オラ。
江ノ島からの冷たい風に煽られ歩いていると、急に背中に重みとぬくもりを感じた。
「?」 振り返るとオラウータンがいた。僕が笑うとそいつも笑う。 「まぁ、いいや」 しばらく行くと、そいつの母親だと言うタイの女性に会った。 「オラはいい子なんだけど、米兵との子供なんで、鳥インフルエンザなのよ」 瞳が黒く大きい。 僕は、その米兵とタイの女性の間に生まれた、 鳥インフルエンザのオラウータンのオラを背負い家に戻った。
「疲れたよ」 オラは哀しい顔をして笑う。 僕の家族はオラの存在に気づいてはいるが、関与せず、という態度を取っている。 今日はイブイブだ。
ふと、思いつきオラを眠らせてからケーキを買いに行く。 帰るとオラは涙を浮かべていた。
「いなくなるなよ」
僕はケーキを差し出すと。 「ほら、オラ、ケーキ!おまえいくつ?」 「ん??????」 まぁ、いいや。僕はケーキ屋から貰ったロウソクを全部オラに渡した。 ケーキは相変わらずぼそぼそだったが、オラは嬉しそうだった。
今朝、起きるとケーキの残りを前に、オラが座ったまま寝ていた。 ロウソクが5本、立ててあった。
「まだ五歳児か。さて、今日はクリスマス・イブだ。オラでも連れて、どこ、行こうかな」
夜には、雪が降るらしい。メリー・クリスマス。