たことについて丁寧に取材し、迫力ある写真とともに紹介しているこの連載を書籍化。
書籍用に分かりにくい専門用語には注記を入れ、新規取材も加え、活字や文字・組版などの印刷前行程から、紙、製版、印刷、製本まで、印刷物をつくる分野を網羅した名工たちの貴重な記録。
『 デザインのひきだし 』 5号( 2008年6月 )~37号( 2019年6月 )までの全記事を再録( 約11年間分 )A5判全352ページのボリュームです。
佐藤へのインタビューが掲載されたのは 『 デザインのひきだし11号 』( 2010年10月発売 )の 「 名工の肖像 」。 今から約9年前です。 「 名工の肖像 」 の取材を受ける前、佐藤は古い箔押し機での事故で自身の片手の指を失いました。
「 名工の肖像 」 の取材時に撮影していただいた写真でも、お客様や皆様に心配かけまいとして、怪我した方の手をさりげなく隠して笑っていた姿が今でも脳裏から離れません。この 「 名工の肖像 」 に佐藤が掲載されたことは、当時の佐藤にとって辛い怪我の治療を支える喜びでもあり、コスモテックにとっても大きな救いでした。
平成から令和に時代は移り変わろうとする春に前田瑠璃がコスモテックの現場リーダーになり、そして秋には佐藤が天国へと旅立ち、冬の始まりに書籍 『 印刷・紙づくりを支えてきた 34人の名工の肖像 』 が出版される。
このタイミングで書籍が出版されたことは、偶然であることは分かっているのですが、なんとなく何かのめぐり合わせのような気もしてしまうのです。
「 名工の肖像 」 内には僕が知らない、同じ時間を共有していない時代の佐藤のことも語られております。 僕がコスモテックに入社したのが約15年前。それから コスモテックのブログ - ようこそ!行列のできる『箔押し印刷工房』へ を立ち上げ、良い時も悪い時も、佐藤と共に二人三脚で走って参りました。
匠 佐藤勇から現場・技術・そして意志を引き継いだ、リーダーの前田瑠璃( 前田の note は こちら )は、学生時代に僕が制作・更新していたコスモテックのブログを見ていたとのこと。
まさかその後、前田自身がコスモテックのメンバーに加わり、佐藤からリーダーを任されるなんてことは、当時の前田には想像もつかなかったことでしょう。
さまざまな偶然の出会いやご縁が重なり、たくさんの人々に応援していただきながら、今もコスモテック号という小さな小舟は着実に大海を進んでいます。
書籍 『 印刷・紙づくりを支えてきた 34人の名工の肖像 』 の出版は、僕にとっては佐藤勇という箔押し職人と共に築いたひとつの時代の締め括りになったように感じます。
そして、コスモテックにとっては一つの区切りであり、新たな旅の始まりでもあると思うのです。
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