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片足わずか1秒で脱ぎ履きできる革靴『エラスティックシューズ』〜③メリット・デメリット

エラスティックシューズについて、前回は「エラスティックシューズ」の起源と歴史をまとめました。

第3回目の今回は、「エラスティックシューズ」のメリット・デメリットについてです。(全4回に分けて投稿中です)
主にサイドエラスティックに注目し、まとめています。

メリット・デメリット

まずはメリットです。
前提として、サイズが合っていること(踵が抜けない、適切な捨て寸がある、甲や指先などの一部が点ではなく面で当たっており痛みがないなどなど)とします。
以前に「靴のサイズ換算表について」をまとめていますので、参考にしてみてください。

【メリット】

1. 履きやすく、脱ぎやすい

  • 手間いらずでサッと履ける
    靴紐やバックルがないため、靴べらを使用することですぐに足を入れて履くことができます。(靴べらを使用しなくても履ける場合がありますが、踵部分の部材が痛んでしまうためおすすめできません。)サイドのゴア部分が伸びるおかげで、靴を履くときに無理なく自然に足が靴の中に入ってくれます。

靴べらを使用する様子
  • 簡単に脱げる
    靴紐をほどいたり、バックルを外したりする必要がなく、靴のヒール付近を持ち足を引くだけでスムーズに脱げます。靴を履くのと同様に、ゴア部分が伸びるおかげで、簡単に靴から足を引き抜くことができます。

2. フィット感が良く、快適に歩ける

  • 足にぴったりフィットする
    サイドのゴア部分が足を比較的やさしくホールドしてくれるため、靴の中で足がずれにくく、安定感があります。靴が足にしっかりフィットしていると、歩いているときのストレスが減り、自然な歩行がしやすくなります

  • 伸縮性のあるゴアで適度なゆとり
    ゴア部分は柔らかいので、きつく締め付けすぎることがありません。足がむくみやすい方でも、ゴアの伸縮があることで比較的柔軟に対応してくれるため、足が楽に感じられます。

3. 見た目がすっきりしてかっこいい

  • ミニマルでシンプルなデザイン
    靴紐がないため、デザインがシンプルで洗練されています。特にスーツやカジュアルな服装にも合わせやすく、さまざまな場面で使いやすいと思います。

シンプルなデザイン
  • トレンドに左右されにくい
    サイドエラスティックは、クラシックで流行に左右されにくいデザインです。そのため、季節を問わず長く愛用できるのも大きなメリットです。

  • レースアップシューズ?と見間違えるデザイン             革の模造レースを付けることで、レースアップシューズと変わらないような見た目をしたデザインもあります。そのため、黒のキャップトウ+模造レースのスタイルであれば、冠婚葬祭に用いても何ら問題ない(周りに気付かれない)かと思います。

4. 靴紐やバックルの劣化がない

  • メンテナンスが楽
    靴紐やバックルがないため、摩耗や破損の心配が少なく、日常的に気を遣わずに履けます。基本的には、ゴア部分が長持ちするように設計している(ゴアの上にスリットパーツの革を縫い付けることで、ゴアが見えないようにしつつゴアの伸び過ぎ防止を果たしています。ため、履き心地を保ちながら快適に履き続けられます。


サイドエラスティックは、履き心地やデザイン、メンテナンスの手軽さで初心者にもおすすめしたい革靴の一つだと思います。
他にも多くのメリットがあるとは思いますが、次のデメリットへ移りたいと思います。


【デメリット】

1. サイズの微調整ができない

  • 自分の足に合ったサイズ選びが重要
    サイドエラスティックは靴紐やバックルがないため、足へのフィット感を自分で調整することができません。そのため、購入時にサイズが合っていることを確かめることがとても大切です。少しでもきついと履きづらく感じますし、逆に大きすぎると靴の中で足が動きがち・踵が抜けやすいなどの歩きにくさを感じることがあります。特にスリッポン同様のフィッティングチェック(踵が靴から抜けないこと)が必須です。しかし、踵の骨やアキレス腱などを痛めてしまう場合もあるため、無理な圧迫を感じる場合はサイズアップを検討すべきかと思います。

2. 長時間の使用で疲れることも

  • 適切なフィット感が持続しにくい場合がある
    ゴア部分が伸び縮みしてフィット感を感じることができますが、長時間歩くとゴアが足を少し圧迫する場合があります。足がむくみやすい人にとっては、特に午後や夕方にかけて少しきつく感じることがあるかもしれません。

[デメリット1、2について]
通常は、0.5mm毎のサイズ展開です。
しかし、人の足の状態は本当に様々(左右差はもちろん趾の長さ、甲の高さ、縦・横アーチの高い低いなどなど)です。
そのため、Corno bluでは0.25mm毎のサイズ展開を行なっているため、0.5mm毎のサイズ展開では対応できなかったようなフィッティングチェックをすることができます。
例えば、スリッポン同様のフィッティングチェック(踵が靴から抜けないこと)がより丁寧にチェックすることができます。
また、ベースの木型では対応できない方やより高いフィッティングを求める方などに向けて、お客様一人一人のための木型を足の採寸値をもとに製作し、樹脂製チェックシューズ、レザーのトライアルシューズ(仮靴)などでフィッティングチェック→微調整を行った後、靴の製作をする方法(BESPOKE ORDER)もあります。
ご希望の予算やデザイン、使用用途などを伺い、お客様にとって最も最適なご提案をしてます。

3. ゴア部分が劣化しやすい

  • ゴアの伸縮による劣化
    ゴア部分は、特に脱ぎ履きの際に最も伸縮するため、経年劣化しやすい部分です。長期間使っているとゴアが伸びきってしまうことがあり、足にフィットしにくくなります。また、ゴアが緩むと足が靴にしっかり固定されず、履き心地が悪くなる可能性があります。

[デメリット3について]
Corno bluでは、そのような問題は今のところ聞いたことがありません。
ゴア部分の材料自体が丈夫で長持ちするものを使用していますし、さらにゴア部分が長持ちするように設計しています。
ゴアの上に4つのスリットが入った革片をしっかりと縫い付けることで、ゴアが見えないようにしつつゴアの伸び過ぎ防止を果たしています)
また、ゴア部分の交換も可能なように縫製工程を工夫しているため、ゴア交換の修理も可能です。

ゴア部分(オレンジの丸枠)

4. フォーマルなシーンにはやや不向きなことも

  • ビジネスやフォーマルな場面ではカジュアルに見えることがある
    ゴア部分をあまり強調させないようにするためなのか、穴飾りが多く施されたデザインが多くみられます。デザインバランスなどを考えると完成度の高いものではあるものの、厳格なビジネスの場・フォーマルなイベントには、靴紐のある黒の革靴(基本は黒のストレートチップです)の方がより適している場合があります。

穴飾りが多く施されたデザイン

[デメリット4について]
Corno bluでは、細かなデザインの変更も可能です。
熟練の職人が型紙を一から引き、洗練されたパターンラインや縫製、穴飾りのほか大量生産の工場では難しいとされるノーシーム(踵部分の縫い目がないもの)などもオーダーもできます。
例えば、定番のストレートチップのデザインにゴアを取り付け、サイドエラスティックの要素も追加することも可能です。(次回の投稿でデザインサンプルをまとめる予定です。)


サイドエラスティックは、見た目が良く脱ぎ履きが大変便利ですが、サイズ選びやゴアの劣化に注意が必要です。
長時間歩く予定の日やフォーマルな場では、場合によって他の靴も検討するのが良いかもしれません。



note:村上 紀之

参考資料:紳士靴を嗜む はじめの一歩から極めるまで 著者:飯野高広


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