そらの一日#4日目 〇草源公園 愛を知って…

ジャンル/ヒューマンドラマ、日常系

あらすじ/ 天たちは深井さんに教えてもらった場所へと向かった。ようやくその場所にも着き、3人は階段を登り、公園へと着いた。そして、その光景をみた3人は驚くことになる。特に天と空木にはどこか見覚えのある場所でもあった。
3人の見た公園とは。

登場人物  南 天 (南天ポン菓子屋現七代目店主)

      

      小雀 空木 (天のおさ馴染み)


      紅葉 葵 (宝くじ売り場店主)

深井 敏 (深井狛犬神社経営者・坊主)

安食 源 (安食八百屋の店主)

計5名 女性3人 男性2人


第4日目 〇草源公園 愛を知って…

3人は深井狛犬神社の住職である深井さんに教えてもらった場所に向かっていた。

〈空木〉ねえ、さっき深井さんが言ってた天と私は行ったことあるみたいな口ぶりだったけど、覚えてる?

〈天〉ん〜 まったく記憶にないね、もしかしたら嘘かもよ? こんな場所知らないし

〈空木〉そうかな? 小さい時ならどう?

〈葵〉たしかに、小さい時に何かしらの理由で来たとか連れてこられたとかならありそうね、記憶にないのはまだ2人とも小さかったってことかもね

〈天〉ん、そうかも、でも思い出せんな

〈空木〉私も思い出せん

〈葵〉まあとりあえず行ってみたらなにかわかるかもね

〈天〉そだな

などと話していると、手前に小さな石作りの古そうな階段が見えた。

〈天〉おっ! 見えた! あそこだな

〈空木〉やっとだね!

3人はやっと場所を突き止めた。そして、今目の前に公園への1歩手前の階段の前にいる。

〈天〉空木、葵覚悟はいいか?

〈空木〉うん!

〈葵〉あんたより大丈夫よ

そらたちは意を決して、階段を登った。

階段を登るに連れて公園が姿を表してきた。近くに行くほど、なにやら白い光がそらたちを囲い向かい入れた。

そらたちは遂に、公園に着いた。

〈天〉ついた……

〈空木〉え、ここって……

〈天〉ああ思い出した、ここはサギソウ畑だ

3人の目の前のさく越しには数え切れないほど大量の真っ白なサギソウが1面に咲いていた。

そのサギソウを囲むように休憩所や遊具、トイレなどがある。

サギソウの周りに遊具などが設置されていた。

真っ白で白い黄金のようにサギソウは公園の中心を輝かせて照らしていた。凄く綺麗だった。どこか心が安らぐようだった。

〈葵〉サギソウ畑?

〈天〉そう、サギソウ畑って昔小さい時、それこそ小学校あがってすぐぐらいにおばあちゃんと空木と来たことがある

〈空木〉でも、あの時は柵はなかったけど、今は設置されて保護してるみたい

〈天〉いや、これはさすがに覚えてないわ

〈空木〉そうね、だって過去に1度しか行ったことないし、行こうとするとおばあちゃんや皆がなぜか止めてた、いや記憶から消されてた

〈天〉多分、公園の名前が原因じゃないかな血之中池公園って子供には物騒な名前だし

〈葵〉なるほどね

〈空木〉そら、葵こっちに公園の看板あるよ

〈天〉どれどれ

その大きな看板には、公園の名前や成り立ち、なぜこの名前なのか、その言い伝えなどが鮮明に書かれてあった。

この公園は血之中池公園、だが正式名称は『鷺草源公園』という。古来よりここには池があり、戦国時代、戦があった際この池で殺めた武士や農民などの血を拭っていた池、そしてその場で亡くなった武士、そして紅く染まった池、それを血之中池の呼ぶようになった。その後、源という名の大名により池を無くし、そこに鷺草を植えた。鷺草とは、『夢でもあなたを想う、芯の強さ』。その言葉に武士たちを讃え、霊を想い源は植えたとする。

〈天〉なるほどな、この場所は池があって昔戦争でその武士たちが血を洗ったり、その場で亡くなった場所でもあるってことか

〈葵〉なんか哀しい話ね

〈空木〉それでサギソウを植えたんだね

〈天〉そういえば、この公園の噂が聴かないのはその理由があるのかもね、サギソウを植えたことで、みんなは安らかに眠ることが出来てるんだね

〈深井〉そうだ、そのお陰でこの公園ではなにも起こることはない

〈天〉げっ! 深井のじいさん! いつのまに

〈空木〉なんで、ここに?

