次世代と共に、これまで見たことのないマンションをつくってみよう。
※上部掲載の写真は2022年4月に撮影したものです。
―どのような取り組みを行ったのでしょうか?
当社のリノベーションマンションの見学や、
学生たちが感じている住まいに関する疑問などを
ワークショップを通して再認識しました。
そこから、社会的意義があり、本当に実現できるのかという
観点からアイデアを絞り込み、2つのテーマを選定しました。
そのテーマをリノベーションマンションとして、
商品化した取り組みになります。
テーマ①「推し活」
日ごろ生活する中で、自分の推しとなる存在がいる。
その推しを応援したい、育てたいなど、
“好き”の捉え方や表現が広がった昨今。
その”価値観”・”文化”を堪能できる空間
生活空間の2つに切り分けることで、
推し活に専念できる暮らしを提案しました。
テーマ②「日本の感性」
”もともと日本で大事にされてきた
住まい方というのはどうだったのだろうか”
そんな疑問からスタートしました。
いわゆる“和風”の住まいではなく、
環境や社会と共生する日本古来の生活風習 や感性を、
現代のマンションでの暮らしに再構成した住まいづくりをめざしました。
物件見学と課題発見ワークショップ
当社のリノベーション物件を見学して、
学生が感じている社会課題や住まいに関する話題の要素を、
ブレインストーミングで抽出していきました。
その中で社会人の私たちが考えもしなかったアイデアが、
学生のみなさんから沢山出てきました。
とても新鮮な気持ちと若いパワーを前に
若干の焦りを感じる社員一同。。
「5年後のスタンダード」&「社会課題」のアイデア出し
ワークショップで得た気づきやキーワードをもとに、
企画テーマである
「5年後のスタンダード」「社会課題の解決」において、
具現化できそうなアイデアを検討していきました。
そして、社会的に意義があるのか、本当に実現できるのか
といった観点からアイデアを選定し、
より価値観が多様化する社会に向けて
「推し活」と「日本の感性」をテーマにしたアイデアを
検討する運びとなり、
ここから社員・学生ともに2つのチームに分かれて、
それぞれのアイデアを具現化していくフェーズに進みます。
それぞれのテーマ×住まいのリサーチ
テーマ「推し活」では、
近年、推し活の聖地となりつつある
池袋サンシャインシティ周辺での街頭インタビューを通じて、
「推し活をしている人が普段どんな生活をしているのか」
「また、住まいに何を求めるのか」
などをリサーチしました。
みなさんの推しへの熱い想いを聞き、
推し活をする人へ理想の住まいを届けたい想いが強くなり、
心をひとつに取り組もうとチームワークが深まる
機会になったことも印象的。
さらに、ホテルで推し活プランを提供している
弊社アパートメントホテル『MIMARU東京 八丁堀』の見学を通じて、
内装やプロモーション方法などの具体案を検討していきました。
テーマ②「日本の感性」では、
日本で大事にされてきた住まい方というのはどうだったのだろうか、
という問いから、
文化的価値の高い歴史的建造物を移築し、
復元・保存・展示する野外博物館の『江戸東京たてもの園』の
見学を通じて、伝統的な住宅や古民家の調査研究や、
空間の使い方や、季節に合わせた暮らしなどを
大切にした住まいを考えました。
商品化に向けて
テーマ①「推し活」では、
リサーチやディスカッションを重ね、
そこからお客様のイメージを想定し、
物件の条件や間取りを固めていきました。
ターゲットのイメージは、
一人暮らしの20~30代女性
推しは男性アイドル・キャラクター・2.5次元舞台
推し活と仕事に専念しており、いまのところ結婚願望はなし
推し活は限られた友人にしか打ち明けていない
推しがモチベーションであり、推しの前では女の子でありたい
イベントの開催が多い、池袋、新宿によく訪れる
本件のターゲットの嗜好性としては、
下記3点がキーポイントです。
推しを中心とした暮らし
公私(日常⇔推し活)の区分け
居住エリア
これらのキーポイントを踏まえ、
学生たちと共にアイデアを出し合い、内装を考えていきました!
