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DESIGN WEEK KYOTO2023終了。感謝と共に、今後へ向けての想い

「DESIGN WEEK KYOTO 2023 in 丹波・京都・山城」を2月16日−19日に開催

今回、初めて南丹市からの2社、長岡京市からの1社が加わり「丹波・京都・山城」というエリアで48社の多種多様なモノづくりの現場を開いて交流する「オープンサイト」イベントとしてDESIGN WEEK KYOTO(以下「DWK)を実施しました。行政区域にとらわれずグレーターロンドンならぬ「グレーター京都」として京都の文化・産業を実質的に形作っている地域に少しずつ広げていっています。
まだアンケートなどを取りまとめているところなので、詳細はまだこれからですが、多いところでは4日間で100人ほどの人が訪問し、モノづくりの担い手の皆さんと深い交流の時間を持っていただけたのではと思います。

※イベントの詳細はこちらからご覧ください↓

まずはDWK2023を一緒に運営してくださったスタッフのみんな、本当にありがとうございました!理想論ばっかりで色々と不足している僕なので、このようなイベントを開催できたのも、みんなが力を貸してくださったおかげです。

いろんな面で支えてくださったパートナーや協力者、自治体の皆さん、ありがとうございました!僕の拙い話を理解して、より良い京都にしていく上で不可欠な取り組みだ!と応援してくださっている皆さんがいてこそ、成り立っています。

そしてこの想いに共感し、現場を開いて交流する「オープンサイト」として参加してくださった48のメンバー企業の皆さん。本当の京都=「True Kyoto」を形作っている皆さん一人ひとりの方々の想いや取り組みがまさに京都そのものであると今回改めて感じることができました。

皆さんには感謝以外の言葉が浮かんできません。ありがとうございました。

イベントの詳細報告等は、今後レポート等にまとめていきたいと思います。

2016年から8回実施してきての振り返り

思えば2013年に初めてアメリカのオレゴン州ポートランドを訪問し、街中の多種多様な人たちがフラットにオープンに交流してどんどん新しいアイデアが生まれ、それが社会・経済を活発にし、互いの信頼関係も醸成している様子を目の当たりにしました。その際に知った「DESIGN WEEK PORTLAND」を2014年に訪問し、「自分たちのシゴトの現場をオープンし、想いを伝えることで新たな交流、新たなアイデアが生まれていく」という取り組みに衝撃を受けました。物を作って売る、あるいは販売先を見つけるといった目先の売上を目指す様々な取り組み(それはそれで大事!)以外に、こんな方法で街を、社会を活気づけていくことができるんだと気づきました。そして、まさにこれこそ業種の壁や様々な見えない壁によって閉塞感が漂う今の京都が持つ可能性を解き放つために必要な取り組みだと確信しました。

では誰がそれをやるべきか。

そう考えた時に「自分のような人間だ」と客観的に思いました。既存の大きな組織などは、既存の枠の中で取り組んでいること(それはそれで大事)があり、それらの取り組みも継続しながら既存の枠を取り払って交流を促進していくには、全く新しい概念によって交流を促進し、信頼関係を深め、議論を生み出していける「場」(組織ではない)を創ることが必要だと考えたのです。
そういったことをするには、既存の京都の人たちでは色々あって難しい。であれば、リスクを背負えるヨソモノでありながらも京都の人たちの考え方にもリスペクトがあり、なおかつ適度にそれぞれの人たちとの距離感を中立に保ち続けられる存在が望ましい。
そう考えていくと、同志社ビジネススクール時代にこれからの京都に必要なモデルとして、ハブとなるコーディネーターの新しい存在意義が見えたのです。
そこで、自分がリスクを取って開催するに至りました。
後押ししてくださった京都信用金庫の榊田さん(現・理事長)、そして妻であり事業を支えてくれている佳奈がいてこそ始められ、そして続けてこれました。

8回続けてくる中で、丹後・中丹地域での開催など、開催エリアも拡大し、そして様々な交流の中から新しい取り組みが生まれて来ました。

領域の壁が溶けていくことによって、新たなアイデアが生まれ、実現していくということを実感させてくださったのが、初期から参加してくださっている仏師の三浦耀山さん。
工芸と町工場というモノづくりの中での領域を超えた融合がきっと新たな価値を生み出すと確信していたのを、三浦さんはまさに「ドローン仏」として実現されました。
「売れるの?」といった目先の経済性だけを追っていては生まれない文化的価値を生み出した結果、三浦さんの下で仏像彫刻を学ぶ人たちは3倍以上にも増え、さらに活動の展開もどんどん広がっています。その時代における最先端の技術や表現方法を取り入れて、仏教の世界観を伝えていくという、まさにこれぞ本当の伝統の姿勢です。DWKがそのきっかけの一つになったことは、大変嬉しいことです。

三浦さんをはじめ、これらの領域(と思い込んでいたこと)を軽々と超えていく活動が他にもたくさん生まれてきました。
そこでのキーワードは、宇治エリアに拡大した2020年から加わってくださった金属加工のナンゴーの奥野さんがアイコンでもある「一緒になんかしょうー!」です。
この言葉に僕は「これだ!」と確信しました。「なんかしょうー!」の精神でまずはアイデアを考えてやってみる。それがまさに出発点となり、創発・双発が生まれていく。

