経営者の情報発信をサポートし続けたら「企業にはストーリーが必要」だと気づいた
振り返りたくないと思っていた過去
「こんな赤裸々な話、出せないよ…」
ライターから送られた原稿を読んだ、経営者のMは絶句した。
そこには、Mが振り返りたくない過去が赤裸々につづられていた。たしかにライターとの打ち合わせで、M自身が語った内容だ。
だが、こんなにも赤裸々に自分の過去を明かす必要があるのだろうか?
一読したばかりの原稿を閉じた。
その後、Mは原稿の掲載を見送ったのだろうか?
否、原稿はそのまま公開された。
誰にも話していなかった過去を、仕事の関係者や友人が読んだらどんなふうに思うだろうと不安を抱えながらも公にすることを選んだ。
しかし、公開後の周囲の反応は想像とは異なるものだった。共感や励まし、応援のメッセージがたくさん届いたことに驚いた。
それから1年間、Mは自分の経験を発信し続けた。その結果、消したいと思っていた過去も、それが今の自分を作っていると思えるようになった。
そして、だんだん会社や周囲にも変化が起き始めた。Mの発信に興味を持ち声をかけてくれる人が増え、少しずつ他のメディアにも出るようになった。
今もMは発信を継続しながら、次の目標に向かってチャレンジを続けている。
経営者の過去の体験とビジョンを結ぶ「ビジョンストーリー」
上記のエピソードは、株式会社ironowa 代表取締役CEO・武藤浩司さんの経験談です。
私たちコルクラボギルドは、経営者の発信サポートをしています。武藤さんのサポートを、約1年間担当させていただきました。
初めは発信をためらっていた武藤さんでしたが、徐々に「過去の経験」と「企業のビジョン」が、一つのストーリーで繋がっていると認識していったそうです。
「自分の過去は間違っていなかった。すべてがこれからやろうとしていることに繋がっている」。そう確信した武藤さんは積極的にメディア取材を受けるようになり、ビジョンの実現に向けた取り組みも加速していきました。
その変化を間近で感じながら「経営者の発信サポート」には大きな意味があると実感しました。
「経営者の発信サポート」を弊社のメイン事業として約4年。試行錯誤を重ねながら、経営者がどんな発信をするべきかが見えてきました。
経営者が発信するべきなのは
「経営者の過去の経験」と「現在」と「企業のビジョン」の3点を結ぶストーリーだと考えています。
これを私たちは「ビジョンストーリー」とよんでいます。
経営者は起業への思いやきっかけ、成功と失敗の体験、ビジョンなど、語るべきエピソードを数多く抱えています。経営者自身が語るこれらのエピソードには強力な魅力があり、聞き手に感動や共感を呼び起こします。
しかし、企業が成長しステークホルダー(企業の利害関係者)が30人、50人、100人と増えていくと経営者が直接伝えるのは難しくなります。こうした状況で登場するのが「ビジョンストーリー」です。
経営者のビジョンやエピソードを、誰でも理解できるような「ビジョンストーリー」として用意しておけば、経営者に代わって他のメンバーが伝えていってくれる。それによって、より多くの人に自社の魅力を広められます。
私たちの役割は、経営者のエピソードをわかりやすく魅力的なストーリーへとパワーアップさせることです。
まず、専任のライターと編集者が経営者から聞き取ったエピソードから教訓や魅力を抽出し、魅力的なストーリーへ仕上げます。経営者は第三者の視点から自身のエピソードを読み返し、改めて語り直すことでストーリーを完成させていきます。
読み手からは「経営者の表情が一変する瞬間」を描くようなストーリーが求められますが、経営者は「このエピソードよりも違うところを強調すべきだ」と違う面を打ち出したくなる。このように
経営者が伝えたいことと、読者が知りたいことには必ずズレが生じます。
そのため、私たちは第三者の視点を持ち、それぞれの期待を調和させながらストーリーを練り上げていく役割を担っています。こまかな調整を繰り返し、一緒に磨き上げていくのです。
「ビジョンストーリー」は経営者のエネルギーになる
経営者の役割の一つは企業のビジョンを伝え続けること。どんなに困難な状況でも、絶えずビジョンを伝えていくことで周囲からの賛同を得られる。
しかし、ビジョン自体は理想的な未来を描くものであり、不確定なものです。
この理想的な未来を現実にしていくには、とてつもないエネルギーが必要です。暗闇に立ち向かいながら進む勇気が必要です。そのエネルギーと勇気を与えるのがストーリーだと私たちは考えています。
企業のストーリーをつむぐことで「なぜこの道を進むのか」が明確になる。その物語は、苦しいときにきっとあなたを支えてくれます。
「ビジョンストーリー」には、想像を超えた力が宿っています。その力を私たちは信じています。
一緒に「ビジョンストーリー」をはじめましょう。
株式会社コルクラボギルド 代表
頼母木俊輔(たのもぎしゅんすけ)
◾️コルクラボギルド公式サイト