クトゥルフ神話TRPGシナリオ~旧支配者、襲来~

1、はじめに
これは、矢鹿(やしか)@TRPG&ボドゲ勢 ボドゲ製作中(@rusty_keeper)さんの呼びかけた #同じ映画から作る千差万別TRPGシナリオ #ムビシナ  の企画用シナリオである。

今回テーマとなったのは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』である。

 舞台は現代日本、第3新東京市から謎の異空間である。
 これは『新クトゥルフ神話TRPG』に対応したシナリオである。プレイ時間は探索者の作成時間を含まないで2~3時間程度である。
 推奨する探索者の職業などはないが、〈目星〉が特に役立つ。戦闘で解決するシーンもあるが、重火器類の持ち込みは許可しない。このゲームをプレイする際、所持している荷物はポケットに入るサイズのみまでとする。
 探索者同士は知り合いでなくとも構わないが、後述するヱヴァンゲリヲン初号機と第五使徒の戦いを保護シェルターから抜け出して目撃したという共通点がある。KPはそのことを事前にプレイヤーに伝えておく。
 このシナリオはKPのさじ加減で、探索者の死亡率や狂気の進行をかなり変動することができる。KPは自分の嗜好とプレイヤーの嗜好をすり合わせて、どのくらいの危険度にするかを調整すること。

2、シナリオの概略
 探索者は興味本位で、ヱヴァンゲリヲンの戦いを見に行くことになる。ところが、ヱヴァンゲリヲン初号機と第五使徒の死闘の最中、第5使徒の攻撃による被害に探索者は巻き込まれてしまうのだった。
 目覚めると、そこは見知らぬ天井であった。さらに、この部屋の周りには不気味なクリーチャー、ミ=ゴ(ユゴスよりのもの)が蔓延っていた。
 理解できない状況に陥る中、少ない手がかりをもとに、生き残る方法を模索することになる。

3、事件の真相
 15年前に起きたセカンド・インパクトにより、全世界の海が赤く変色して海洋生物はそのほとんど全てが死滅した。その結果、地球より存在する旧き神々が覚醒することとなった。旧き神々は生き残っている奉仕種族を利用し、人類や使徒に対し、敵対するかどうか行動を開始する。手始めに、ヱヴァンゲリヲンや使徒の戦闘に乗じて、行方不明になっても困らない探索者たちを異空間に運び出し、解剖も伴った研究をしていた。
 しかし、旧き神々は余興が好きであり、運び出された探索者に一人ひとりに救済処置を用意し、狂気にさえ陥らなければ生きて現実世界に帰れることになる。

4、導入
 探索者たちは、興味本位でヱヴァンゲリヲンの戦いを見に行くことになる(場所はPLに任せる)。
 探索者たちは、ヱヴァンゲリヲン初号機が動いている姿を確認する。超大型の機械生命体が轟音を立てながら、歩む姿に探索者たちは見惚れるであろう。
 しかし、その状況も一変し、ヱヴァンゲリヲン初号機の悲痛な叫び、あらゆる兵器で撃たれても平気な第五使徒の不気味な姿、まるでおもちゃの紙風船のように破壊されていく第3新東京都市の光景を見た探索者たちは、成功1D3/失敗1D6の正気度ポイントを失う。

そのとき、ヱヴァンゲリヲン初号機と第五使徒の死闘の最中、第5使徒の攻撃により、探索者は瓦礫や木々または土砂に巻き込まれて気を失うのであった。
(探索者が抵抗ロールまたは回避ロールを振ると提示しても自動失敗とする)

 目覚めると、そこは見知らぬ天井であった。

5、部屋の間取図
下記は、探索できる部屋の全体図である。

図1
*探索者が初心者の場合、またはKP自身が不安な場合、探索者に掲示してマップである。

図2
*KP専用マップ、数々のギミックの場所も詳細に掲示してある。

図.1 探索者用マップ

図.2 KP用マップ

6、目覚めの部屋
目覚めた部屋は、正方形の白い部屋。
覚えのない見知らぬ天井に頭を抱えながらも探索者は起き上がる。探索者の服装は白衣の姿となっており、大きな怪我一つも負っていない状態であった。
周りを見渡すと重厚に造られた重い鉄扉にカーテンもない大きな窓と石らしきもので作られた机がある。また、大きな窓の向かい側の壁にはネルフのロゴが大きく描かれていた。

