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あなたは私を蘇らせてくれた。上2

ある日の晩、スタンは「レジーズ」で本を読みながら食事とコーヒーを愉しむ。そこに1人の少女が泣きながらパンケーキを食べていた。気になったスタンは話しかけた。

スタン: 大丈夫か?

メイ: ええ。大丈夫よ、仕事でヘマしただけ。ねえ、一緒に食べていい?

スタン: わかった。

メイはパンケーキを持って、スタンと同じテーブルに座る。メイは本について、この前の件について話した。そして個人的なこと。

メイ: 人々は逃ることはできた?

スタン: いいやまだだ、いまその最中だ。

メイ: そう。ポール・ギャリコ好きなの?

スタン: ポール・ギャリコは心惹かれるものばかりだ。初めて読んだ小説だ。君は読むのか?

メイ: 私はほとんど読まない。でもそのポセイドン・アドベンチャーは有名よね。

スタン: そうだな。パンケーキか。

メイ: そう、実は昨日私の誕生日だったの。仕事で夜遅くなったから今日って言う訳。悲しくも誰もお祝いされる事はない。

スタン: それはお祝いだな。ここにはワインやシャンパンはない、また後日ポーチドエッグと一緒に祝ってあげるよ。

メイ: ありがとう。

少し沈黙が続く。その中、メイはタジタジになりつつも勢いをつけて話をする。

メイ: あのね! この前はありがとう。

スタン: この前?

メイ: 送ってくれたでしょ。お礼言えてなかったから。

スタン: それはいいんだ。それより仕事大丈夫か?

メイ: 大丈夫よ、もうそろそろいくわね。

そういうとメイはその場を離れた。なにやら
怪しい車に乗る。付き人のような人がいて、同じ車に乗る。運転はその付き人はするのだろう。なにか悲しい事があったのだろうか。しばらくして本を閉じて、レジーズを後にした。

その何日か過ぎた頃、スタンは仕事から帰り、アパートメントの自分の部屋に行こうとした。階段の近くにレンガの壁がある。そこに新しく壁画を作ろうとしている大家さんが居る。

リッキー: やあ、ガーネットさん。

スタン: リッキー、久しぶりだな。なにをしているんだ?

リッキー: この壁になにか絵を描こうかと思って。見栄えがいいだろ?

スタン: それは絵による。なにを描くつもりだ?

リッキー: そーだな、動物の絵がいい。例えばトラやライオンとか。

スタン: 肉食系ね、ウサギやリスのほうが可愛くなる。トラ、ライオンは怖いイメージだから。でも可愛く描ければ大丈夫。

リッキー: なるほどね! それじゃあ動物園みたいにしようかな? 誰か手伝ってくれる人居ないかな?

スタン: いい人がいる。いつ帰ってくるか分からないけど、会ったら聞いてみるよ。

リッキー: ありがとう! ガーネットさん。

リッキーとスタンは軽くハグをしてから、スタンは家に階段を登った。
スタンは普段、小さな歴史博物館で仕事している。

家に入ると、ノックを何回かされた。スタンは扉を開けるとメイが居る。

スタン: また君か。今度はなんだ?

メイ: 家のシャワーヘッド壊れちゃって、シャワー出来ないから貸してほしい。

スタン: なんだと? 車の次はシャワーか。なぜいつも壊す? なぜ私なんだ?

メイ: そんな事言わないでよ、昔から機械は苦手なのよ。お願い!! 夜仕事だからシャワー浴びたいの!

スタン: いいだろう。丁度良かった。条件がある、中に入れ。

スタンはメイを招き入れた。そこで2つ条件をメイに渡した。

スタン: まず、大家さんと壁に動物の絵を描け、空いてる時間でいい。

メイ: え、絵を? 壁画ってこと? それともグラフィックアート?

スタン: それはお前が決めろ。ただ、可愛く描け。もう1つはこの本を渡す。読んで、感想を教えてくれ。

メイ: O・ヘンリーの賢者の贈り物? なにこれ? 聞いたことない。

スタン: O・ヘンリーはペンネームだ。本名はウィリアム・シドニー・ポーター、アメリカのノースカロライナ生まれだ。

メイ: へ〜! こんな作家が居るんだ! まあそもそも本で持ってる人って珍しいね。普通は電子書籍じゃない?

スタン: 電子書籍は嫌いだ。あれは本ではない。それは独特なユーモア小説だが、君の助けになるだろう。

メイ: 助け?

スタン: まあいい、この条件ならシャワーを貸してやろう。どうする?

メイ: 乗った! 先払い?

スタン: 後払いでいい、とりあえず早く入ってこい。

メイは会話を終えると、スタンのシャワーを借りた。スタンはなぜかこの少女には優しくなってしまう。ただ、それはスタン自信も気づいてはいなかった。メイは少し怖さはあるが、親切な人というイメージを持たれている。なにかあると、メイはスタンのところへ行く。
スタンは暖かいお茶を入れて、おもてなしをするつもりでいる。

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