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ファンデルヴァーの失われた鉱山  PCの活躍を伝える試み  最 終 夜  ファンダリンの夜明け

 バグベアのいた守衛部屋から北へ向かう通路に出たヴェイト、ウルリッヒ、ムサシ、アリスの4人には、ピリピリとした緊張が走っていた。
ブラックスパイダーこと邪悪なドラウ、ネズナルを打ち倒してはいたが、その手下のバグベアどもがどこに行ったのか、いまだ不明のままだったからだ。
加えて、ネズナルとの闘いで暗がりから襲ってきたシャドウ・デーモンもいつの間にかいなくなったままだった。
デュマイソン神殿のあった激戦の場所、丁字路の左側の通路を睨みつけるようにアリスとウルリッヒが注意しながら、右手の通路をムサシとヴェイトが油断なく確認してみると、通路を出たすぐ左側の脇から細く流れ出た小川のような音が聞こえ、その水流が大きな中央の暗がりの底へと流れ落ちているのが窺えた。
部屋の中央には広い裂け目が広がり、西側と東側を断裂するようにその水を飲み込みつつ、北側の裂け目の底へと注ぎ込んでいる。
裂け目の底は暗く、後ろを注意しながらも4人で慎重に部屋に入ってみて、ようやく底が大規模な爆発と崩落した洞窟の成れの果てであることが分かり、そのゴロゴロと岩の転がる30フィートほど落ち込んだ場所には、西側の床にクサビで頑丈に固定された数本のロープが垂れ下がっており、床に散乱する採掘道具から、バグベアどもが数日前まではここで何かを掘っていたことが窺い知れた。
4人はネズナルの言葉から、出会ったときはまだ目的のモノを見つけていないことは予想できたが、念のためと裂け目の底に積み重なった瓦礫や土砂を捜索してみる事にした。
どの場所も交戦の痛々しいまでの痕跡は見受けられたが、北側の水が吸い込まれている場所はゴウゴウと音を立てており、水路の先まで息が続くかどうかは怪しく、それ以上先に行くのはためらわれる状況という事ぐらいで、目ぼしいものはなく、西側の崩落部分も大規模な地滑りや爆発の跡が酷く、少し捜索したぐらいでは何か分かるような状態ではなかった。
南側の亀裂の端にいたっては、天井から深く切れ込んだ裂け目の終端であると同時にバグベアが手荒に掘り返したせいか、瓦礫に触るのも危険な状態に見え、さらなる崩落を招きそうで行き止まり以外の手掛かりを得られないまま、そっと手を付けてみるのがやっとの状況だった。
これに対し東側の崖下は、一気に押し流されたものが沈殿した痕跡が残り、二つ続く元々の水路への崖下には多くの骸骨や錆びついた武器が絡まるように堆積していた。
ムサシはその中から、シャドームーンの明かりに照らされて反射した棘の閃光に目を留め、一人のドワーフの亡骸を注意深く眺めた。
そのドワーフは、ヴェイトが来ているような荒々しい棘を多数生やした鎧をまとい、今もなお凄絶に戦っているかのようにオークやオーガの骨の中に埋もれていた。
しかし、その鎧は黒々とした滑らかな艶を保ったままの皮鎧で、棘も一切錆びつくことなくキラキラと輝くような光沢をまとっていた。
掘り起こし、3人を呼び寄せてみると、ウルリッヒが物珍しそうにその艶やかな皮鎧をなでながら、アダマインテインの棘ですね、ドワーフの為せる、魔法の一品ですとヴェイトに振り返った。
「そうだとすると、やっぱりここが波音の洞窟で間違いないってこと、なの?」
不思議な鎧を見たという顔で覗き込むアリスに、ヴェイトは重苦しくうなずくと、そうじゃろうな、ワシのご先祖以外、こんな代物は創りはすまいて、と鎧に見入り、ムサシはせっかくだから貰っていったらどうかとヴェイトに言ってみた。
