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年始の挨拶と、引越作業を通じて感じたコミュニティの大切さと「物質文明」への違和感

2021年、大変お世話になりました。2022年もどうぞよろしくお願いします。弊社は2013年の設立ですので、今年で10周年の区切りを迎えます。「自律・循環・共生する心豊かな社会」を目指して、そのための叡智が地域の産業や文化の中にあると気づいた30代前半にシェアオフィス(現Mesh Kyoto)にて創業しました。世の中の人にそれらの叡智を楽しみながら広げていくことをビジネスを通じて取り組もうとなかなか経営者やリーダーに向いているようなタイプではないものの、世の中にまだそういった会社がなかったので、自分でやるしかないと考えて始めました。
その後西陣に移転して自社オフィスを構え、地場産業のエッセンスや思いが込められたプロダクトを作り、それを用いる生活への転換を促そうと独自のブランドを作って広げようとした初期。
人員含めた経営資源がすぐに枯渇していく中で、クリエイティブタウン・ポートランドに行って「Material by Japan, Made in Portland」という概念に出会い、市場のことを良く分かっている現地の方々にマテリアルを紹介・販売するという方向に舵を切って実績が出始め、国内外の販路開拓事業などを始めた第2段階。
並行して人と人との交流、異文化理解・異業種理解を促進することが肝心と考え、オープンハウスイベント「DESIGN WEEK KYOTO」をスタートしたり、国内外との文化交流イベントなどを手掛けたりした第3段階。
そしてSDGsやサステナビリティが浸透し始め、地域コミュニティなどの重要さも含めて世の中に広がる中で、コロナ禍が発生してオンライン化がさらにそれらの重要さに気づく人が増え始めたこともあり、少数で地域を訪問・交流して体験を通じて学びを深めるリアルの場をツアーとしての提供や、オンラインで距離を越えて交流を促進する取り組みを始めている現在に至ります。

そういった中で、オフィスを西陣から、新たなモノづくりやコミュニティの胎動が起きてきている梅小路への移転を決断しました。設立以来、大半の時間を過ごしてきた西陣からの移転は大きな決断でした。
正式なオープンは2022年の春ですが、アートや食、テクノロジー、工芸など新たなモノづくりのプレイヤーの方々が集うビルでありエリアでもあるので、共に色んな取り組みをしていけることをとても楽しみにしています。

また、梅小路は「丹波口」の地域名の通り、古来より丹波と京都との結節点です。今も丹波・丹後に繋がる京都縦貫道路の沓掛インターを真っ直ぐ1号線を走ってくるとここに着きますし、電車でも丹波・丹後と繋がる嵯峨野山陰線が走っています。京都という都市は丹波・丹後を始めとする豊かな後背地によって支えられて発展してきましたので、現代における新たな交流の形を生み出して行ければと思っています。新たなCOS KYOTOの船出と取り組みにご期待ください。

また、この移転に伴い、これまでオフィスの3Fに置いていた僕の住居も引越しました。12月末の退去でしたのでバタバタとしており、多くの方にご迷惑をおかけしました。
この引越しでは色々なことを考えさせられました。西陣のオフィスは3F建てでスペースがとても広かったこともあり、知らず知らずのうちに物が増えていました。自分の生活道具はもとより、各地から集めた素材や商品、イベント運営に必要な備品などを全て収納していたので、いざ引越しとなって収納スペースから全て出して整理整頓していくと実は膨大な量になっていたのです。全てを持っていくことはできないので、12月に入ってからガレージセールを実施したところ、使っていた家具や座布団、食器類など、ご近所の方々をはじめとする多くの方が来てくださり、引き取ってくださいました。印象的だったのは、最近ご近所に引越してこられた20代後半-30代前半の方々です。新しいお店を町家で始める、長屋を改装して住み始めるなどなど。そこで味のある家具などを探していた、ということもあって引き取ってくださいました。このように僕の人生の節目で出てきた道具などが、また別の人の人生の節目と重なって引き継がれていくというのは一期一会的な人の出会いと同じで、とても印象に残りました。ガレージセールをやっていなかったら、そういった新しい方々と出会う機会もなかったかもしれませんし、道具類は捨てざるを得なかったかもしれません。
この自分の経験から、ベースとしての地域コミュニティの重要性を改めて感じました。譲り合い・助け合いなど支え合える人間関係は、すぐに生まれるものではありません。今回のような小さな会話・交流の機会を通じて、相互に信頼関係が積み重なっていくことが大事です。その積み重ねで文化も生まれていきますし、相互の資源の共有などサステナビリティに必要なベースができていきます。日常のこのような小さく気軽な信頼のきっかけがたくさん生まれていくことも大事であると感じた経験でした。

しかし、できる限り少なくしたものの、やはり捨てざるを得ないものもありました。クリーンセンターで廃棄するときの心の痛みたるや、忘れられません。そもそも今後は物を購入すること自体を減らしていこうと強く思いました。これは僕個人の経験ですが、やはり資源を地球から必要以上に取り出しては加工して物を作っては廃棄するという現在のビジネスの仕組みはやはり破綻していると確信した経験でもあります。
そして、人口も減っていく中でさらに物は必要とされなくなっていきます。一方で地場のものづくりの方々がその素晴らしい技術や蓄積されてきた叡智を受け継いでいくことも大事なことです。そのためにも、新しい物を作って売るだけではなく、修理やアップサイクル、譲り合いやシェアなど、もともと日本人が「もったいない」精神で当たり前にやってきたことによって、事業を運営していくということも取り組んで行く必要があります。

こういった叡智は過去の日本にたくさん実現されており、昭和初期くらいまでは当たり前に行われてきたことです。これらの叡智を現代に合わせてアップデートしていくこと、これが受け継ぐべき姿勢であると思います。

こんなことを考えた年末年始の引越し作業でした。

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北林 功(Isao Kitabayashi)
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