探索者が、石で作られた机に目をやると、机の上には一枚の紙と、探索者が気を失う前に所持していた物が丁寧に置かれていた。
紙には、
『知恵の実をもつリリンを試す、神の使いは彼らだけではない』
と書かれている。

各々気になる点を〈目星〉の技能を振るか、または気になるところを注目した場合、以下の情報を与えることにする。
・部屋全体に注目すると、この部屋には電気がついていないことがわかるが、明るい状態で管理されている。また、見慣れないマンホールを確認することができる。
・石の机の上には、これ以上の情報は得ることができない。
・ベッドの上はまだ暖かい。ベッドの下を見ると、血のような赤い染みがマンホールへと繋がっていることを発見する。探索者が、この赤い染みを地と判断した場合、成功0/失敗1D3の正気度ポイントを失う。
・壁に描かれたネルフのロゴマークを見ると、大きなかぎ爪で引っ掻いた跡が残されていた。これを見た探索者たちは、成功0/失敗1D3の正気度ポイントを失う。
・鉄扉は、重く開けることは困難である。
・マンホールに注目すると、隙間が空いており、子どもでも開けられるほど緩く作られていたことが分かる。

 探索者の1人が窓に注目した場合、他の情報を手に入れることが一旦中断される。窓を見ると、探索者たちと同じ構造の部屋がある。また、ベッドの上には、包帯だらけで大きな怪我を負っている横たわっている女性がおり、その向こうにはもう一人立っていることが確認できる。
 その光景を見た探索者は〈アイデア〉または、〈幸運〉の技能を振ってもらう。成功した場合、立っている謎の人物がこちらに気付き、部屋に向かってくるであろうと感じた。
 失敗した場合、その人物の顔は人間ではなく、四肢を持つ人型ではあるが、手足の形状は細く長い。首にあたる部分はなく、頭部は仮面のような無機質な形状をしている醜悪な怪物の姿であった。その顔を視認してしまった探索者は、成功0/失敗1D6の正気度ポイントを失う。さらに、こちらに気付いた怪物は手を振り、こちらに向かうそぶりを見せるのであった。

 探索者たちが、窓のイベントを終えると、重い鉄扉をノックする音が響く。探索者たちが抵抗する素振りをKPに宣言しても、その数は1つではなく、2つ3つと増えていき、探索者は抵抗するまでもなく、蹂躙される結末しかない。
 探索者に与えられるターンは3ターンのみであり、1ターンに1回のみ調べられることとする。探索者がマンホールに気付かなかった場合、ENDING3 破滅を迎える。
 マンホールから地下に降りた場合、マンホールを閉めるか閉めないかは探索者の判断に委ねる。

ENDING3 破滅
→探索者は、鉄扉をこじ開けて出てくる怪物たちの大群になす術もなく気絶され、気が付いた頃には、掌を釘で打たれ、腹を解剖されて、下半身は存在していない状態でじっくりと観察されていた。キャラクターロスト!


7、地下水路1
 マンホールから地下に降りると暗く湿っていた。部屋の中央は水路が流れていた。水路の先には扉も存在している。さらに、部屋の隅に置いてある懐中電灯が水路の真ん中にある星のマークを照らしていたが、完全ではなく、一部が欠けている。
 また、その近くには薄汚れた手帳が放置されている。探索者たちは、それを拾うことができるが、一部が濡れていて全てを読むことはできなかった。ボロボロのページから何とか読めるものは数ページのみである。

〈図書館〉または〈目星〉の技能で6回振ってもらう。
成功した数のみ、情報を掲示する。
失敗した場合、1回のみ幸運で振りなおしても構わない。幸運の値を減らして成功としても良い。プッシュしても構わないが、二度失敗した場合、そのページは水に溶けて消えてしまう。以下、成功した順で開示する情報を示す。


