「『 印刷加工連 』 と 強い『 心 』」
今からちょうど6年前。2012年春。
特徴の異なる6社が集結して、結成されたのが『 印刷加工連 』 です。
篠原紙工・小林断截・鈴木製本・東北紙業社・オールライト、そして僕が所属するコスモテックもメンバーの一員です。
結成以降、各社の技術を取り入れた紙文具を開発・製造・販売したり、ワークショップの開催、イベント参加等、たくさんの出来事がありました。そして、 『 印刷加工連 』 を通して、多くの新しい出会いが生まれました。
結成以前、それぞれの会社が書籍やメディアなどに取り上げられているのを見て、お互いにその存在を知ってはいたものの、一同に介する機会はありませんでした。人づてに聞いていた各社の高い技術力に興味を抱き、その存在を意識していた僕は、いつか一緒に仕事をしてみたいと思っていました。
僕は 『 印刷加工連 』 のメンバーが大好きです。
技術力の高さはもちろんですが、各社の本当の強みや僕が尊敬していることは、強い 『 心 』 があるところです。
これは圧倒的だと思います。
武道における 『 心、技、体 』 は、仕事に対しても同じことが言えます。
その中で一番鍛えることが難しいのが 『 心 』 の在り方です。
どのような 『 心 』 で仕事やお客様と向き合っていくのか、加工と向き合っていくのか、デザインと向き合っていくのか…。『 心 』 の中には、大事なことが詰まっています。
『 心 』 の部分を鍛えるという作業は、技術力向上や体力アップ・体制づくり以上に困難です。『 心 』 には目に見える形がなく、その成長は数字では計れません。 『 心 』 の正体は 「 これが答えだ 」 というはっきりしたものはありませんし、そもそも答えなどないはずですが、僕が 『 印刷加工連 』 での6年間から感じた 『 心 』 のキーワードは、 『 優しさ 』『 思いやり 』『 気づき 』 の3つです。
『 優しさ 』
2012年11月 SPEAK EAST! VOL.3 に参加
『 印刷加工連 』 のワークショップには、小さなお客様もたくさんいらっしゃいます。初めて見る機械や加工に子供たちは目をキラキラさせて、あふれ出す好奇心で僕たちを質問攻めにし、動いている機械に手を出そうとしてきます。
そんな時、 『 印刷加工連 』 のメンバーは子供たちに分かり易い言葉を選び、笑わせたり、驚かせたりしながら楽しそうに対応しています。子供たちが危ない思いをしないように、声掛けや、機械の動きや配置にも気を配っています。
『 印刷加工連 』 のメンバーは、決して子供の扱いに慣れている者ばかりではないはずなのですが、子供たちの相手をしている様子を見ていると、子供たちが楽しく安全に過ごせるように配慮していることがよく分かります。
また、大人の参加者の中には印刷加工に興味があったり、業界に精通し、専門的な相談をしたいお客様も多くいらっしゃいます。そのようなときには、こちらも専門的な解説や一歩踏み込んだアドバイスをさせていただくこともあります。
訪れるお客様によって、その対応を臨機応変に変化させることも 『 優しさ 』 のひとつであると思います。これは当たり前のようでいて、実はなかなか難しいことでもあるのです。特に子供への対応は、面倒で厄介に感じ、ぞんざいな扱いをしてしまうワークショップも、実はよく見かけます。
子供たちは 「 未来 」 です。「 可能性の塊 」 です。
『 印刷加工連 』 のワークショップが子供たちの運命を変えることだってあるかもしれません。僕は 『 印刷加工連 』 を通して、そんな子供たちの可能性を伸ばすお手伝いが出来ることを幸せに思っています。きっとほかのメンバーも同じ気持ちでいるからこそ、 『 優しさ 』 に溢れた対応が出来るのだと思います。
『 思いやり 』
2013年2月 印刷のいろは展2013 に参加
「 思いやり 」 は、馴染み深い言葉である一方、ぼんやりしてとらえどころがないような感じもします。言葉で表すのは難しいのですが、「 相手の気持ちに寄り添う 」 ということが一つの解釈ではないでしょうか。
『 印刷加工連 』 の製品にも 「 思いやり 」 が詰まっています。
『 印刷加工連 』 の製品は見た目がとてもシンプルです。
年齢や性別に関係なく、誰が持っていてもしっくりきます。
そして、一見なんの変哲も無い普通の文具ですが、使ってみると手放せなくなる使い勝手の良さを感じます。「 神は細部に宿る 」 という言葉がありますが、『 印刷加工連 』 の製品は細部にこだわりと工夫が詰まっています。
