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靴作りの道具#9『シューメーカーナイフ』

今回は、靴作りで使用している『シューメーカーナイフ』について述べたいと思います。

『シューメーカーナイフ』とは?

主に靴職人や靴修理職人が靴を作ったり修理したりする際に使用する特殊なナイフです。
TINAナイフ※1と呼ばれるものが有名で、ドイツ南部のヴュルテンベルクにその工場があります。

TINAナイフ

150年以上もの間、高品質なナイフを生産し続けていることから、「最高のクラフトマンナイフだ!」と言われています。
ちなみに、元々は農民用のポケットナイフを作っていたようです。
このナイフの特徴として、一般的なナイフと比べて刃が細長く、湾曲しているものもあり、靴の素材を綺麗にカットする際に使いやすい形状です。
もちろん、湾曲していない完全に真っ直ぐで平らなものもあります。

上:平らなタイプ、下:湾曲したタイプ


使用用途

靴作りでは、靴の素材(革や布)を切断し、必要な形状に加工するときなどに使用します。
例えば、主に革の裁断や漉き、中底加工などです。
アッパーやライニングに使用する革厚1mm前後の革を裁断したり、アウトソールやヒールに使用する革厚約3~6mmの革を裁断したりします。
また、アウトソールやヒール接着した後に大まかに形成する為に、余分な革をカットしたりもします。

革を裁断する様子

革の漉きは、ガラスの上に革の銀面層※2を下にして置き、肉面層の余分な部分を削ぎ落とすことを言います。
これは、アッパーで革の重なる部分の厚みを重なりのない部分とほぼ同じ厚みにすることで、靴となった時に変な段差が出ないようにしています。

革を漉く様子

中底加工は、革厚約5mmの革を木型の底面にクセづけした後に木型からはみ出した革をカットしたり、すくい縫いをするためのリブを作ることを言います。
リブとは、アッパーとウェルト、中底を繋ぐ土台のようなものです。

中底加工でできたリブ

実際には、革の種類やデザインなどにより道具を使い分けており、カッターや革包丁を使用して裁断することや革漉き機で革を漉くことがあります。


使用方法

パターン①(裁断):
ナイフの刃を下に向けた状態で、鉛筆を持つような感じで握ります。
カッティングマットの上に革を置き、裁断したいラインに沿って、一定の力でゆっくりとナイフを手前に滑らせることで、革をきれいに裁断することができます。

ナイフの刃を下に向けて握った状態

パターン②(裁断):
ナイフの刃を上に向けた状態で、親指を沿わせつつ他の指で握るような感じで握ります。
(主にアウトソールやヒールなどの厚い革を接着した後に、余分な部分をカットしたい時にこのような持ち方をします。)
革の余分な部分に対して刃を入れ、一定の力でゆっくりとナイフを手前に引きます。
カットした部分を持ち、切り口を広げることで刃が入りやすくなることがあります。

ナイフの刃を上に向けて握った状態

パターン③(漉き):
ナイフの刃を手前に向けた状態で、親指を沿わせつつ他の指で握るような感じで握ります。
ガラスの上に革を置き、肉面層(ケバケバ側)の余分な部分をナイフを手前に引くことで削ぎ落とします。

ナイフの刃を手前に向けて握った状態

定期的なメンテナンス:
ナイフの刃は定期的に研いで、常に鋭い状態を保つ必要があります。
砥石やツールシャープナーと呼ばれる棒を用いてメンテナンスします。

砥石でしのぎ面を研ぐ様子
砥石で刃裏を研ぐ様子
ツールシャープナーで研ぐ様子

適切な収納:
使用後は刃を保護するために専用のカバーやケースに収納します。

革のケースに収納した様子


note : 村上紀之


※1:TINAナイフのHPです。
https://www.tina-messerfabrik.de/index.html>

※2:革の銀面層と肉面層について
銀面層(きんめんそう):

  • 革の表面に位置し、動物の皮膚の外側の層です。

  • 非常に滑らかで、しばしば自然のしわや毛穴が見えます。

  • 耐久性があり、高品質の革製品に使用されることが多いです。

  • 仕上げ加工(染色、コーティング)によって光沢や質感が異なります。

銀面層

肉面層(にくめんそう):

  • 革の裏側に位置し、銀面層の下にある層です。

  • 銀面層よりも粗く、柔らかい質感です。

  • 通常、見えない部分や内部構造に使用されます。

  • 銀面層よりも強度は劣りますが、しなやかさがあります。

肉面層

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