つらつら

術後3年経過。

3年前、8月4日、午後。病院のベッドでいろいろなものを繋がれて横たわっていて、とにかく得体の知れない痛みと眠れないほどの気持ち悪さのようなものに襲われていた。

3年後、8月4日、午後。職場でイベントの最中。「こちらで並んでお待ちください」「大変お待たせいたしました、受付開始いたします」「お暑い中ありがとうございます」そんな台詞が脊髄反射で出てきて、笑顔を振りまくほどには元気になった。何もかもが奇跡だと思う。

近況。7月中旬、試験を受けた。いつかここではないどこかに行くための切符を手にするための試験。受験が決まってからずっと脳内にそのことがあった。自分は「これ」ということがあるとそこばかりに注力してしまう不器用な生き方をしてしまうので、こういう試験を控えながら家庭も仕事も趣味も何もかも両立しながら上手に生きている人たちは凄いなと、当日会場に集まっていた膨大な数の同業者を見てぼんやりと思った。

7月下旬、夏休みシーズンに入った。仕事が格段に落ち着き、閾値を超えた暑さと急な雷雨と遠くに見える小さな花火に夏を感じている。7月末から8月中旬は毎週火曜日に休暇を取っている。カベポヤンタンを最後まで聴き、翌日みみだんをリアルタイムで聴くためだけの休暇。特に、いつもは土日にタイムフリーで聴いているみみだんをリアルタイムで聴けるのがうれしい。

ラジオは読まれなくてもいいから送り続けることが大事だと思っている。そうやって応援していることを表明していると、ときどき、何かが伝わっているのだなと思う瞬間が訪れる。直近だと放送中にメールを読んでいただいたとき、あの浜田さんに「いつもありがとうございます」と仰っていただいて、そんなこともあるんだ…とぽやぽやした。奇跡。「いつもありがとうございます」はこちらの台詞なのに。

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ロングコートダディ単独ライブ「あらコズミック」を配信で見た。去年は8月だったので仕事柄たっぷり見られたけれど今年は上述のとおり試験があって厳しかったので、雑多な感想などつらつら。

コズミック【cosmic】=宇宙的。宇宙は無限で不思議で可能性に満ちていてロマンがある。そんな宇宙的な人間模様が様々な角度から描かれていて、ロングコートダディの存在、堂前さんの脳内や兎さんの表現すら宇宙的に思える単独ライブ。見終わって率直にそう思った。

冒頭「未知とのどすこい」はUFOに連れ去られそうになる青年とお相撲さんのコント。日常はこうやって突如不思議な世界になっていく。続いて「情けない男」は幾度となく別れては付き合う男女のコント。一体マサキのどこが好きなのだろう?という不思議。続く「ひとたまりもない」はなぜあの衣装なのかという不思議。

そして「ティアラ」という不思議にたどり着く。個人的にはティアラのような子の存在について掘り下げて考えてしまい、考えれば考えるほどに結構センシティブなラインを描いているネタに思える。結果的にティアラは風俗店で働くしかなかったのだろうと思えてきて、そんな背景なんて考えなくてもいいのだろうけれど考えてしまう。コンセントにつまづいていたところが可笑しくも、それも含めてティアラ。明言こそしていないもののこの段落で筆者が何を言っているのか分かった人とはきっとお友達になれますね。

続いて「両手金属顔金属探知くん」という生命体の不思議。父親の最期を看取る男性の周囲を両手金属顔金属探知くんが周回しているネタ。あの心拍数が波形でわかる機械の「ピ」の音と金属探知機の「ピ」の音がほぼ同じであるという発見を与えてくれる。シュールさと意外性に満ち満ちている上に、異様に踊れている阿波踊りのクオリティの高さがおもしろさを増す。

個人的に今回の単独ではこれが1番笑った。生死という避けられない現実に金属探知機と阿波踊りを掛け合わせて挑んで行く強さ、完全に発想で勝負している潔さ。堂前さんが「ひとりで60分」で金属探知機を使ってピーピー言わせて楽しんでいた姿を思い出し、これはきっと心底やりたいことなのだろうと感じさせる雰囲気が滲み出ていた。

続く「ひらめき」は堂前さんの特技ルービックキューブと、前回単独の「俺これ見てられるんだよ」ですっかりお馴染みとなった兎さんの食べる姿というロコディのチャーミングな部分が詰まっていた。この2人が存在している世界の不思議ということで。

表題コント「あらコズミック」。そこは宇宙であり宇宙船で、隕石も飛んできて、ロボットも当たり前のように存在していて、時空間をも超えていく壮大な物語。そこに生きがい論、人生を捧げるほどの熱量と裏返しの不安、自己の原点との邂逅、煩悩の解放といった人間の機微を描き切り、最後は「まぁ、楽しいからいいけど」で終わっていく。どこか鬱要素のあったこれまでの単独とは一味違ってロマンに溢れていて、純粋なまでにUFOを追い続ける船長を駆り立てていた原体験の答えあわせができた瞬間にグッときた。

たくさんの不思議を重ね、ロマンに溢れた単独。底知れないロコディの宇宙を見た。素晴らしい作品をありがとうございました。

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マンゲキ夏フェス「ワチャラチャパイレーツフェスティバル2024」。

カベポ・タブヒガ・フースーヤ・天ピの4MC体制。カベポ団68点という圧倒的大敗。ラジオで話されていた「とてつもない陰の具合」をそのまま体現していてカベポらしい結果。

カベポの持ち込みコーナーで大喜利対決となったとき、カベポ団代表で永見さんが飛んできた瞬間が激アツだった。あの海賊姿も相まってまさにボスキャラ登場で圧巻の勝利、畏敬の念を抱く。

4MCの中で尊敬する先輩ランキングで一同から最下位予想されていた浜田さんが「俺が1番優しいからねーー!!」と謎マイムとともに珍しく叫んでいたり、永見さんが翔メンバーからカリスマとして崇められていて「マンゲキの未来は明るいですね」とにっこりしていたところがカベポ的にはハイライトだった。

多分もう来年の今頃カベポはここにはいなくて、夏フェスは最初で最後のMCなのだろうと思う。今この瞬間を忘れたくなくて、脳に焼き付けるようにずっと見ていた。今しかない夏のひととき。

2541文字。

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