韓国の「World Webtoon Festival 2024」と、国産webtoonのミライに思うこと
今年の9月、はじめて韓国の地に降り立ちました。目的は、タイトルにある「World Webtoon Festival 2024」の現地視察のためです。
ソウルの聖水洞(ソンスドン)で開催されたこのイベントでは、大人気webtoonの『俺だけレベルアップな件』や『全知的な読者の視点から』を輩出するREDICE STUDIOや、『外見至上主義』や『喧嘩独学』などを生んだPTJ cartoon companyなど、韓国屈指のwebtoonスタジオたちが勢揃い。
聖水洞エリアに人気スタジオのポップアップストアが点在していたり、
メイン会場では韓国国内の優秀なwebtoon作品を選ぶ「2024ワールドウェブトゥーンアワード」を実施していたり、
本来はもっと早く出したかったのですが、今思い出しても熱かったなぁ。荒削りな部分は否めないものの、国をあげて盛り上げるんだという想いが十二分に伝わってきました。
ちなみに今回の出張では、韓国メディア「聯合ニュース」によるナンバーナイン代表の小林さんへのインタビューを実施。
日本のwebtoonスタジオとしてはじめての単独インタビュー。ハンバーグとか寿司とかラーメンとかそういう類の話が出てきます。全文ハングルのため是非日本語に翻訳して読んでみてください。
WEBTOON Entertainment Inc.が米国ナスダックに上場し、その後なかなか伸び悩んでいるという話題が国内でも聞こえてきました。成長が踊り場に来ているという声もあります。
しかし、個人的にはこうした不安定な状況を乗り越えた先に市場の大きな成長が見えると思っています。webtoonというコンテンツフォーマット自体、誕生してまだ20年ほどの発展途上のジャンルです。生みの親である韓国がここからどう盛り上げていくのか、僕たちもwebtoonのプレーヤーとして注視していきたいですね。
「国産webtoonのミライ」はどうなっていくのか
翻って、日本国内のwebtoon市場はどうでしょう。こちらも、2022年ごろの熱狂的な市場の盛り上がりと比べると、いくらか落ち着いてきたように感じます。
当時は毎日のようにwebtoon関連のニュースを見かけ、一時は100以上のスタジオがwebtoonに参入してきましたが、いまも残っているスタジオがどれくらいいるかはわかりません。
でも、撤退する気持ちはわかります。だって、大変ですから。
盛り上がりを見せ始めた2021年当初から比べるとwebtoon1話の制作費も高騰し、クオリティも上がってきている。
漫画と違ってチーム制でつくることが多く、異なる工程のクリエイターたちをディレクションするスキルが求められる。
半年から1年近くかけて15〜30話ほど作って公開しても、課金率を見てすぐに打ち切りの宣告をされる。
当たり前ですが、物語をつくることは簡単ではありません。だから、お金を稼ぐことだけを考えて、成長市場だからといって参入すると厳しい状況になるというのは想像に難くありません。
その一方で、気を吐くスタジオ・編集部の姿があります。ナンバーナイン、ソラジマ、STUDIO ZOON、ミキサーの4社は、特にオリジナルwebtoonの制作に注力しているスタジオ・編集部です。
今回、その4社に「国産webtoonってぶっちゃけどうよ?」的な話をする場を設けました。それが、12月8日(日)に開催される漫画家ミライ会議のトークセッション「どうなる?! 国産webtoonのミライ」です。
個人的な気持ちとしては、「いやいやいや、まだまだ全然webtoon盛り上がっていくで!」という思いと、「あれ、このまま自然と撤退トレンドが進むのか…?」という思いが入り混じっているのが正直なところ。
そんな不安を払拭すべく、本気でオリジナルwebtoon制作に打ち込む4名に「国産webtoonのミライは明るいぞ」という話がこのセッションで聞けたら嬉しいです。
登壇は、『神血の救世主』や『俺だけ最強超越者』、『帰ってきた天才剣聖』など、男性向けwebtoonで実績を残すナンバーナインの漫画編集者・遠藤寛之。
女性向けロマンスファンタジージャンルでスマッシュヒットを飛ばし、海外でのヒットも記録するソラジマからは萩原鼓十郎さん。
2013年のcomico時代よりwebtoon一筋の編集者で、『サレタガワのブルー』を筆頭に多くのヒット作を手掛けるミキサーの北室美由紀さん。
そして、オールジャンルで作品づくりに挑み、『ヒトグイ』でLINEマンガ1位を獲得した元講談社の漫画編集者でSTUDIO ZOONの村松充裕さん。
この4名、バックグラウンドも制作するwebtoonのジャンルも、まるで違います。それぞれ別で事前に打ち合わせをしましたが、考え方もやっぱり違いました。この違いというのが、国産webtoonのミライを占う上で重要なポイントではないかと考えます。
みなさんと一緒に、国産webtoonの明るいミライについて考えたい
webtoonはよく、「ジャンルが狭い」「似たようなコンテンツが多い」と言われますが、はたしてそうでしょうか。少しずつではありますが、ジャンルの広がりが見られるようになってきました。
webtoonはよく、ヒットを出すのが難しいとも言われます。しかし、国内webtoonスタジオや作家さんによるヒット作も増えてきました。印税も、結構還元していたりします。
なにせまだまだ発展途上。参入して2年やそこらで成果が出るようなイージーなゲームじゃないwebtoon市場に本気で取り組むスタジオや編集者たちの話を聞いて、明るい未来を期待したい。セッションに込めた思いはそんなところです。
最後になりますが、本気でwebtoon制作に取り組んでいるスタジオや編集部、作家さんたちは他にもたくさんいらっしゃいます。今回はオリジナルwebtoonに注目したためこの4者の登壇となりましたが、そのことをゆめゆめ忘れず、業界全体が盛り上がっていくことを願っていこうと思います。
webtoonセッション、きっと盛り上がると思いますので是非ライブ配信でお会いしましょう!