ご先祖様の遺志を受け継ぐのもありかもしれんな、とアダマインテイン製のスパイクトアーマーを手に取ったヴェイトは、この鉱山を再びドワーフ達の手の元に戻せるよう微力を尽くしてみる証として、自らの鎧を今は亡き偉大なる先人に譲り、丁寧に埋葬しながら誓いを新たに波音の洞窟の真相探求に邁進することとした。
 ヴェイトが洗礼を受けたような面持ちで身なりを整えたころには、他の三人がこの部屋の北西部はネズナルの寝床とヌンドロが捉えられていた場所だったことや東側の干上がった水路の先は、フレイムスカルのいる溶鉱炉の部屋であることを確認し、残る北東部の狭い水路跡を次の進路として辿ってみる事にした。
ドワーフがやっと一人通れるくらいの狭く、またかつての川底であった様子のゴロゴロと丸い小石が転がる足元は非常に歩きにくく、砂利や体重を乗せると度々ズレ動く小石に足を取られそうになりながら這うように一人づつ進むしかなかった。
だが、その古い川床を進むにつれ、叩きつける大きな波の音が飛沫となって霧と化して岩盤を濡らしはじめ、やがて巨大な洞窟の地底湖らしき場所へと躍り出た。
先頭を歩いて来たヴェイトには、狭い岩棚から押し寄せ、ボコボコと沸き立つ巨大な地底湖と、何処かへ流れ出る北東への川のようになった深い流れ、そしてこれまでずっと自分たちの耳に鳴り響いていたリズミカルな響きの正体が、ここでひと際大きな轟きをもって出迎えてくれたように聞こえた。
北西の端から出てきた4人は、抉られるように落ちくぼんだ岩棚に打ち付ける波を呆然と眺めながら、滑りそうな細い岩棚からうねりを上げて飛沫を飛ばす波の激しさに圧倒されながら、やや蒸してくるような蒸気を避けるように慎重に岩棚を伝って、東側にある階段へと向かった。
自分たちが来た道、元の川床とこの岩棚の南側に開いた水路は、大昔はこの地底湖に流れ落ちるように、水車を適度に回していくために掘られたものだったのだろうと、ヴェイトがドワーフのしっかりした仕事跡を見ながら話し、今もなお水と化け物さえどうにかできれば、あの溶鉱炉もつかえるのではないかと一同は未来を一瞬、思い描きつつ地底湖を後にした。
岩棚からの階段を上がると、魔法の応酬によりひどく痛めつけられた洞窟の様子が現れ、崩れた構造物や溶解して一体化した壁とともに、白骨の残る破壊的な惨状が広がっていた。
だが、それとは別に強い魔法のオーラがウルリッヒにウィードの見事な織物の紡ぎようを伝え、そこここに露出した鉱脈から放つ、まるで満天の星空のような煌めきを意識に働きかけてきた。
今までドワーフ用の高さが多かったせいで手狭に見えていた容貌も一変し、アリスが久々にピンと背筋を伸ばせると背伸びをすると、黒く煤け打ち壊された石造りの一角は、思いのほか広々とした空間に見えきた。
洞窟に建物でも作ったかのように見える区画をみて、一行の手前に見えていた扉に近づいてみるが、それは高熱にさらされ、周囲と一体化した、もはや鉄と木できたレンガ造りの壁と呼んでよい代物となっており、こじ開けるというより壁をどうにか破壊して押し入るしか方法は無さ気だった。
北側から見えた扉はだめでもと、少し回ってみると、溶鉱炉の部屋へと続く通路が見えたが、さきほどの溶けた扉の部屋へと繋がりそうな両開きの扉がすぐ近く、西側の真っ黒に焼けただれた壁側にいまだ体裁を整えたままで残っていた。
その一つ先の南側の区画は一段下がったところに同じように両開きの扉が見えたが、その先の通路は依然引き返したキノコの生息地につながっているようだった。
ならば、もうここで終われそうだと踏んだ四人は、慎重に手前の扉からとその中の様子を耳で窺い、一番魔法のオーラが強く漂っていそうな緑のオーラを感じるというウルリッヒの言葉に鼓動が早くなるのを感じながら、ムサシが音もなく隙間を開けたドアの中を覗き見た。