今までの記録をこの日記に記録する、私がダメでも次に来た人たちの助けになるだろう
それが私の償いの一つである


知恵の実とはなんだ?ネルフと関係あるのか?分からないが、
ここはとても酷い臭いだ。とても長居はできない


この下水道みたいな水路?まで逃げたがいいが、
脱出を志したものは私以外にも多くいたらしい
しかし、彼らのほとんどは狂気に陥り、脱出することなく終えたようだ。


私は幸い、狂気や恐怖の類に対する耐性が強いのかもしれない
ずいぶん長く生き残っている
後悔が残っていないといえば、嘘ではない


彼らが追いかけてくる。私はもう一人いた逃亡者を犠牲に扉を閉じた。悲鳴が鳴りやんだ頃、ソッと扉を開いて覗いてみた。彼らは、だらりと力尽きた逃亡者を抱えて出ていった。目を下に下ろすと、彼らの仲間の1人が倒れていた。


彼らの特徴は胸に赤いコアを持っている。もしかしたら、それが彼らの弱点かもしれない。なぜなら、倒れている怪物の胸がひび割れていたからだ。そして、怪物の身体は溶けてエビやカニのような甲殻類の姿へと変わっていた。彼らはなんなのだ……

手帳の情報をもとに、試行錯誤すると、探索者たちは自ずと壁に注目する。壁にはサバイバルナイフが古い紙切れと一緒に刺さっていた。
紙には、
『いずれ永劫の時を過ごす器に血を捧げよ、さすれば肉体は地獄に返す。』
と書かれている。

8、地下水路2
 扉を開けると、先ほどよりは少し明るい印象を受けるが、暗いことには変わりなく、前の部屋より、さらに湿っていることに気付く。
 部屋の中央を調べると、古びた羊皮紙であった。
羊皮紙には、ラテン語で書かれており、〈ほかの言語(ラテン語)〉または、〈幸運〉の技能に成功した場合、以下の文字を認識する。
『リリンにとって最も苦しい死は溺死らしい……』
と、成功失敗問わず、羊皮紙に触れた探索者たちの周りの扉はガシャッとシャッターが閉まり、茶褐色の不気味な液体が流れ込む。また、羊皮紙を拾ったその下には、星のマークが一部分欠けた跡が記されていた。
 このとき、マンホールのふたを閉めていた場合、探索者は自らこの状況を打破しなければならない。探索者に〈アイデア〉の技能を振らせ、成功した場合、茶褐色の液体が部屋を包むまで5ターンかかると推測できる。さらに、リアルINTまたは、〈目星〉に成功すると以下の情報を手に入れる。星のマークを描き切れば、水が排出されるのではないかと思いつく。サバイバルナイフで描ききる場合、1ターン消費+〈水泳〉、〈サバイバル〉、〈自然〉または、〈幸運〉で成功すると茶褐色の液体はどこからともなく、排出されていく。
もし、茶褐色の液体が腰までつかる頃、探索者たちがマンホールのふたを閉めていなかった場合、前の部屋の扉が鈍い音が響き渡る。探索者が首まで浸かっている状態になった頃、扉が開き、一斉に流れた水流に怪物は巻き込まれ、次の部屋に続く扉のシャッターも解除され、進めることになる。また、星のマークを描いた後も一斉に流れる先は前の部屋であり、怪物も巻き込まれる。どちらにしても怪物は巻き込まれて消えるが、恐怖演出の一つとして利用する。

9、地下水路3
 もう一つと扉を開けて進むと、次は謎の円筒状の缶が右に左に5個ずつ並べられている部屋である。他の水路とは違い、薄明るい光に包まれていた。缶に注目すると、缶自体は高さ30センチであり、直径はそれよりやや小さく、表面はツルツルしている。前面の少し出っ張った所に3つのソケットが奇妙な二等辺三角形の形に並んでいる。
 缶それぞれに番号が記載されており、中身を空けることはできそうである。番号1、3、4、6、7,8、10には人間の脳が収納されており、開けると中の液体とともに脳が床に落ちる。その光景を目撃した探索者たちは、成功1/失敗1D3の正気度ポイントを失う。
真ん中にある8番と記された缶は光っており、会話を試みることが可能であった。今まで取り逃している情報がある場合、ここで探索者たちに情報を与えても良いとするが、情報配布は2つまでとする。ある程度、会話をすると、『私は自ら狂気に陥るとしよう。戻っても別の狂気に襲われる』と言い残し、それ以降、会話はできなくなる。
次の部屋に進もうとするとき、8番の缶から『健闘を祈る』と言われる。