そして、こういった動きを加速しよう!ということで、今年はついにアワードを設けることに。単なる表彰にせず、受賞者がやりたいことをさらに加速させ広げていくためにクラファンに全面的に取り組むということで、PARCOさんが展開するクラウドファンディングの「Booster」とDWKが共同でサポートすることになりました。アワードの名前は「なんかしょうー!」→「なんか賞」→「NANCAR AWARD」と極めてシンプルに(オヤジギャク)。
この運営はスタッフのうっちーと学生スタッフの伊藤さんが担ってくれました!ありがとうー!
こんなふうに少しずつ、皆さんのおかげで当初の想いが具現化し、イノベーションやアイデアが生まれる「ぬか床」ができていっています。

オープンサイト向けワークショップによる成果

48のオープンサイト各所に行かれた方々は感じてくださったと思いますが、オープンサイトは、一般的な工場見学とは全くの別物です。

工場見学とオープンサイトの違い

このように、自分たちの思いや地域とのつながりなどの由来を伝え、共感を生み、新たな関係性を生み出していくきっかけとしていきます。新たな仲間やスタッフの採用、現場の意識共有や5Sの浸透、地域の人たちの自社のファン化など、想いを伝えることで様々な効果が生まれます。商品の販売や販路の開拓などは、その結果生まれる効果の一つであり、それが目的ではありません。「お金が目的になると邪念が入る」とは、京都で1000年以上続けているあぶり餅屋さんの一文字屋和輔さんの女将さんのお言葉。

このあたりの想いを持ってモノづくりに取り組んでいる皆さんの笑顔や横顔、現場の雰囲気が最高にカッコいいし、感動する。しかし、なかなか素晴らしさが伝わらない。異分野の人たちに伝えていくためには、このあたりのコミュニケーションの仕方のやり方の変更や改善が必要と考えました。
「コミュケーションは、伝わってナンボ」
「コミュケーションは受け手が決める」
これがセオリーです。
そこでメンバー企業の皆さんにはワークショップを実施しました。このワークショップは、僕の前職であるグロービスでも様々な企業研修でご一緒し、今もビジネススクールで教鞭を取る沼野利和さん、丹後でのDESIGN WEEK TANGO2021を共催したCADENAの皆さんにご協力いただき、一緒に企画運営しました。

かなり良い出来に仕上がっており、他の地域でももっと活用していけるものになっていると思います。実際、河内長野市でも「オープンカンパニー」イベントを開催するにあたり、そのエッセンス版を実施しました。それが皆さんの自社および地域とのつながりなどが格段に向上するなどの効果も出ています。

このワークショップのエッセンスを凝縮したものは、今後テキストとしても公開していきますので、ご期待ください。

クロスカルチャーコーディネーター(X-CC)育成プログラムの初開催

さらに、地域の叡智を受け継いで今に生かしていくための取り組みが地場産業にはたくさんあります。そういった今の時代や社会に求められる考え方を学ぶ場として、地域のモノづくりの現場や地域の文化的景観は世界的に見ても価値があります。
一方で、そういった学びと議論の場を運営していくには、間に立つコーディネーター的なチームが必要ということを、ここ数年感じていました。地域の歴史文化、モノづくり、現代のビジネス、グローバルな社会の変容など、多岐にわたる分野を網羅し、議論の場をファシリテーションし、地域の方々からの学びをコーディネートする人です。単なるガイドとは大きく異なります。
そこで、同じ思いを持つ、京北に拠点を持つROOTSの皆さんと共に、「X-Culture Coordinator(クロスカルチャーコーディネーター、以下「X-CC」)の育成プログラムを京都府北部と南部で実施しました。合計で20名ほどの受講者が参加され、約半年にわたってオンラインでのインプットならびにリアルの体験、実践ツアーなどを含めて、最終的には素晴らしい学びのプログラムの設計をできるまでになりました。

こちらのプログラムの内容もテキストにまとめましたので、近々公開予定ですし、次年度も引き続き実施していく予定です。

今後の方向性(大きく変化します)

ここまでの取り組み、そして世の中でのオープンファクトリー等を取り巻く環境の変化を踏まえて、2023年度は大きくDWKを変化させていきます。

オープンファクトリーならびにそれに類する取り組みは、日本各地で急増し、近畿では約20ヶ所、日本全国では50ヶ所を超える地域で開催されるようになって来ました。ここまで増えてくると、もはや日常的に日本のどこかで開催されていると言えるでしょう。しかし、各地域での開催は、年に一回しか無いことがほとんどです。そこで、Kyotoでは毎月に近い形で、規模は小さくともツアーも含めて頻繁に実施していきます。
ターゲットも分けて実施することを想定しています。例えば宇治では地元のモノづくり産業を早い段階から知ってもらい、将来の定住促進や地元への愛着を高めるために親子向けツアーを宇治市さんと一緒にDWK期間と夏休みに展開しています。

こういったことを京都府内各地でメンバー企業やX-CCの皆さんと共に展開してまいりますので、興味のある自治体や団体の皆さんはぜひお声がけいただけますと嬉しいです。

これらの通年の交流活動を「DESIGN KYOTO」とし、年に1回に開催する「DESIGN WEEK KYOTO」は国際的な「デザイン」をコンセプトとした国際カンファレンス+京都を深く知り、交流を深めるツアーの場へと進化させていきたいと考えています。

そして2025年には海外からも多く来場される大阪・関西万博が開催されます。それまでに体制と仕組みを整えて、2025年以降につながる場を準備していきます。

これからの「DESIGN KYOTO」のさらなる進化に、ぜひご期待ください!そしてこの活動にぜひ一緒に参加してください!
「一緒になんかしょうー!」

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北林 功(Isao Kitabayashi)
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