 ―――ようこそ―――
初めに響いたのは頭の中。
そのやけに不明瞭にゴボゴボと響く声に、一同の顔色が曇る。
目の前に広がる巨大な工房は、戦闘の傷跡を盛大に残しており、部屋の至る所に火であぶられた跡や衝撃で剥がれ落ちた壁が窪んだ黒焦げの無残な姿をさらけ出していた。
だが、作業台に囲まれた部屋の中央には、いまだ緑の炎を爆ぜさせ、気味悪く燃え盛る火鉢を設えた石台が熱も感じさせずに揺らめいていた。
そしてその後ろには直径4フィート程の球状の塊の中心に大きな目玉をもち、体の四方には触手の先に不気味な眼窩を備えた怪物がふわふわと浮いていた。
声はその怪物が発したテレパシーのようだった。
加えて、石台の脇に寝そべっていた2頭の黒々とした大きい犬が立ち上がって唸り始める。
口元にチラチラと炎を吹き出しつつ威嚇するその犬と怪物を見て、地獄の番犬、ヘルハウンドを従えたスペクテイターとは、とウルリッヒが緊張の声を上げると同時に、スペクテイターはさらに4人に問いかけ始めた。
「部屋に入るものには死か地獄への招待を。去る者には地上への生還の道を授けよう。」
その声を聞かずか、耳に入らずだったのか、ヴェイトが火鉢の炎を剣で指さす。
「あれこそまさに魔力の源泉なる鍛冶の炎、あれぞ呪文の鍜治場に違いない!」
何!と3人が目を見張り、それに呼応するようにスペクテイターが目を細めるとヘルハウンドも身構えた。
「この部屋を穢さんとするものに地獄の業火を!」
一斉に息を吸い込むヘルハウンドをみて、ヴェイトが勢いよく部屋に突っ込みムサシもほぼ同時にヘルハウンドに切りかかる。
その連続攻撃に溜まらず炎の息をまき散らしながら苦悶の叫び声をあげるヘルハウンドが、怒り狂って噛みつこうとするがヴェイトは盾で横っ面をはたいてこれをかわすと、そこに奥に浮かんだスペクテイターから光線が一直線に伸びてきた。
目の端でとらえていたヴェイトは素早く身を屈めてそれをやり逃すと、その横では同様にムサシも紙一重にも見える華麗なステップで錯そうする光線の隙間を掻い潜ってみせた。
そこにもう一匹のヘルハウンドから業火のような炎の吐息が二人を包み、ヴェイトとムサシに火傷を負わせるが、怯むことなく睨み返す二人に息を吐いた地獄の番犬が一瞬怯んだ様子を見せる。
その隙に扉の外からアリスがスペクテイターに連続して矢を射かけると、一分のズレもなく眼球のど真ん中に立て続けに突き刺さった矢じりに、勢いよく吹き飛ばされるようにスペクテイターは吹き飛ばされると、そのままベシャリと床に力なく墜落していった。
直上に並んだ怪物たちをウルリッヒがほとばしる電撃の渦で一直線に吹き飛ばすと、唯一よろよろと立ち上がろうとしたヘルハウンドも、ヴェイトとムサシの猛攻にあっという間に地に伏して動かなくなって息絶えていった。
 闘いが終わり、ウルリッヒの電撃が掠めたにもかかわらず、いまだ変わらぬ炎を揺らめかせる火鉢を取り囲むようにして4人が部屋に入って、改めてその火鉢をじっくり観察してみると、、確かに部屋の外にあふれ出すほどの魔法のオーラの根源がこの炎であり、洞窟一体に魔法の力を供給している事がウルリッヒに分かったが、その力はかつての伝説の話には程遠いほど儚く、力強さを感じることはとてもできない状態だった。
試しにとアリスがその炎に矢じりを一本さらしてみるが、確かに矢が燃えることもなく、ただ炎が微かにまとわりつくように矢じりに微かな緑の燐光を灯す程度で、何がおこるでもなく時間が過ぎていった。
何となく光が矢じりに吸い込まれた感があれど、それ以上は特に変化はなく、ただ、ちょっとだけ魔力を帯びたような感覚があるとウルリッヒがその状態を観察して考察を述べた程度だった。
