ホスピタリティから湧き上がる知識や技術を上回る技能―視覚障害者が嬉しいと感じた配慮
少し前、24年末の冒険記です。
この日は日本橋三越さんへ大冒険を決行。
日本橋三越さんには、古いご自慢のパイプオルガンが設置されている。
立ち寄るだけで、無料で15分ほどのクリスマスプログラムの演奏を聴くことができる日だった。
更には、日本橋三越さんには美しい開放的な屋上庭園があり、久しぶりにそこで本でも少し読みたかった(青空のもと、ブレイルメモで点字読書)。
三越前に着くと、駅員さん、「お店では誰かとお待ち合わせですか?」の問い。
私が完全に単独と知ると、直結とは言え駅の領域外、三越さんの地下から1階へ、店員さんに案内をお願いするまで連れて行ってくださった。
そして店員さん、私の目的、パイプオルガンの鳴る吹き抜けホールまで連れて行ってくださり、ホール内にクリスマスマーケットが出ているとか、階段、オルガンの方向など私が聞いた情報に対し丁寧に教えてくださり、無事、演奏を鑑賞。
演奏が終わり、よーし、では、行ってみたかった屋上庭園を試すか、まあいけなかったりいっても椅子を見つけられなかったら帰ろうといつもの調子で階段脇を伝って来た道を白杖でそろりそろり探りながら戻り出すと、ホールのマーケットのお店のかたが呼び止めてくれ、ここでもまたスタッフさんを呼んできてくださった。
スタッフさん、不慣れなのでごめんなさいねと何度も言いながら、でも快く、屋上へのエレベーターへ。
「歳末のお忙しい中、ご来店ありがとうございます」(一応、とても純粋な声と言い方で皮肉ではなさそうだった!笑)といいながら。
私も無料オルガン演奏と屋上庭園などと、一銭も使わない来店のしかたをしているのに。その上なんともこんなに懇切丁寧に案内をしていただいて本当にありがとうございます。
何よりありがたかったのは、屋上庭園についてから。
屋上庭園はもう、建物の扉を出たらだだっぴろい空間。
椅子の空きや場所を案内しようとしてくれ、「広いからわかりやすいとは思うのですが…」
「いや、実は広いほうが目印がなくて困るのです。空間をまっすぐ行こうとしても曲がってしまうし、何かに伝っていくことができたり、何か目印があると行きやすいのですが…」
「あ、そうかなるほど!」という会話で、なるべく近い椅子を、直線距離で連れて行くではなく、私が行こうとする方法で一緒に付き添い説明しながらいってくれ、この時、入り口出て壁伝いに右へ暫く歩き、左へ数メートルの椅子を案内してくれたのだが、何と、「あ!お帰りのとき、さっきの壁までまた直進しまして、左に2、3歩だけ進むと扉があります」
「何と!では、エレベーターは入ってから右斜めに進むのですか?」
「いや、エレベーター、4機ありまして、そこから入ると直進するとエレベーターのボタンです!」と、
なんと、帰り道に更に私がわかりやすい方法を見つけてくださった!
日本橋三越さんといえど、白杖使用者の単独の飛び込みはなかなかないのか、手引き自体もやりかたを知るのも初めてのご様子だったのですが、個人という中のホスピタリティから生み出されるアイデアとは、本当にすごい!
初めていくところや、ある程度例え慣れていてもですが、「帰り道、ちゃんと来た通りを逆に辿ることができるかな、そもそも来た道、ちゃんと覚えているかな」などと、帰るときの心配で、例えその間が休憩時間だったりせっかく安心できる場所だったとしても、緊張が高まった状態のまま過ごすことが非常に多いのです。
おかげさまで帰りのことも安心して休憩できました。
その後のこと。
ただし!屋上の椅子から建物の中に入るまでの道はわかりやすくなっても、エレベーターのボタンまではスムースに辿り着いたけれども、この4機もあるエレベーターのどれかが空いた瞬間やそれがどの箱であるか、乗ってからボタンを押すこと、地下鉄直結の地下1階で降りてから食品売り場だらけの地下を、駅までたどり着くことができるか…など、三越さんの建物を脱出するまでだけでも、まだまだたくさんの大冒険が待ち構えています。
しかしこれも。
エレベーターの開く音を何とか聞き分け乗り込んだら、あとから他のお客さんが入ってこられて地下のボタンを押してくださり、地下についたら、出たばかりのところにおられた老夫婦らしき男女のかたが、私が「さあどう行くか…」と悩んでいる間に男性のほうが声をかけてくださり、結構距離がある、行けるかなと言う会話の中でついでに結構切実であった願い「では、もしかしてトイレはこの辺りにあったりしますか?」に対し、女性のほうに声をかけて「この人、トイレ行きたいんだって。お連れして。」と、そしてその女性のかたが、快くトイレまで、これが実はまた、地下鉄と逆方向に結構な距離があったのですが、連れて行ってくれ、トイレの間、外で待っていてもくださり、その後、地下鉄の駅の入口までも連れて行ってくださったのでした。
この日も、本当にあまりにありがたい、バケツリレーで冒険させていただくことができたのでした。
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