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「漫画家のミライ」なんて、誰にも分からない。
会社の周年イベントの予定が、気づけば想定の10倍集客できるイベントになってた
2020年12月2日から4日までの三日間、デジタルコミックエージェンシーのナンバーナインは「漫画家ミライ会議」という漫画家向けのオンライントークイベントを開催しました。
イベントで実施した8つのトークセッションが、ナンバーナインの公式YouTubeチャンネルにて配信されたので、備忘録的に改めて漫画家ミライ会議について振り返ってみたいと思います。(チャンネル登録よろしくお願いします)
10月に企画を立ち上げた当初はオンラインとオフラインを融合したイベントにしようと思っていたこともあり、ナンバーナインと取引のある漫画家さんを中心に150名くらいが参加してくれたら嬉しいなぁという気持ちでいました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けオンラインのみの開催に切り替え、参加者を漫画家だけでなくイベントに興味がある方全員に広げたことで、結果的に約1600人もの人からの参加申込をいただくまでになりました。
■視聴者数
12/2(水)…962名、12/3(木)…715名、12/4(金)…627名
■視聴数
12/2(水)…1777、12/3(木)…1201、12/4(金)…1062
■同時視聴の最大数
12/2(水)…669名、12/3(木)…510名、12/4(金)…492名
すべてのセッションで500-700名ほどの視聴があり、大盛況と言ってもいいのでは……?と僕自身も驚きと嬉しさが綯い交ぜの結果となりました。実質的に、漫画業界における最大規模のイベントになったのではないでしょうか。
伝えたかったのは、ひとくくりにできない漫画家の魅力
イベント中は、多くのコメントがTwitter上に溢れ、初日には東京都のトレンド1位を獲得する程でした。中には「漫画編集者の話も聞きたい」「海外市場についてもっと聞きたい」といったリクエストもありましたが、今回は「登壇者は漫画家さんだけにする」ということにこだわりました。
※初日の3セッション目に登壇いただいたけんすうさんを除きます
イベント発表時のnoteにも、「業界が大きく変わる中で漫画家がどういう考えで、どんな行動を取っているのか、生の声を聞きたい。聞ける場を作りたい」と書きましたが、じつは僕が今回のイベントで伝えたかったことは他にもあります。
それは、「漫画家は一意的な存在ではない」ということ。
僕もナンバーナインという会社を始めてから強く実感することになったのですが、漫画家という職業は多様性に富んでいて、およそひとくくりにできるような職業ではありません。
商業誌で活躍している漫画家と一口に言っても連載ペースや媒体によっても全く違う環境だし、Webメディアでの連載だったら、それもまた状況は変わります。
SNSで漫画を描いているインフルエンサー漫画家も、TwitterやInstagram、最近だとTikTokなど主戦場とするメディアによって性質が大きく異なります。同人誌にしたって、オリジナルや二次創作やエロといった風に活躍するフィールドが全く変わりますね。少なくても僕にはそう感じるのです。
商業誌の場合、担当される編集者によっても全く進め方が変わったりするから中々一筋縄でいかないところ。まぁ、営業職の中でも法人・個人、新規開拓・ルートセールス、有形・無形商材など様々な組み合わせがあるのと同じだと思ってもらっていいです。
だったら、そんな漫画家さんの生態系に少しでも触れていただけるように、「いろんなタイプの漫画家さんに登壇してもらえたら絶対おもしろい」という気持ちがありました。
登壇いただいた漫画家さんは、『UQ HOLDER!』赤松健さん、『東京トイボクシーズ』うめ・小沢高広さん、『ちはやふる』末次由紀さん、『左ききのエレン』かっぴーさん、『ショジョ恋。―処女のしょう子さん―』山科ティナさん、『おもち日和』吉本ユータヌキさん、『トニカクカワイイ』畑健二郎さん、『彼女、お借りします』宮島礼吏さん、『こぐまのケーキ屋さん』カメントツさん、『幸せカナコの殺し屋生活』若林稔弥さん、『一線こせないカテキョと生徒』地球のお魚ぽんちゃんさん、『異世界行ったら、すでに妹が魔王として君臨していた話。』根田啓史さんの合計12名。
出版社も、ジャンルも、世代も超えて、これだけ多くの漫画家さんにご登壇いただけたのは本当に嬉しかったです。
こうしてみると、ちゃんと漫画家の多様性を伝えるためには漫画家さん以外の方々をお声がけする余地はありませんでしたね。
※かっぴーさんのセッションに例外的に登壇いただいたアルのけんすうさんは、もはやけんすうさんにしかお話しいただけないテーマだったのでここは譲れませんでした。こちらも心より感謝いたします
