化粧品技術者が見ている化粧品のほんとの姿
はじめに
「コスメの森」にご参加の皆さん、はじめまして。ぽんかん🍊と申します。私は現役の化粧品開発者として、化粧品メーカーで主にスキンケア製品の処方開発を長年担当しています。
以前はX(以前のTwitter)で化粧品に関する情報発信を行っており、4万人以上の方にフォローいただきましたが、現在はアカウントに鍵をかけており、なにか思うことがあったときだけ発信するようにしています。
そんな私が今回なぜ記事を執筆しているかと言いますと、みついさんの熱い想いに共感し、少しでも力になりたいと思ったからです。
私もみついさんに近い目線でここ数年の化粧品業界、SNSのトレンドの変遷を見守ってきました。中には、私たち化粧品開発者の世界では聞いたこともないようなデマがSNSでは常識かのように広まっている。
しかもそれを発信しているのが一部の医師や有名人だったりする光景を見て、頭を抱えることもありました。
玉石混交な情報で溢れるネット上から、一般の皆さんが正しい情報を見極めるのは難しい状況だと思います。
私一人の力ではこれ以上どうすることもできないと、半ば諦めの気持ちで発信活動を休止してしまっていたのですが、今回みついさんが立ち上げたこちらのメディア「コスメの森」が目指す姿、それに参画している本物の実力を持った化粧品開発者の方々であれば、今までできなかったことができるのではないか、少しでも応援したい、という気持ちが生まれ、記事を一つ任せていただくことになりました。
私からは、宣伝広告や様々な"しがらみ"のせいで一般の消費者の皆さんは普段なかなか見ることのできない、【化粧品のほんとの姿】の一端をお伝えしたいと思います。これは現場で製品に触れ、研究を続けてきた技術者にしか発信出来ない内容かと思います。
なぜ私たちにしか発信できないのか、
なぜ医師などの有識者たちが誤った発信をしてしまうことがあるのか、、、
その根拠もできる限りお示しして解説します。
私はこの記事を通して、「化粧品のことは化粧品を作っている人間が一番詳しい」と言うことを伝えたいし、皆さんが使われている化粧品やそれを製造するメーカーに対する信頼度が高まることにつながれば、と願っています。
それでははじめて行きましょう。
1. ネットに溢れる化粧品に対する誤解の数々
ここでは、SNSやネットの記事などでよく見かける”化粧品に対する誤解”を紹介したいと思います。それらは、信頼性の高い医師や薬剤師などが発信していることも多く、化粧品業界の中の人間が言うよりも、よっぽど信頼できると思われる方も多いと思います。
ですが前述のとおり、「医師や科学がわかる人ほど勘違いを起こしやすい」という落とし穴があるんです。なぜ間違ってしまうのでしょうか。
1-1. 化粧品はエビデンスが弱い?根拠がない?
これはよく医師の方が発言されるのですが、医療の視点から見ると、化粧品の効果に対するエビデンスは弱く、臨床データもほとんど見られないため、「化粧品は詐欺だ」
「本当に効果があるなら根拠となる臨床データを出せ」
といった発言がしばしば見られます。それに対して、データや根拠を示す化粧品業界の人間は基本的に存在しないため、一見すると「やっぱりエビデンスはないのかな?」「詐欺なんだ、効果ないんだ」と感じた方もいるかもしれません。しかし、さっそくここに勘違いがあります。
化粧品の法律(薬機法)や化粧品の広告ガイドラインにおいて、「臨床データや、明確な効果とそれが出るまでの期間を示すようなエビデンスを出してはいけない」 と明確に決まっているんです。
理由は「消費者に誤解を与える恐れがあるから」。データがないのではなく、”あったとしても出してはいけない”んです。
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