そのスマイルはアルカイック 【エッセィ】
そこにあるアルカイックスマイルは、ビンドゥンドゥンのものだった。
象徴のための笑顔、と同時に、笑顔のための象徴。
ビンドゥンドゥンを眺めながら、ぼくは、キャラクター化されたそれにしばしば貼り付けられる、笑顔、のことを、考えていました。
キャラクターが、何らかのマスコットとして生じた時、漫画的記号たる極端な笑いをそこに決して貼り付けたりはしない。マスコットは独り立ちをし、表情は一つに固定されるので、そこに「破顔」を据えるわけにはいかない。微笑以外を見ることはないと言っていいでしょう。あったとしてもほぼ例外として排除するに近い数ではあるまいか。日本には今や所狭しと「ゆるキャラ」達が舞を舞っているけれど(舞……まあそう言われても手を激しくふることしか出来ない丸っこいキャラクターばかりで、そういうのって、それだからこそ愛おしい、ぼくはずっと「舞って」いてほしいなと心底思う)、皆、ちょっとした、可愛らしいと評されることを期待するであろう笑顔をキャラクター化して物理的に貼り付け、笑顔の表出をもって内外の皆がにんまりとするものでありましょう。そう思う。
そういうキャラクター達のこと、マスコット達のこと、全般的にとても好きだな、と思っていることに気が付いた。思いを馳せるとぼくもにんまりとするわけだ。
ぼくは特にJリーグのマスコット達が好きです(ウィントス、手を振って!)。
セレッソ大阪を応援しに長居のスタジアムの方へ通い詰めていた頃、ロビー君の、地元市民の(キタよりは比較的)やんちゃぶりにはふさわしからぬ、わりと優雅な歩き方を見て、ぼくは、恥ずかしげもなく手を振りました。ぼくは三十過ぎの精悍な男性でしたけどね、もうすでに、成熟しちゃってて。でも、いいんです、べつに。ほっといて。
で、毎年、プロサッカーの選手名鑑を買うんですが、サッカー選手達の移籍状況を一通り見回してから、おもむろに開くページはマスコット・キャラクターの一覧なのです。そして毎年ほっこりとする。うーん、トッキーも洗練されてないところがかわいいなあ。相変わらずガンバボーイは、すごい顔だなあ。
あの子達の笑顔は健闘を讃えるのでしょう。その笑顔は人を笑わず、行動をくささず、冗談から引き起こされる笑いや自ずから湧き上がる個人的な笑いは決して表さないでしょう。あの子たちの笑顔は現代のアルカイックスマイル、そこには微笑みがあるだけで嘲笑はないのです。自他にぶつける攻撃的目的的様相はなく、その笑いに端的な鋭さを含ませないのです。意味が篭るのなら、存在の自信、といったところか。人の行動の健闘を祈る神仏の表情。ゆるくてもね、やっぱりそうだと思う。また、そうであってほしい、と願う。
それにしても、ゆるキャラ・アルカイック・スマイル・リーダーとして指名すべきは、この流れでいくと、遷都くんなんだろうな、やっぱり。遷都くん、ダメじゃないと思うな。