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【品質出身者が語る】重点指向について解説!【QC7つ道具も】

重点指向とは

重点指向とは、複雑な問題や多くの課題が存在する状況で、最も重要と考えられる問題に焦点を当て、限られたリソース(時間、人材、資金など)を効果的に使用するためのアプローチです。
この方法は、全ての問題を一度に解決しようとするのではなく、最も影響力のある問題や緊急性の高い問題に優先的に取り組むことで、効率的に成果を出すことを目指します。

なぜ重点指向が必要なのか

現代社会において、個人や組織が直面する課題は複雑かつ多岐にわたっています。しかも、時間、人材、資金などのリソースには自ずと限界があります。こうした制約の下で、全ての課題に均等に取り組もうとしても、効果的な解決は望めません。限られたリソースをどのように配分するかが常に問題となっています。ここで重要になるのが「重点指向」というアプローチです。

効率と効果の最大化が目的

重点指向の必要性は、効率と効果の最大化にあります。
全ての問題に均等にリソースを割り当てると、重要な問題が十分に解決されず、結果的にリソースが無駄になる可能性があります。しかし、重要な問題に焦点を当て、リソースを集中させることで、限られたリソースを最も効果的に使用することができます。

具体例を挙げますので、一緒に考えていきましょう。

事例1: 個人の時間管理

あなたは新しい言語を学ぶ、フィットネスのルーティンを確立する、オンラインコースを通じてプログラミングスキルを向上させるという3つの個人的な目標を立てています。しかし、フルタイムの仕事を持っているため、これらの活動に割ける時間は限られています。重点指向のアプローチを適用するために、まず各活動があなたの長期的な目標に与える影響を評価します。

新しい言語を学ぶ
あなたのキャリアに直接的な影響は少ないが、将来的に海外で働く可能性を考えると有益。

フィットネスのルーティンを確立する
健康維持には必須だが、即座に職業的価値を高めるわけではない。

プログラミングスキルの向上
現在の職業において直接的に価値を高め、昇進や給与アップにつながる可能性が高い。

この評価を基に、プログラミングスキルの向上を最優先事項として選択します。その理由は、即座にあなたの職業的価値を高め、収入を増やす潜在的な影響が最も大きいからです。次に、健康は長期的な生産性に不可欠であるため、フィットネスのルーティンを二番目の優先順位にします。最後に、新しい言語の学習は、時間が許す限り進める項目とします。

事例2: プロジェクト管理

あるソフトウェア開発プロジェクトでは、重大なセキュリティの脆弱性の修正、ユーザーインターフェースの改善、新機能の開発という3つの課題が同時に発生しました。プロジェクトマネージャーとして、あなたは限られたリソースの中でこれらの課題に取り組む優先順位を決定する必要があります。

重大なセキュリティの脆弱性の修正
顧客のデータ保護と企業の評判に直接関わるため、最も緊急性が高い。

ユーザーインターフェースの改善
ユーザー体験を向上させるが、即座には収益や顧客満足度に大きな影響を与えない。

新機能の開発
長期的な競争力を高めるが、現在のセキュリティリスクに比べると緊急性は低い。

この評価を踏まえ、セキュリティの脆弱性を修正することを最優先課題とします。企業の評判や顧客の信頼を守ることは、他のどの課題よりも重要です。ユーザーインターフェースの改善は、セキュリティ問題が解決され次第、次の段階として取り組みます。新機能の開発は、これらの課題が解決された後に計画を立て直します。

事例3: 製造業での不良品削減

製造ラインで不良品が発生しているとします。不良の原因として、材料の質、機械の調整不良、作業員のトレーニング不足などが考えられます。どれも一度に調査をしたり、対策することなど到底できません。しかし、リーダーはこの中から最も重要な要因を選び出すことを求められます。
事例1,2のケースでは頭の中で考えれば最優先のものを選ぶことができましたが、今回のケースではそうはいきません。なぜなら、製造業の場合、多くの複雑な要因がからんでおり、単純に一つを選ぶことが難しいからです。材料、機械、人的要因など、様々な原因が考えられ、それぞれが全体の不良品発生に及ぼす影響の程度を判断することは困難です。
そこでデータに基づいた分析が必要不可欠となります。実際の発生頻度やコストなどのデータを集め、その影響度を定量的に把握することで、はじめて合理的な判断が可能になるのです。これが、パレート図の手法です。

