Do The Ride Thing #1 バイクを買う話
30歳頃からぼんやり続けているマイルールのひとつに、「毎年1つずつ趣味を増やす」というものがある。
そうしてぼんやりと始めた趣味は、ラーメンの食べ歩きだったり葉巻だったり刺繍ミシンだったり、案の定すぐに飽きたり意外と身に付いたりしているが、どの趣味にも共通して言えるのは、ゼロからなにかを学ぶことはとても刺激的だし、何より初体験の瞬間や自分なりの気付きを得た瞬間の電撃的な快感は、何事にも変え難い気持ち良さがある。はっきり言って趣味本来の目的よりも「新しい体験を得る」ことの気持ちよさのために、毎年ぼんやりと趣味を増やしていると言ってもいい。これ簡単に気持ちよくなれるので、みなさんにもおすすめします。
そんな中で「これをはじめたら相当気持ちいいはず」と、以前からぼんやり考えていた新しい趣味がバイクだった。趣味としてメジャー感があり情報量も豊富だが自分の知識はゼロという、そのギャップの分だけ知的好奇心は充分に満たされそうだし、なにより「体験」の気持ちよさは間違いなさそうだ。また実用的な“足”として、今後も増やし続ける趣味の幅を広げるためのステップにもなる。
そんなことをぼんやり考えつつ、どんなバイクに乗りたいのかを考えたときに、まず浮かんだのはHONDAの『カブ』だった。
「実用性と機能美を兼ね備えている」だとか「無骨でタフな定番」だとか、そういう設定に弱い。CASIOのG-SHOCKだったり、Dickiesの874だったり、『機動戦士ガンダムサンダーボルト』のアッガイだったりに弱い。
調べてみるとイメージ通り趣味性も高く「カブ主」と呼ばれる愛好者も多いようで、バイク界隈の中でもひとつの特別なカルチャーとしてシーンが存在するようだ。年代や国内外モデルによるバージョン違いも多く、赤い郵政カブや岡持付きの出前カブなどの実用車もわざわざ趣味で乗る車種として人気がある。この汎用性が高いタフな定番は、まさに自分の好みにピッタリ。そんな数あるカブシリーズの中で一目惚れしたのが『CT110』通称“ハンターカブ”だった。
無骨なルックスと局地性を感じる機能美、特徴的なマフラー。80年代に発売されすでに製造も終了しているが、いまだに中古市場での人気も高く、カブの中でも特に趣味性の高い車種のようだった。うーん、いい!好みにピッタリすぎ!この車種についてはさらに古い歴史があり、ホンダの公式サイト内にまとめられた資料を見れば見るほど、その異形の特異性にシビれる。
こうして「買うならこれだろうな」と、2〜3年前からたまに思い出してはググってみたり中古車情報をチェックし「う〜ん、いい!」と興奮してみたり「本当に欲しいのか?」と目を瞑ってみたり「やっぱり、いい!」と納得してみたり「お金ないでしょ?」と腕を組んでみたりしていた中、昨年2019年のモーターショーで、なんとこのハンターカブが復活するというニュースが!
デザインは細かくリファインされているが往年のシルエットは残しつつ、スペックは現行仕様にアップグレードされているようで、こういう「外見は古いが中身は最新」というのも好みにピッタリ。この復刻ハンターカブ『CT125』の登場は業界内でもかなり注目を集めたようで、発表直後から予約が殺到。ネット上での話題はもちろん、バイク専門誌も次々と特集号を出し、軒並み高評価のレビューが続出するという状況に加え、コロナ禍での生産遅延なども重なり、気がつけば数ヶ月待ちの大人気モデルとなった。
数年前から妄想していたように、先代『CT110』を中古で購入し見様見真似でメンテナンスをしながら乗るのも悪くはないが、まったくの初心者としてはこのタイミングで復刻され新車で購入出来ることになった『CT125』リリースはまさに天啓、「時が来た」としか言いようがなかった。また近頃は『人間椅子』和嶋さんの趣味のバイクを中心としたyoutubeチャンネル『哀愁のワジマシーン』にハマって繰り返し観ていたことも、より加速度を増した原因のひとつだ。
先代『CT110』も知られた車種ではあったものの、あくまでマニアックな愛好者だけが楽しんでいた車種だったので、これまで検索してもポツリポツリとした雨だれ情報で乾きを凌ぐようにウォッチしていたものが、突然の大ブームによって調べれば止めどなく溢れ出る情報の洪水を一気に浴びてしまい、思わず気絶。そして約256秒後、暗闇の中から意識を取り戻し、気が付けばホンダのバイク専門店・ホンダドリーム船橋店にて『CT125(マットフレスコブラウン)』の36回払いローンにハンコを押していたのでした。
約4ヶ月の納車待ち。しかし納車前に必ず済ませなければならないことがあった。そう、ボクは免許を持っていなかった。まずは小型自動二輪の免許取得である。次回は『Do The Ride Thing/免許を取る話』。