その間にムサシは、奥に見えた扉から、初めは融解して開けれなかった部屋に続く扉をくぐり、奥の部屋の様子を見に行ってみた。
頑強であったはずの錠前を事も無げに外したムサシが中を窺うと、そこには、これから呪文の鍜治場で鍛え上げる準備を施されたアイテムが陳列されたり、仕上げの細工を施すための工具などが設えてあった部屋のようだったが、ここも激しい破壊の跡が一面を覆い尽くし、黒い煤だらけのガラクタ置き場と化していた。
だが、その中で煤に負けない煌めきを感じ取ったムサシは、奥の方にあった胸当てを手に取ってみた。
その軽すぎて重さを見間違えて勢いよく持ち上げられた鎧は、ムサシの手を滑り、煤の下から白銀に輝く金属の輝きと、胸をゆったりと包み込む翼の意匠とを再び人の目に焼き付けた。
女性用に作られた優美なドラゴンの意匠のブレストプレートは、一振りで煤を払い落としたムサシの手に、驚くべき軽さに加えて金属のすれあう音や打ち合う音がしない静穏性を伝えて、再び彼を驚かせた。
台に残っていたラサンダー神の聖印のついたメイスも拾い上げると、いまだ炎の謎を解明しようと火鉢を睨みつけるウルリッヒに二つを持って帰ると、鑑定をお願いしてみた。
 これを快く引き受けたウルリッヒは、ムサシの目に狂いはなく、素晴らしい逸品だとミスリルのブレストプレートを評価し、同様に恩寵の籠った、特別なメイスであることも見抜いてみせる。
アリスしか着れないし隣りに部屋もあるしと、試着をしてみたらどうかというムサシに、皮鎧しか興味ないと言いながらあからさまに怪訝な視線を返すアリスだが、ヴェイトが物は試しだ、試してみてもよかろうと促す。
アリスがヴェイトが言うならとおずおずと隣の部屋に入っていくと、なんでという顔をしたムサシと、知らんとため息をつくヴェイトをよそに、ウルリッヒはまた呪文の鍜治場の謎を解明すべく緑の炎を見つめ返していた。
ほどなくして、明るい笑みと共に部屋から出てきたアリスは、音もせず重さも感じさせず、今まで以上に動きやすいブレストプレートに、驚きと思いのほか気に入った事を嬉し気に語ると、これでひと段落ですね、とその様子に微笑むウルリッヒに、頂くことにするわと微笑み返した。
 いよいよ最後の部屋、と四人は隣の部屋を見てみようと一つ南側の区画へと降りてみると、こちらの扉は先ほどと同じように両開きではあったが、ヒビが幾重にも入り、鉄製の蝶番やドア枠が半ば溶けかかって中途半端に開いている状態だった。
何より、その隙間から中のものが発する腐臭がありありと漂ってきていた。
破損した隙間から様子を窺うと、ゾンビが3体、呆然と立ち尽くしている様子でうつろな視線をどこか違う世界を見つめるように虚空へと投げかけていた。
その他は燃えただれた痕跡の塊と化した家具であったはずの瓦礫や煤焦げた壁がみえるだけで、これといったものは、部屋の南側に見える奥へと続く扉くらいだった。
この程度ならと、扉を押し開けてみるが、部屋の前にいる4人にゾンビは何も反応を示さず、とりあえず一歩とムサシが中へ足を踏み出すと、奥の扉の前に、一迅の風が吹いたように床から黒い影が沸き上がってきた。
シャドーデーモンか!と緊張したのも束の間、その影は半透明の魔法使いのようなローブの奥から赤く光る視線とと鋭い爪をムサシに向け、
「汝らは我に仇なすものなりや。汝らの命は失われるべきもの、我が至宝は我のみのもの、断じて立ち入ること許すまいぞ!」
と消え入りそうな声にもかかわらず魂を引き裂きそうな辛辣な響きを部屋に反響させた。
