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片足わずか1秒で脱ぎ履きできる革靴『エラスティックシューズ』〜②起源と歴史

エラスティックシューズについて、前回は「エラスティックシューズ」とは?についてまとめました。


第2回目の今回は、「エラスティックシューズ」の起源とその歴史についてです。(全4回に分けて投稿中です)

「エラスティックシューズ」の起源と歴史

起源

初めてゴアを取り得れた靴が作られたのは、1830年代のイギリスだとされています。その時の靴が、「サイドゴアブーツ」です。
アレクサンドリナ・ヴィクトリア(以下、ヴィクトリア女王)のためにデザイン開発され、その靴を愛用したようです。

サイドゴアブーツ

このデザインは、ヴィクトリア女王の靴職人ジョセフ・スパークス・ホールの作品とされている。ホールは「女王は毎日この靴を履いて歩いており、それがこの発明にかける価値の最も強力な証拠である」と主張した。彼の広告では、この靴は J. スパークス・ホールの特許取得エラスティック アンクルブーツ というブランド名で販売されている。このブーツは、乗馬用としてもウォーキング用としても人気となった。

出典元:Wikipedia「Chelsea_boot」

その後、1950年代のイギリスで「サイドエラスティック」がサー・ウィンストン・レナード・スペンサー・チャーチル元イギリス首相(以下、チャーチル)のためにデザイン開発されます。

サイドエラスティック

The ‘Churchill’. A shoe icon designed by George Cleverley for Sir Winston Churchill in the 1950’s.

出典元:George Cleverley 公式instagram

「センターエラスティック」は、正確な開発時期や特定の開発者はあまり記録に残されていませんが、1960年代から1970年代のモダンでシンプルなデザインが好まれた時期に広まったと考えられています。

センターエラスティック(EDWADO GREENのWIGMORE、
引用画像:中古革靴販売ラスタイルシューズショップ

この720エラスティック・オン・インステップ・デミブーツ(センターエラスティックの意)は60年代半ば~70年代のごく初頭までの、約5年からわずか10年にも満たないごくごく短い期間に人気を博しました。

出典元:World Footwear Gallery「センターエラスティックデミブーツ」

歴史

  • 1830年代、ヴィクトリア女王のために「サイドゴアブーツ」がデザイン開発される

  • ヴィクトリア女王の夫:ザクセン=コーブルク=ゴータ公アルバートが議会当院時に履き始めたことで、礼装用の紳士靴として認知が広がる

  • 1800年代後半、男女問わず様々な層に受け入れられ、特に都市部の紳士や労働者にとって、靴紐を結ぶ手間が省ける点が評価される

  • 第一次世界大戦(1914〜1918年)後、乗馬で使用され始めたため「ジョッパーブーツ」の名も混用される

ジョッパーブーツ
  • 1950年代、George Cleverley(ジョージ・クレバリー)により「サイドエラスティック」がチャーチルのためにデザイン開発される

  • 1960年代、スウィンギング・ロンドンの代表的な靴として再評価され、その中心地チェルシー(ロンドン中心部の西寄りに位置する)にちなみ「チェルシーブーツ」としての名が広がる

  • 1980年代前後〜1990年代、ファッションの多様化とカジュアル化が進み、スポーツシューズやスニーカー(Vans #98)など、快適さを求めるシューズにゴアが取り入れられ、アウトドアや日常のライフスタイルにも適した靴が登場する

  • 1990年代以降、George Cleverley(ジョージクレバリー)の最高級ライン「Anthony Cleverley(アンソニー クレバリー)」のChurchill(チャーチル)やGaziano&Girling(ガジアーノ&ガーリング)のChelsea II(チェルシー2)などにより紳士靴の既製品として様々なブランドで同じようなデザインが開発される

以上が大まかな「エラスティックシューズ」の歴史となります。
(諸説あるところもありますので、ご了承ください。)


ちなみに、2010年発行の「紳士靴を嗜む(著者:飯野高広)」には、

『センター、サイドともに日本ではビジネス用の靴として、以前は今以上にポピュラーでした。』

と記載されています。

この本の発行同時期に「Corno bluでは、多くのお客様からの要望があったことから、サイドエラスティックのデザイン開発スタートさせた」と代表の清角に教えていただきました。

という事は、2010年前後の日本では「サイドエラスティック」は、popular(意味:人気のある)ではあったが、本格的に生産している靴メーカーはあまりなかったのかもしれないと私は考えます。
(ここで言う「本格的に」と言うのは、機能面やファッション面などを確立したデザインの靴であると考えています。)



note:村上 紀之

参考資料:紳士靴を嗜む はじめの一歩から極めるまで 著者:飯野高広


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