例えば、リングがななめに取り付けられた 「 ななめリングノート 」。これは本文の書き味の良さはもちろん、ページの端まで書き込んでもリングが手に当たって邪魔することがなく、いい気持ちで書き進めることができる夢のようなノートです。
また、表紙と裏表紙はしっかりとした固さのある素材で出来ており、手で持って書いても、膝の上で書いても、ふにゃふにゃせず書きやすいのです。そして、リングの対角線上に取り付けられたバンドが、表紙をしっかりとホールドし、大切な本文を守ります。
これは書く人の気持ちに寄り添い、使っている姿を想像して工夫を凝らした結果出来上がった製品です。そこには 『 印刷加工連 』 の 「 思いやり 」 がたっぷり詰まっています。
新製品を開発するミーティングでは、使ってくださる方の気持ちや使い勝手を考えたアイディアや意見がばんばん飛び交います。そこには会社や立場の違いによる垣根や遠慮はありません。そうして出来た製品には、惚れ込み、何度もリピートしてくださる方がたくさん見受けられます。それが 『 印刷加工連 』 の 「 思いやり 」 が伝わった結果だと思うと、僕もうれしくなるのです。
『 気づき 』
2013年10月 印刷加工連の解剖展 を開催
『 気づき 』 は、問題解決能力にも繋がります。
と言っても、難しい話ではありません。 道端に咲く花にふと目が留まり 「 この花の名前は何ていうのかな? 」「 花のにおいがする季節 」 など、ちょっとした発見をしたり、変化に気づいて感動できる人は、仕事にもその力が活かされていると感じます。
自分が日々行っているアクションが 「 本当に正しいことなのか? 」「 誰かのためになっているか? 」「 時代に合っているのかな? 」と、ふと立ち止まって考えることは、新しい道へ踏み出すきっかけを掴むことにもつながります。
惰性のままに、変化の少ない流れの中で過ごすことは楽です。
人として、大人として、自身を磨く作業を絶え間なく続けるということは大事なことだと皆知っていますが、それはある側面では苦痛を伴うため、楽な道を選んでしまう人が多いことも事実です。それでも、人生にとって努力を続けること、自分を磨き続けることは必要なことなんだと、僕は 『 印刷加工連 』 と接する中で学びました。
2013年9月 The Tokyo Art Book Fair 2013 に参加
『 印刷加工連 』 のメンバーが集まれば、話題は加工、加工、加工のことばかり。『 心 』 についての議論なんてしたことがありません。
それでも 『 印刷加工連 』 のメンバーを知れば知るほど、この人達のここが凄い!というキーワードは 「 技術力 」 や 「 デザインの良さ 」 ではなく、強く、真っ直ぐな 『 心 』 だと思うのです。
彼らは、自分を磨き、変化していくことをやめません。
向上心の塊で、常にアンテナを張り巡らせ、学び、どんどん前へ進んでいきます。僕もそんなメンバーに置いていかれないように、振り落とされないように、必死に食らいついています。
会社が違っても、扱う加工や製品が違っても、熱い志をもって、同じ方向を見て歩く仲間がいるということは、こんなにも心強いことなのだと、僕は 『 印刷加工連 』 を通して知りました。
2013年8月 印刷加工レンジャーと、秘密の工作基地 を開催
素晴らしい仲間たち
人間的に素晴らしい人というのはどんな人でしょう。
決して頭が良いだけの人ではなく、お金持ちなだけの人でもなく、社交的なだけの人でもないはずです。その人に 『 心 』 がなければ、あっという間に周りの人は離れていってしまいます。
鍛えられた強い 『 心 』 を持っている人は、たとえ見た目に華やかではなくとも、内側からにじみ出る魅力で人々の気持ちを掴んではなさない人です。
僕の周りにいる素晴らしい 『 心 』 を持つ人々、『 印刷加工連 』 は、仕事との向き合い方、人との向き合い方を僕に教えてくれた大切な仲間です。最初は期間限定のつもりで始まった 『 印刷加工連 』 も、結成からもう6年経ちました。
会社や立場の違いがあっても、お互い探りあったり、試したりせずに、本音で向き合える仲間が出来たことはとても幸運なことであったと思います。たくさんのことを学ばせてくれ、これからも一緒に成長して行きたい自慢のメンバーたちです。この出会いに感謝し、共に活動できる幸せをかみしめている僕なのでした。