ここまで3つの事例を出して重点指向の必要性 - 効率と効果の最大化 - について説明してきましたが、おおよそご理解いただけたでしょうか?
次は事例3の最後に出てきたパレート図の説明をしようと思います。

パレート図とは

パレート図の説明に入る前に、ざっくりこういうものだというのをイメージしてください。

図1. パレート図

図1にようなものをパレート図といいます。
棒グラフは数、折れ線グラフは累計%を表しています。つまり、棒グラフの一番左が一番多く全体の半分以上を占めている。二番目まで対象にすれば、全体の約60%位を占めている。…一番右まで全部選べば100%になる(全部対象なのだから100%は当たり前)。というような感じで読むチャートです。

さて、ざっくりイメージがついたところで、パレート図の説明に入ります。パレート図は、問題の原因や影響を識別し、優先順位を付けるのに役立つツールです。このチャートは経済学者ヴィルフレド・パレートにちなんで名付けられました。彼はある特定の原因が全体の結果の大部分を生み出すことを発見しました。これは「パレートの法則」または「80/20の法則」として知られており、20%の原因が80%の結果を生み出すという考え方です。ビジネス、品質管理、生産性の向上など、様々な分野で応用されています。

パレート図を使用して重要な問題を特定するプロセスは以下の通りです。

ステップ1: データの収集

問題の原因、不具合の発生回数、コスト、時間の浪費など、関連データを収集します。

ステップ2: 原因の分類

収集したデータを基に、問題の原因をいくつかのカテゴリに分類します。

ステップ3: データの分析

それぞれのカテゴリについて、その頻度、コスト、または重要性を計算し、これらを降順で並べます。

ステップ4: パレート図の作成

横軸に原因のカテゴリ、縦軸にその影響(頻度、コスト、重要性など)を示すチャートを作成します。各カテゴリは棒グラフで表され、左から右へ降順に並べます。また、累積影響のパーセンテージを示す折れ線グラフも一緒に描かれることが多いです。

ステップ5: 優先順位の決定

パレート図を分析して、最も大きな影響を持つ原因(通常はグラフの左側にある最初の数カテゴリ)を特定します。この分析により、リソースを割り当てるべき最も重要な問題が明らかになります。

ここで、先ほどの製造業での不良品削減の事例3に戻ってみましょう。

事例3: 製造業での不良品削減

製造ラインで不良品が発生しているとします。不良の原因として、材料の質、機械の調整不良、作業員のトレーニング不足などが考えられます。
パレート図を作成すると、材料の質の問題が全不良品の60%を占めていることが判明しました。次いで機械の調整不良が30%、作業員のトレーニング不足が10%であることがわかりました。この分析から、改善の努力を最初に材料の質の問題に集中することが効果的であると結論付けられます。

パレート図は、限られたリソースを最も効果的に使用するために、どの問題に取り組むべきかを決定するのに役立ちます。このアプローチにより、効率的に問題を解決し、全体の品質や生産性を向上させることができます。

頭の中で決められないものは、データを使ってグラフにすることで初めて重要事項を選ぶことができるのです。

おわりに

重点指向を実践することは、時間とリソースを最も価値のある活動に集中させることを意味します。個人にとっては、目標達成への道を速め、生活の質を高める手段です。組織においては、効率の向上と成果の最大化を実現します。
実践のためのステップとしては、まずは自分の目標や組織の課題を明確にし、それらに優先順位をつけます。その上で、選んだ焦点にリソースを集中させ、継続的に成果を評価していきましょう
重点指向は即効性のある解決策ではなく、継続的な学びと実践が必要です。しかし、このアプローチを身につけることで、個人も組織もより大きな成果を達成できるようになります。今日から、小さなステップで重点指向を生活に取り入れてみてください。

最後になりますが、QC的なものの見方・考え方という視点で言えば、パレート図はQC7つ道具の一つなんですね。7つ道具というからには他6つもあるわけです。色々なツールを知り、それぞれの使い方を理解することで考え方の幅が広がると思います。QC7つ道具については別記事にて紹介しようと思います。

以上、重点指向についての解説でした。
皆さんも、重点指向してみてください。

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