年の瀬の危機一髪のハプニングー白杖の石突が吹っ飛んだ?!
年の瀬も近い浅草はどんどん混雑。
とある横断歩道の信号待ちをしようと、横断歩道に近づいたとき、どうやら私の前を横切った大変背の高そうな外国のかたの足と私の白杖が接触してしまい、何が起こったのか一瞬わかりませんでしたが、結構な衝撃。
ただお相手のかたは転倒はなく、どうやらうまく態勢を立て直すことができたようで、私の白杖に気付いて口早に何回も謝ってくれました。
お相手のかたは、どうやら大丈夫そう。
私も横断歩道に向き直って信号待ちを始めると、前から、なんか「とんとんとん…」と身体を叩かれる感触。
「ほへ?」と思うと、前からしゃがんだ男性が、
「すみません。これ、今ので先っぽがとれちゃったみたいなんで、つけましょうか。」
なんと、私は身体の向きを変えただけで信号待ちに入ってしまったので全く気付かなかったが、白杖の石突が吹っ飛んでしまったらしいのだ!
このかた、何と!良く気付いてくださいました…!
このままもし、誰も気付いてくれずに、信号が変わって渡ろうと白杖を振りだしていたら、その時に石突がないことに気づき、そうなったらもう、横断歩道を渡るどころか、自力移動自体ができなくなってしまう大変な事態だった!
まるでシンデレラの足に靴をはめ込むかのようにしゃがんで丁寧に一生懸命つけてくれ、それでもそんな簡単につけはずしできるようなものではないので(しかもあとで自分で触って知ったところ、本来石突は杖にはめる軸と、軸の外側にきのこのかさのような先っぽ部分がついているものなのに、きのこの軸とかさの部分が分離してかさの部分だけが吹っ飛んだような状態になってしまっていたのだ!)、またぱこっと外れてしまい…
私が「ちょっと、地面にどんっとしてみてもいいですか?」と言って、はめるだけはめていただいて地面でどんっとしたら、とりあえずは嵌ったようだったので、大丈夫ですとお互い確認し、お礼をいいました。
が、あの時は焦ったので丁寧にお礼を言ったつもりではあるけれども本当に死活問題を助けられた雰囲気を出すことができていなかった、言い足りなかった!
そもそも本当に、あんな多くのかたはついているかどうかすらも気付いておられないだろう小さなものが吹っ飛んだことに、良くぞ、良くぞ気付いてくださいました!
白杖は棒で身体を支えるものではなくて「先の部分」で「路面などの情報を取得するためのもの」なので、あれ、あの先っぽ部分がないだけで、杖の感覚ががらりと変わり、地面をスライドさせて探ることもできなくなり、歩けなくなるかもしれないほどに大事なものでした。
本当に本当にありがとうございました!
私の石突はSローラーでしたが、まさか人の足で蹴られた勢いできのこのかさの部分だけ吹っ飛ぶとは…。
石突とは、本来、杖先を数分間湯煎して、石突のプラスチックを膨張させなければとれないほどのものなのです。
はい、確かに杖とじかに接している軸の部分はとれていませんでした。
私も、今後、こういうことがあったときには、即座に石突がついているかどうかは確実に確認をしようと肝に銘じました。
ちなみに、応急的に無理やりはめこんでも、本来はSローラー、きのこのかさの部分が白杖をスライドさせたときくるくると転がるように動くのですが、まったく動かなくなっており、しかも何か詰まったような感じで、路面に打ったときの音もまるで違う。
白杖や石突などの「福祉用具」と分類されるようなものは、その辺の店には基本的に取り扱われていません。
この白杖や石突を購入した点字図書館は、高田馬場にあります。私が点字教室のとき、バスを乗り継いで1時間半はみて、しかも途中では信号のない難易度の高い横断歩道や4車線の横断歩道、路面情報を探りながらしばらく歩くような必要もある場所です。
この日は日曜日で、点字図書館は、日・月が休み。つまり翌日もいけない。
オンラインで頼めば、今年中にすら手に入らない。
予備の折り畳み白杖と、過去に使っていた折り畳みの白杖がありましたが、白杖使用者にとっての白杖は本当にいわば身体の一部、例えば眼球と同じ。
突然ものが変わると、どうしても緊張度や危険度は跳ね上がります。
しかも火曜には、慣れない場所への外出予定があったので、焦りました。
どうしようか。自力で修理できるものなのか、SNSで呼びかけ、検索をかけて何とか調べようとしますと…
え?
なんと。
雷門の近くに、私が点字図書館さんで購入した白杖のブランド、「セガワケーン」を、点字図書館と共同開発した、というお店の存在が?!
台東区では視覚障害関係のサークルなどもないし、役所などの人たちは視覚障害対応にまるで初めてというくらい不慣れだし、当事者はほとんどいないのではないかと思っていた。
そのため、そんな場所に、まさか、白杖や白杖関連のもののお店があるとは!
ただ、「白杖の専門店」ではなく、「ステッキの専門店」だったのですけどね。そのため、浅草のお年寄りたちには、ステッキの需要はあるのやもしれません。
(ちなみに、お店のご主人いわく、「白杖のことで来店するかたは大抵別の区から来る。うちも別に”ここ”に店を構える必要はない」と言っておられました。)
もう、一も二もなく翌朝一番で電話をかけ、その日の予定を早めに切り上げ、夕方、雷門あたり(徒歩15分程度)なら…と、過去使っていた折り畳み白杖を久しぶりに手にして、石突の吹っ飛んだ白杖を…これは直杖であり、折りたたんでコンパクトにすることはできなかったので傘袋に入れて背中にかけ、恐る恐るでかけました。
昨日石突が吹っ飛んだまさにその横断歩道でおそるおそる信号待ちをしていると、信号が青になったらしいとき、何やらまた背の高そうな外国人男性の気配が前から、「ハイ、イクゾー。It's green.」と声をかけてくれました。
心あたたまりながら、お店のほうへ。
路地を曲がってどの辺りにお店があるのかわからなかったので、端を探りながら少しずつ進んでいると、おばあちゃんが声をかけてくれました。
「どこへいらっしゃるの?」
「瀬川商店さんという…」
「ああ、ステッキのお店ね!」
「え、ご存じなんですか?!」
すごい。知られているものなのか。と思ったら、
「あそこのご主人ね、知り合いなのよ。」と言って、肩をかしてくださり、連れて行ってくれました。
しばらく歩くとお店の中から見つけて「今日来るはずの白杖使用者だ」とあたりをつけてくれたのか、お店のご主人が駆け寄ってきてくれ、そこからバトンタッチ。今のおばあちゃんとは、学生時代からの知り合いなのだそう。
浅草は、こういう町ですね!
お店に入ると、白杖の軸を、業務用ドライヤーで熱くしてはずし、とった杖先や、これからつけるSローラー(石突)も、いちいち触って確認させてくれながら、新しいものをつけてくださいました。
浅草人らしく、セガワケーン誕生の経緯などもいろいろとお話してくださいながら。
本当に、いろいろとびっくりの立て続いたわけでしたが、思わぬことで、なんとこんな親身にしてくださる白杖関連の相談できるお店を見つけることができました。
何かあったとき、長距離移動や公共交通機関も使う必要のある場所しかない、という状態から、地元の徒歩圏内のお店で対応してくれる!という、この安心感たるや。
「日常」自体の安心感が変わりました。
(1週間ほど前の日曜日、月曜日のお話でした。)