だが、今は安らかに眠れ、との声とともに轟音と業火が部屋を包み込み、ウルリッヒのファイアーボールが炸裂すると、その一瞬後に駆け込んだムサシの魔法の剣が、襲い掛かろうとしたレイスの体を朝露の霧のように昇華させていった。
ファイアーボールの余波を食らいフラフラになっているゾンビ共はあっとゆう間にヴェイトとアリスに打ち倒され、部屋は静寂に包まれ、かつて魔道士たちが集っていた場所に残っていた最後のひとりも、同志たちの元へと怨念と憎しみから解き放たれ、散華して消えていった。
部屋の様子は凄惨な戦闘跡以外はこれといったものは残されていなかったが、頑強に施錠された扉の奥に残っていた奥の部屋から、ムサシは事も無げに古びた櫃の鍵を開け、その中に丁寧に納められていた宝石やパイプ、そして魔道士の杖と指輪を見つけた。
奪われまいと固執し、怨念の塊となった元凶ではあるが、その理由にも頷く魔法の品を見て、ウルリッヒは供養を兼ねて持ち帰りましょうと杖を包むと、グンドレンと合流し、採掘現場と溶鉱炉の部屋以外は何とかできるように色々な協力を仰ぎに戻る手はずを整えるのが良さそうだと語り始める。
その様子を見ながら、バツが悪そうにムサシは一本の大きな巻物を3人の前に差し出す。
「杖と一緒に見つけた……」
一同が不思議そうに覗き込む中、ムサシは波音の洞窟の地図を広げ、この洞窟の詳細な破壊前の地図を披露すると、それを見た3人はクスクスと笑い始める。
「これでマッピングも完成ね」
「違いない。捜索も完了じゃ」
「波音の洞窟の証明も出来て完璧です」
笑い声がひとしきり大きく響くと、次は右手の法則ってのを提唱してみるかと言われる前にと、ムサシがファンダリンに帰ろうと叫び、四人はグンドレンの待つテントへと歩き始めた。

 後日、グンドレンたちとファンダリンに帰還したヴェイト、ウルリッヒ、ムサシ、アリスの4人は、新しい鉱山の経営者となるロックシーカー兄弟と契約を結び、鉱山からの収益の一割はファンダリンの繁栄のために寄付する事を報酬しにてもらい、またレッドブランドのスポンサーとしても鉱山守備隊と町の警備団の関係構築を結び、ムサシ達のアジトのトレセンダー屋敷再建を無償提供してもらう事とした。
もちろん、その屋敷にはヴェイト、ウルリッヒ、アリスの三人の部屋が一番良い間取りと位置に陣取り、ファンダリンに訪れた際には町を一望しながら優雅な一時をいつでも堪能できるよう、ムサシが責任をもって管理するという話になった。
数日の祝宴と滞在の後、ヴェイトはトライボア街道の先、ヤーターを抜けて己氏族との再会を果たしに旅立ち、ウルリッヒはアリスと共にネヴァーウィンターへ赴き、古代王国の砦でありギザ牙族のアジトになっていた遺跡の祠としての再整備の調整へと奔走しなくてはならないが、新たな知識として波音の洞窟の魔法の鍜治場の英知を解析するため、またファンダリンに戻るとムサシと握手を交わした。
アリスはウルリッヒと共に戻ったネヴァーウィンターでさらに人脈を広げ、新たな人材と巡り合い、サンダツリー再建へといよいよ乗り出すのだという。
それぞれの旅立ちを祝い、ムサシはファンダリンに来たときは一声かけてくれと言いつつも、俺もどこかに旅に出ていないかもしれないが、ドループがその時は良くしてくれると語り、自分の新たな人生を歩み始める準備をすることとした。

 ファンダリンの四英雄の話はほどなくして、吟遊詩人の軽やかな歌声の奏でる、芳醇な英雄譚の香りを情感たっぷりに余韻へと繋げる歌として広がり、酒の友として早くも酒場の定番となりつつあった。
 ファンダリンの四英雄の話は、その幕引きとともに新たな夜明けを迎える一歩となって、今もそれぞれの未来へと繋がっている。


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