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家を売る

この週末は、奈良の実家に戻っていました。昨年父が死に、母一人で暮らすこの家を売ることになり、家の中の不用品の片付けの手伝いをするためでした。

実家に着いてみると、すでに多くのものが消えていました。リビングにあった、飾るというよりはただ置かれていた人形群とか、読みもしない文学全集本とか、亡き父のゴルフコンペのトロフィーとか、綺麗になくなっていました。

東京からはるばる戻ってきたのに休む間もなく、母から台所にある梅酒や漬物の処理を命じられました。一体何年放置されているのかわからないガラス瓶がいくつも棚から出てきました。瓶の蓋を開けて傾けると、黒ずんだ液体が溢れ出し、なんとも言えない刺激臭がマスクを突き抜けて鼻腔に到達します。

全ての瓶を処理し終わると、台所の棚の奥にある使っていない食器を無造作に捨てました。一見高そうな陶器の器や皿については、一応銘が入ってないかを確認してからゴミ袋に突っ込みました。台所がある程度片付いた後は、燃えるゴミや缶瓶のゴミの袋を仕分けして、スムーズに外に出せるようにしておきました。

台所以外の部屋はあらかた片付いていたので、「もうええわ」という母の一言で作業が終わりました。家具はどうするのかと聞いたところ、使えそうなものは家の買主が引き取ってくれるよう調整済みで、要らないものは回収業者を手配済みとのことでした。

齡80に近いのに、しっかりと段取りして片付けを進めていて、矍鑠としていて頼もしい限りです。実質、私が実家に戻ったのは、得体の知れない梅酒や漬物の処理のためだけのようなものでした。

母の新居は、すでに東京の私の家の近くにある高齢者向けマンションを契約済みなので、必要最低限のものをそこへ配送し、残ったゴミを片付ければ、後は引っ越すだけです。

来週は父の一周忌。私たちが育ったこの家ともいよいよお別れになることを報告して、引っ越し前の最後の仕上げを行う予定です。父は生前、この家を売ることだけは拒否していましたが、死んでしまっては止めようがないので、きっと諦めてくれるでしょう。


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