テーマ②「日本の感性」では、
日本の古来よりある生活風習・感性の中から
・可動建具
・ハレとケ
・離れ
の3つを抽出しました。
障子や襖など、空間を仕切る「可動建具」
状況や機会によって使い分ける空間の形式「ハレと ケ(※)」
同じ家の中であるものの別の空間として取り扱う「離れ」
という要素を抽出し、
現代の住まい方へと再構成を考えていきました。
特に可動建具は空気を通す布張りや
空間を仕切る板張りなどで仕上げており
春夏秋冬に応じて変化させることができるものとしています。
現代は空調によって室内環境がコントロール可能になり、
四季を感じづらい空間となっているのに対して、
季節によって服を変えるように衣替えをして暮らすことを提案しています。
マンションでありながら、四季の移り変わりを感じることで、
暮らしが豊かなものになると考えています。
―なぜ、このような取り組みをしようと考えたのでしょうか?
普段から社内では、
どうしたらお客さまに心ときめく住まいを届けられるか?
いままでになかった発想で顧客や世の中に新しい価値を届けられないか?
などの考えの基、リノベーションマンション事業を手掛けています。
しかし、
考えや発想が凝り固まっていないだろうか?
という疑問が私たちのなかで生まれました。
そこから、業界や社会人としての常識にとらわれない
自由な発想を持った学生と一緒に、
これまでにない発想で、ニーズが多様化する世の中で
これまで私たちが出会ってこなかった方に向けた
リノベーションマンションつくってみよう!
という想いから今回の産学共同プロジェクトが生まれました。
一緒に商品企画を進める大学ゼミを検討するにあたっては、
以前行っていた産学民共同研究プロジェクト
『COCOLABO(ココラボ)』とは異なり、
不動産や建築の知識をもった領域ではなく、
デザインや経済学など我々の事業とは少し違うアプローチで
発想・研究を行うゼミに絞り込み、
都立大インテリアデザインスタジオと
産学共同プロジェクトを進めるに至りました。
事業部で初めて取り組む産学共同プロジェクトのため、
教授や研究室とも連携がとりやすいという観点で、
参加メンバーの一員である社員の藤澤が出身の研究室に決定しました。
―この取り組みへの想いはどのようなものでしょうか?
これまでお話した通り、
学生と当社がお互いの発想・知恵を融合することで、
「多様性・変化する暮らしかた」を具現化した
新しい住まいのかたちを提案したいとの想いから
今回の企画を進めてきました。
その一方で、誰に届けるかだけでなく、
誰と一緒にやるか?という観点を強く意識しました。
普段は、取引先の協力会社のみなさまと
「仕事関係の人とのつながり」で『よりよい仕事を進めたい』
との意識で仕事をしていますが、
学生とは「これからを担う若い世代の子たち」と
純粋に『一緒にいいものをつくりたい』という、
これまでとは全く違った想いを抱くようになりました。
それは、ワークショップや街頭インタビューを通じて、
学生の自由な発想やエネルギーに触れたことが
意識の変容につながったのかもしれません。
また、研究室のOBでありコスモスイニシア社員である私にとっては、
今回の取り組みを多くの人に知ってもらえたことが
プロジェクト自体が出身大学や教授への恩返しとなり、
また会社や事業への貢献にもつながるならば、
これほど光栄なことはないです。
今回の産学共同プロジェクトのみならず、
当社のリノベーションマンション事業を通じて、
一緒にいいものをつくり、
住まう方にはもっと住まいや暮らしを好きになってもらい、
仲間になってくれる方が笑顔になれるように、
少しでも力になれれば幸いです。
|東京都立大学システムデザイン学部インダストリアルアート学科インテリアデザインスタジオについて |
東京都立大学システムデザイン学部インダストリアルアート学科インテリアデザインスタジオでは、人間と社会と自然を結び付けながら、人々が健全に生きることのできる住環境を研究しています。さらに、造形を通した文化の創造と位置付け、身体と空間の関係性をデザインしています。床・壁・天井などの空間を仕切る要素に始まり、椅子・テーブル・棚・照明などの空間に配置されるものに留まらず、さらに物質として目に見えない、音・光・香りなどもデザインの対象としています。
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