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ノーベル賞と折り鶴とAIへの警鐘の話(2024年10月2週)
毎週土曜、シニアの皆さんを対象にZOOMを通じ、時事ニュースや科学ニュース解説を行っています。
2024年10月第2週は、ノーベル賞と折り鶴とタンパク質折りたたみとAIへの警鐘のお話をしました。
(Title Image: Ill. Niklas Elmehed © Nobel Prize Outreach)
2024年のノーベル平和賞は日本原水爆被爆者団体協議会に授与されることになりました。授賞スピーチの ”The hibakusha help us to describe the indescribable, to think the unthinkable..”というフレーズがとても印象的でした。紹介ページでは折り鶴のイラストが使われていました。
祈りの象徴としての折り鶴と、その展開図
外国でも知られる「ORIGAMI」の中でも、折り鶴はとくに代表的な造形です。祈りの象徴でもありますが、気になって探してみたら、展開図で折り鶴を紹介する僧侶の方のブログページがありました。
さらにいろいろと探すと、クイズに強い名門校の折り紙研究部の活動を紹介する新聞記事で、とりわけスゴイのが見つかりました。創作折り紙作品の造形も息を呑むほどにビビッドなものですが、展開図もそれ自体が作品と呼べるのではと思わされるほど。驚きました。
下記は創作折り紙コンテストへの参加を呼びかける日本折紙学会・神谷哲史氏の一文です。神谷氏はこの分野の第一人者で、先の新聞記事にも、学生が腕試しに取り組んだ創作折り紙作者としてクレジットされています。
「正方形の紙一枚」から出発する、非常に奥深い折り紙の世界。展開図を見るだけでも、そこに注がれたエネルギー密度の凄まじさを感じます。同時に「この展開図から立体構造をただしく推測するのも、かなり困難に違いない」とも思います。2Dから3Dへと次元を飛び越えるには、半端でない努力と情熱が必要に違いありません。
次元を飛び越えるツール
さて、平和賞に先立ち発表されたノーベル化学賞は、タンパク質創成と構造予測がテーマでした。折りたたみ構造を予測するソフトウェアAlphaFold2を開発したDeepMind社のデミス・ハサビス氏とジョン・ジャンパー氏が共同受賞者となりました。
長く連なるDNAに記された情報からアミノ酸がコーディングされ、それがヘリックスやシート状に形を変え、さらに特定の立体構造を持つようになり、その構造こそが機能を規定する..。
もともと1次元の情報が、3次元構造を持つようになるわけなので、その予測の困難さは2次元の展開図から3次元の折り紙を造形するのとは比べ物にならない難しさに違いありません。50年来の課題を解決したと言われるAlphaFold2は、まさに次元を超えるツールだったということなのでしょう。
また、今年のノーベル物理学賞では「AIのゴッドファーザー」と呼ばれるジェフリー・ヒントン氏も受賞者に名を連ねました。受賞の報せの直後、ためしにChatGPTに、数学界のノーベル賞と言われるチューリング賞と本家のノーベル賞の「両方を受賞した人はいるか?」と訊いてみましたが、すでに存在していたようです。初耳でした。
そして「次に現れるとすれば誰か?」と訊いてみたところ、候補者の中にヒントン氏の名前が上がってきました。以下、そのやりとりです。
工学界のノーベル賞と呼ばれるエリザベス女王工学賞との同時受賞者についても訊いてみましたが、シンプルな事実誤認があったので、アドバイスし正しておきました。
「もっともらしさを最適化」するAIに警鐘
日経新聞Webのノーベル賞報道で、デミス・ハサビス氏との交流をコメントしていた新井紀子氏(国立情報学研究所教授)が最近、小中学校でのAI利活用を検討する委員会で意見を述べていたようです。発表資料の一節に深く頷かされました。みなさんもよかったら目を通してみてください。
• ChatGPTが出力する文は「もっともらしさ」を最適化するよう設計されており、ファクトが出現するのはむしろ副産物
【資料1】国立情報学研究所 新井紀子教授 提出資料 (PDF:1.2MB)
以上です。