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マグロを食べて泣いた夜。「物語」が体験を共有し感情を揺さぶる理由
「んーーーーーー!!!うまい!!」
口に放り込んだマグロのうまさにおどろいて、呼吸を忘れそうになった。噛むたびに広がるうまみを楽しみながら、ゆっくり飲み込む。
ほぉっと息をつきながら、目をこする。
一切れのマグロを味わっていた私の視界は、いつのまにか涙でぼやけていた。
まさか、マグロを食べて泣く日がくるなんて。
ダイスケとマグロの物語
このマグロは友人のダイスケが青森の海で釣り上げたものだ。
2mオーバー、150キロ。ちょっと信じられないくらいの大きさだ。
ダイスケと出会ったのは、2019年。出会ったときはすでに、マグロ一筋の筋トレ男だった。4年間、「絶対に100キロを超えるマグロを釣る」と筋トレに打ち込む姿を見てきた。
聞けば、2012年ごろからマグロ釣りにハマったとのこと。最初は、筋力と経験値不足で引き寄せることさえできなかったらしい。マグロがかかりながらも長時間の引きこみに耐える体力がなく、涙ながらに船長に「代わってくれ」と言った、苦い経験もあるという。
彼と出会ってから何度もマグロに挑む姿を見守った。だが、なかなか釣れなかった。出港日が決まった矢先、漁獲量の制限がかかり挑戦することさえできない時もあった。あと1m……のところで逃したことあった。「悔しいなぁ」とつぶやきながら、「次こそは」とジムに向かう背中を見てきた。
私から見るダイスケは、マグロに真っ直ぐだった。心の底から「マグロを釣りたい」という気持ちが伝わってきた。いつしかダイスケの夢は、ダイスケの周りにいる人たちの夢にもなっていた。
目の前にあるのは、マグロか物語か
「青森に、行ってくる!」
10月も終わろうかという木曜の夜に、ダイスケからの知らせが届いた。タイに住んでいるダイスケが、土曜日に青森の漁港から出航するという。「大物が釣れている」という情報を受けて、急遽行くことを決めたのだ。
「ついにくるか……」と私もドキドキしながら続報を待っていた。
土曜日の早朝の「行ってくる!」いう連絡からしばらく、新しいメッセージが届いた。
「やったーーーーーー!!!」
夢を叶えた瞬間を知らせる言葉は、とてもシンプルだった。
少し時間をおいて、どでかいマグロを持って空を見上げるダイスケの写真とともに「マグロ、送るよ!」のひとこと。
でっかい「好きのおすそわけ」だ。
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数日後、ワクワクしながら待つ私のもとに、数キロのマグロのかたまりが届いた。一口食べて、うなった。うなるしかなかった。
きっと一本釣りのマグロは誰が釣っても美味しくて、どこかのお寿司屋さんで出されても感激するだろう。
でも、涙が出るくらいおいしくて、私の感情を揺さぶるマグロは、このマグロしかない。ダイスケの釣ったマグロには物語があった。だから私の心は強く揺さぶられたのだ。
物語が感情を揺さぶる理由
でもなぜ、ダイスケの物語はこんなにも感情を揺さぶるのだろうか。それは、私たちの脳の働きが関係している。
人間の脳には「ミラーニューロン」と呼ばれる神経細胞があって、他の人の動きを、まるで自分が実際にやっているかのように脳の中で体験し学んでいく。そのときに感じる感情もあわせて理解しようとする仕組みになっている。
例えば、スカイダイビングをする人の動画を観ると、まるで自分が飛び出すかのようにゾワゾワってなるように。タンスの角に小指をぶつけた人の話を聞いて、あぁと眉を寄せてしまうように。こうした他人への共感は、ミラーニューロンの働きによって起こっている。
ダイスケが釣ったマグロに感動したのも、数年間、日々の筋トレやマグロへの挑戦する姿を繰り返し観ていたから、今回の成功により深く共感したのだった。
私たちの脳というのは、物語を聞いたり語ったりするときに、感情をともなって学ぶように進化してきているのだ。そう考えると、ちょっとロマンティックじゃないですか。
「物語」を、企業のビジョンを現実にする支えに
物語が人に深い共感や感動をもたらすのはわかった。でも、それをどうやって企業が生かしていけばいいのか。企業における物語とは何なのか。
ひとつ明確にわかっているのは、物語は、情報の羅列ではないということ。
すこしマニアックな話になるが、私たちは「物語」を「ある視点で切り取った、感情に訴えかける要素や展開を含んだ創作物」と定義している。
“ある視点”とは、「企業がビジョンを実現していくためのパワーになる」という視点だ。企業がビジョンを実現していくために、どんな物語が必要なのかを考えて物語を編集していく。
経営者から聞いた話をただ並べるのではなく、よりわかりやすく、時には大盛りな演出も加えながら、読み手に驚きを与える工夫をしている。
なぜなら、YoutubeやNetflixにも、”見たいけどまだ見ていない面白いコンテンツ”が果てしなく溜まっているからだ。見たいものを見る時間さえ足りない中で、企業が発信する情報を見てもらえるなんて奇跡みたいなもの。だからこそ、できるかぎり精一杯の工夫をした方がいい。
それでもほとんど届かないけど「つい、うっかり」見てもらえるように、物語という人間の本能に根差した形式を使わない手はない。
「企業の物語」には、想像を超えた力が宿っている。
さあ、一緒に「企業の物語」をはじめましょう。
株式会社コルクラボギルド 代表
頼母木俊輔(たのもぎしゅんすけ)
今なら「企業の物語」作りが体験できる、初回コンサルティング60分が無料で受けられます。貴社のなにを言語化すべきなのかから、一緒に考えていきます。お気軽にご相談ください。
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