10、決戦
 最後の地下水路の扉を開けると、広い空間へと辿り着く。そこで水路は止まり、棺らしきものが置いてある。そして、その周りを取り囲むように昆虫のような甲殻類のような不気味な怪物が待ち構えていた。その見た目は醜悪そのものを体現しており、身の毛がよだつことであろう。さらに、怪物の1人がハサミで上を指している。もし、探索者が天井を覗いた場合、無数の人間の臓器や体の一部を、無理矢理繋ぎ止めた形で浮かせている。その残酷な造形を見て成功1D3/失敗1D10の正気度ポイントを失う。
 探索者たちは、どちらにせよ、謎を解けなかったとしてもこの怪物を退けなければ、命はないと感じ、持ち合わせている技能を持って挑むことになる。

ミ=ゴ(ユゴスよりのもの) 2~3体
STR 70 CON 50 SIZ 80 DEX 70 INT 65 POW 65 耐久力10~13 
DB:+0 
ビルド:0 
MOV:9
攻撃
1ラウンドの攻撃回数:1
ハサミ 30% ダメージ 1D6 〈組みつき〉
装甲:なし。しかし、ミ=ゴの身体は地球上のものではないので、すべての貫通する武器は最小限のダメージしか与えない。
呪文:今回はなしの設定
正気度喪失:ミ=ゴを見て失う正気度ポイントは成功0/失敗1D6

今回のシナリオの設定では、ミ=ゴの胸には赤いコアが組み込まれており、STR対抗に勝利することができれば、コアにダメージを与え、一時的に行動不能にすることができる。

11、シナリオの終了
 探索者は、すべてのミ=ゴを倒した場合、ミ=ゴの身体は崩壊しかけ、テレパシーでこちらに語りかける。『勇気あるリリンよ、棺に血を捧げば、汝の世界に帰れるだろう』と言い残し、消えていく。
 探索者たちは、ナイフ等で身体の一部を傷つけ、棺に捧げると棺がひとりでに開き、探索者たちを誘うかのように構えている。そこに探索者が身体を差し出すと、心地よい眠気共に気を失うのであった。
 目を覚ますと第3新東京都市にある病院のベッドの上であった。また、見知らぬ天井であったが、周りの空気はいつもと変わらない日常であった。
 首を傾げてカレンダーを見ると、数日間は眠りについていたことを実感する。また、起き上がろうとすると、サイレンが鳴りだす。青い結晶のような巨大生命体がこちらに近づいてくるとのことであった。看護師の誘導を素直に応じ、シェルターに入る。その光景だけでいつもの日常に戻ったのと探索者は落ち着くのであった。
ENDING1 また、別の恐怖へ

もし、探索者がミ=ゴの忠告を聞き入れず、ミ=ゴの血を捧げた場合、棺は同じように開き、元の世界へと戻ることはできる。その場合、ENDING2

ENDING2 恐怖は永遠に
→目を覚ますと第3新東京都市にある病院のベッドの上であった。また、見知らぬ天井であったが、周りの空気はいつもと変わらない日常であった。
 首を傾げてカレンダーを見ると、数日間は眠りについていたことを実感する。途端に掌が痛み、観察すると、不気味な目玉やぶつぶつした皮膚が浮き出ていた。探索者は気づくだろう。体の一部が怪物と同化してしまったことに……

12、正気度の報酬
これでシナリオは終了である。
 謎の異空間から現実世界へと戻ることに成功した探索者、さらに狂気に陥ることなく生還した探索者は1D10の正気度ポイントを獲得する。また、幸運の回復も1D10で行う。
 しかし、一度でも狂気に陥った場合、正気度の回復は1D6とする。この場合、幸運の回復は変えず、1D10のままとする。

良い企画、ありがとうございました!

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