結果として、8つのセッションはどれ一つ同じものはなく、参加された方々がまんべんなく興味を持ってくれたことがその証拠なのかなぁと思っています。
そんなイベントをナンバーナインが主催できたのも、出版社でもエージェントでも取次でもない、漫画業界の中でもちょっとヘンなポジションにいるからだったのかもしれません。
一線で活躍する漫画家たちからこぼれ落ちた金言の数々。
各セッションで、たくさん印象的な言葉たちが出てきました。うろ覚えですが、中でも特に響いた言葉たちを挙げてみます。
「読者の人生を伴走する作家になりたい」
「自分のエンジンに限界がくるかもだから、外側にエンジンをつくっておきたい」
「『左ききのエレン』のヒットは、プロセス・エコノミーにヒントがある」
「苦手な事務作業を他者に委託して空いた時間で、漫画を描いて稼ぐ」
「売れたいなら、その雑誌で一番売れてる作品の研究をする」
「意図しないホームランには価値がない」
「フォロワーが少ないうちは、数字ではなく自分と向き合う」
「とにかくTwitterで漫画を描いて、人気なかったらやめればいい」
などなど……。様々な金言がどのセッションにも出てきましたが、まったく違うテーマのお話なのに、考えていることや発言がリンクする瞬間がいくつかあったのが、僕の中で一番印象深い思い出です。スタイルは違えど、意外と根底にあるものは同じなのかなと、色々と考えさせられますね。
カメントツさんと若林稔弥さんの言う 「ひとところにとどまることの怖さ」というのは、初日に末次由紀さんとうめ・小沢高広さんが言ってた「モチベーションの拠り所を複数つくる」という話に通づるものがある。
— タクヤコロク(ナンバーナインCXO) (@coroMonta) December 4, 2020
漫画家ミライ会議のセッション全体で言えることなのかもしれない。
#漫画家ミライ会議
他にもまだまだ出てきそうですが、ここからはぜひ登壇者さんたちの言葉で直接聞いてみてください。(再びチャンネル登録お願いします)
結局、漫画家のミライなんて誰にも分からない
ただの思いつきから始まった漫画家ミライ会議は、ちょっとしたハッタリとひらめきと偶然が加わって生まれた奇跡の集合体であり、一方で多くの漫画家たちが本当に求めていた結果の必然にも思えるイベントだったのではないかと思います。
で?漫画家のミライってどーなん?
と聞かれても、僕たちにも正直分かりません。まぁ当然ですよね。ミライ会議なんて仰々しいタイトルつけちゃったなぁと思わなくもないです。それでもイベントを通して、分からないからこそみんなでアイデアを出し合って、時代の変化に立ち向かっていくことはできそうな気がしました。
嬉しいことに、「来年もやってほしい」という声をすでに頂戴しています。
やり終えた瞬間は解放された安堵感から「もうやりたくない」と一ミリだけ思いましたが、やっぱり、また来年もやろうと思います。次も漫画家さんだらけかもしれないし、また違った切り口になるかもしれませんが、それは来年の楽しみに取っておくとしましょう。
でも、一年も待てないので来年1月からは毎月ZOOMウェビナーを使った小さなトークイベント、題して「漫画家ミニ会議」を実施しようと思います。あのやりたくない気持ちはどこへ行ったのでしょうか。
漫画家ミニ会議は、漫画家ミライ会議の子どものような存在で、ミライ会議よりももう少し緩やかに、和やかに、いろいろなテーマのお話を漫画家さんたちとできればと思います。
開催日は、ナンバーナインの社名にあやかって、毎月9日にします。時間帯は18時頃、もしくは19時頃から60分ほどを予定。すでに1月9日のゲストは決まっていますが、詳細はナンバーナイン公式Twitterや社員のTwitterアカウントにてお伝えしますので、毎月9日はナンバーナインの日としてぜひ空けておいてください。(もちろん、YouTubeチャンネルで後日アーカイブ公開いたします)
さて、なんだかんだ長くなってしまいましたが、このnoteを以て、第一回漫画家ミライ会議のお話はひとまず終了とさせていただきます。
これからも、漫画家ミニ会議、そして一年後の第二回漫画家ミライ会議など、みなさんとともに引き続き「漫画家のミライ」を考えていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
※よろしければTwitterをフォローしてください
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— タクヤコロク(ナンバーナインCXO) (@coroMonta) December 13, 2020
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