VEB Pentacon auto 50mm F1.8 というオールドレンズについて
今日は僕の大好きなレンズの一つ、「VEB Pentacon auto 50mm F1.8」について話します。4年以上も使っているので、その間に撮った多くの写真たちとともに。コンパクトで写りよく、安く、本当に楽しめるスーパーレンズなので、ぜひ使ってもらいたいレンズです。それではどうぞ。
VEB Pentacon auto 50mm F1.8 について
まずは簡単にレンズ自体の話から。
”Pentacon” は旧東ドイツの人民公社の社名かつそのレンズブランド名。そのうち、この”auto 50mm F1.8” は1970年代~80年代頃にかけて生産されていたもののようです。その出自やレンズ構成などについては、すでに詳しい偉大な先人があるので、以下をご参照いただければ。僕もこの記事に触発されて手に入れた口です。
僕は2016年にeBayでドイツのショップから購入。日本の中古だと8,000円~10,000円くらいでしたが、当時で約5,000円くらいで買えたと思います。現在でもヤフオクとかだと8,000円前後くらいで取引されてるみたいですね。希少なレンズとかではない(むしろ豊富に流通してる)ので、簡単に手に入ります。
僕が持っているのは後期Ⅱ型というバージョンのよう。とにかくコンパクト、軽量(195g)です。
マウントはM42というねじ込み式。僕の場合、α7Sで使うときにはM42→K→E と2段でアダプターをかませて装着しています(※M42→E のアダプターも販売されています)。
…しかし今更ながら、旧共産圏の国で生産されたレンズが40数年を経て遥々ドイツから僕の所に来ていま手元にあると考えると、なかなか感慨がありますね。
描写の特長
写真に入る前に描写の特長を挙げてしまうと、とにもかくにも第一に、開放時・近接時の滲んだ柔らかい描写です。開放で撮るとフレアがかかってフワフワと柔らかく、雰囲気いっぱいの描写。特にハイライトの滲みは顕著です。その上、最短撮影距離33㎝(!)で、ものすごく寄れるので、準マクロ的にも使えてしまいます。一方で絞ればきっちりし、コントラストも高く色も良い…、と万能も万能です。
こうなると当然、最適な被写体は花・料理・ポートレートとなりますね。
花
ほぼ最短付近。花弁周りの滲み、フワフワが雰囲気を出してくれます。
光の相性的に、特に春の花を撮るのに向いているように思います。独特の濃厚なボケ(でも嫌なボケじゃない)、色、柔らかい描写などが相俟ってドリーミーな世界が現れます。
特に前ボケが綺麗に大きく出るので、積極的に使いたくなります。
玉ボケはなかなか癖がありますね。後ボケはぐるぐる気味でもあります。
この藤の写真は、Pentaconの癖を存分に発揮させたお気に入りの一枚。
少し絞って背景との距離も調整すると、あっという間にきっちりした描写に。使いでがあります。
ただ、あんまり逆光を直接入れてしまうとコントラストが大きく下がります(オールドレンズなので当然ですが)。なので、上のように逆光をカットしつつハイライトを取り込むように調整すると…美味しいところを楽しめます。
料理
続いてはあんまり例が豊富ではないですが、食べ物を。
思いっきり寄ってボヤボヤで撮りたくなってしまいます。
これがF2.8かF3.4くらいの例(たぶん)。これが開放・最短付近だと下のようになります。
料理だと1段~2段絞った方が良い結果が得られるようですね。
ポートレート
こちらもフワフワを活かした最適な例がないのですが、いくつかご紹介を。
上に載せた藤の写真では、背景との距離が近いときのぐるぐるボケを見ました。これが背景と距離をとったときには、ぐにゃーんと異世界感ある描写に。お世辞にも立体的とは言えないですが、これはこれでアリです。
ここまで見てきたように、自然光との相性は非常に良いです。が、一方で屋内の光は若干苦手かな…と感じています。光量が少ないと色が濁る感じがあり、あとコーティングの影響か、色が被りやすい印象です。なのでメインの活躍どころは日中かなと。
と言いつつ、ハイライトの滲みを出したいときには最高なので、結局使っちゃうんですよね。これ、ソフトフィルターとか一切使っていません。
その他
手だって撮りたくなります。この滲み、柔らかさがすごく良いんです。
絞ったら風景だってきちんと撮れます。
入口にして終着点のようなオールドレンズ
安くて簡単に手に入って楽しみ方様々のPentacon auto 50mm F1.8、オールドレンズの入口には最適だと思います。ただ、あまりに万能でこれで満足してしまうかも(かくいう僕がそんな感じなんですが)。
個人的には、中古のX-E1あたりを安く買って専用機として遊ぶのもアリだなーとか考えています。おすすめです。