〈深井〉悪いな少し心配でな、でもそんな心配はなかったようだな

〈天〉当たり前だろ、もうそんなガキじゃなんだから

〈深井〉そうか……

深井さんは少し落ち着いた顔を見せていた。

〈深井〉ここに来たのはもう1つの理由がある、俺はたまにこのサギソウを見たくなるんだ

〈空木〉ほう

〈深井〉サギソウっていうのは他にも「無垢」や「神秘的な愛」という伝えもある、住職にもピッタリの花なんだ、それになんかここに来てサギソウをこうやって眺めていると落ち着くんだ

そう言うと、深井さんは手を合わせ黙祷を始める。それにつれてそらたちも黙祷を始めた。

黙祷を終えると、声が聴こえた。おーい! と男の呼ぶ声だ。

〈安食〉おーい! お前らも来てたのか!?

そらたちは振り向くと、そこには安食八百屋の安食さんが来ていた。

〈深井〉おお! げんちゃん!

〈空木〉あ! 安食八百屋のおじさんじゃん! 私にこの公園教えた本人

〈深井〉あ、なんだ言ったのはげんちゃんか

〈安食〉いや、すまねえうっかり口を滑らせてな、空木のやつ眼を輝かせるもんだから

〈深井〉なるほど、あの話もあらがち間違ってはないからね

〈空木〉え?

〈深井〉神社の書物にはそんな言い伝えの話が書かれたものが存在するんだよ

〈天〉なるほど

〈葵〉でも安食さんはどうしてここに

〈安食〉あ? それはここに来るとなんか落ち着くんだ、それとお前らが今日公園行くって聴いたからよ、心配で

〈天〉お前ら、私たちをなんだと思ってんだ?

〈葵〉安食さんもここに来ると落ち着くんだね、たしかに、落ち着く場所だね

〈深井〉げんちゃんだけじゃないさ、みんなここには何度か足を踏み入れるものなんだ、なにか考えこんでるとき、落ち込んでる時、パッとここに来ると、なぜか落ち着く、それここにを見守ってくれてる方たちとこのサギソウのおかげなのかもね

〈天〉そういうことか

〈深井〉さて、もう時間も時間だ帰ろうか

〈空木〉そうだね! 今日は色々わかったし! 楽しかったし

すると、そらたちはみんなで帰ることにした。

そらたちは家に戻った。そらは家のイスに座ったまま少し考えていた。あの時、帰る途中深井さんと話していた。その時の事だった。

なぜ、今になって話をしたのか。それはそらたちが大人になったから話したこと。たしかにサギソウという綺麗な花が咲いてる公園なんて滅多に見られる風景じゃない、けど、公園の言い伝えなどもあり、幼すぎるそらたちを親なしで行かせるわけにはいかない。ただ、サギソウは見てもらいたい、そう思ったのかそらのおばあちゃんは1度だけ天と空木と来たことがあるそうだ。

さらに、こうも言っていた「いつになってもお前らは俺たちの大事な娘のようなもんだ、もう家族なんだ、心配するに決まってるだろ」だそうだ。

今になって気づいた商店街や深井さんたちの天たちに対する想い。大人になってから気づくこと。その時の深井さんの顔は笑顔ですごく嬉しそうに、まるで自分の親かのように話していた。そんな顔だった。
まさか、こんなにも想ってくれてる人が居るなんて。
深井さんたちがそんなに優しく見守ってくれてたなんて。
そらはふと涙が出そうになった。いままでそんな感情はなかった。だが、そらは堪えていた。涙は出ないようにグッと堪えていた。ダメだって自分に言い聞かせていた。そのためかそらは少し眼が赤くなっていた。

その言葉とサギソウはそらたちから離れることはないだろう。ずっとその愛はみんなの気持ちはそらたちから忘れることはないだろう。

深井さんたちの今まで知らなかったそらたちへの気持ちを知った、そして改めて気づく周りの「愛」という言葉に気付かされたそら。

今後の行動はどのように変わるのか。

ー 4日目 〇草源公園 愛を知って… ー つづく

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