新規事業が失敗する組織のアンチパターン3選
『イノベーションのジレンマ』という名著をご存知でしょうか?
クレイトン・クリステンセンが20年前に書いた大企業ではイノベーションが生まれなくなっている理由を書いた本で、スタートアップに比べて、資金や人材、技術が揃っているのに何故そうなるのか?と興味を持って読ませてもらった覚えがあります。
ざっくりと説明すると、既に売上が上がっている事業が大きすぎてそこに資金や人材、技術を顧客が望んでいる以上に投資してしまう傾向が企業にはあるというお話です。変化の早い時代にはそれでは対応できないですよと。
さて、その例はネットで検索すれば出てくるので置いといて、ココでは私が経験した新規事業をやる上での組織的なアンチパターンというものを3つほどお伝えできればと思います。特にスタートアップにジョインすることを考えている人やこれから新規事業を会社内で立ち上げる人に有益な情報になればと思います。前提として複数事業を持っている会社の話として聞いて下さい。(既にお金を生み出している事業と、これから新しく始める新規事業の2つ以上の事業を持つ会社を想像してください)
アンチパターンその1
人的リソースが共有化されている組織体制
ジョインしてくれた新規事業担当メンバーが他のプロジェクトと掛け持ちになっているケースです。もちろん、チーム全員がそういう状況になることはないですが、ジョインしてくれるメンバーを社内からかき集めた結果、何人かのメンバーが1つ前のチームのタスクをこなしてから遅れてジョインする場合や、なんならジョインした後も引き続き別のプロジェクトのタスクもしなければならないという状況でチームメンバーとして選出されることがあります。というかありました。その結果なんですが、遅れてジョインするはずだったメンバーのジョインは別プロジェクトに引っ張られ数ヶ月単位で遅れに遅れ、ジョインしてくれた後も何かと別プロジェクトに呼び出され、結局そこがボトルネックになり、当初考えていたスケジュールの半分のスピードも出ないという結果になりました。新規事業においてスピードが遅いのは死活問題です。既存事業の保守のスピード感で仕事をする人間はチームに不要という結論になりました。また、別プロジェクトの優先順位が急遽上がったからといって、最終的にはその人員は他のプロジェクトに奪われることになりました。残ったのは誰にも引き継がれていない途中まで作り上げたプロジェクトの残骸でした。
アンチパターンその2
責任者がいない(いるように見えて実質いない)
責任者がいないってそんなの上手くいくわけない!そう思いますよね?それを放っておく会社が悪いと。私もそう思います。ただコレは意外と盲点なのかもしれませんが、責任を取るべきはずの人間が責任を取らないケースが多々あります。組織上、責任者はおいているがその人のモチベーションが著しく低く、実は何ヶ月も何もしていなかった...という恐ろしいことが発覚することも。たいてい、発覚したときには既に遅し、その人はもう辞めてしまうという大事件が多々起きています、現実に!特に多かったのが事業買収されてそのまま買収された側の代表が事業責任者に置かれるケース。この場合、買収した領域に関して一番くわしいのはその元代表の方だから、大体のケースで大事な意思決定を任されてジョインされることが多いと思いますが、買収されたことでモチベーションがなくなり、ロックアップ期間(ジョイン後1年は辞めないでね期間 etc)、適当に業務をやり続けてしまう人を何人も見てきました。一番衝撃的だったのは、ジョインした瞬間、「私はロックアップ後すぐ辞めるつもり。もう自分のものでなくなった事業に興味がない。君はどうするの、続ける?」と聞かれたことがあったことです。本当に無責任だと思いました。これから改めてキックアップしてチームを拡大していくという時期に。責任を持って事業を進めるリーダーがこんな状態だったらこの後、どうなるかわかりますよね?
新規事業とは基本上手くいかず、問題だらけなので、リーダーの責任感とやりきる力が非常に大事です。事業責任者を必ず見極めて下さい。
アンチパターンその3
人が予定通り増えない組織
アンチパターンの1,2にも関わりますが、人が予定通りに増えていかない(現状維持か減る)組織です。その原因は、責任者不在であったり、人材獲得の戦略が組まれていなかったりと多々あると思いますが、特に事業を加速させる優秀な人材をリクルーティングすることは新規事業においては至上命題です。そこに力を入れていない組織は新規事業に向いていない赤信号の組織です。
お金がなくて人が入れられない場合は資金繰りさえすればいいわけですからまだ希望がありますが、お金があるのに人が入らない組織はかなりまずいです。私の経験談では、会社で見た時に人はどんどん増えていったのですが、新規事業のメンバーは1人も増えませんでした、1年間以上。
人が増えているかどうかは新規事業をやる上で上手くいっている組織かどうかを測る指標になりえるとおもいます。
結局どうするべき?
子会社化したり、チームを組織の中で完全に独立させるべきなんでしょうね。サイバーエージェントは子会社化をよくやられていますし、メルカリの新規事業は社内でメリカリ事業と完全に独立してやって結局、いま子会社化しています。イノベーションのジレンマの本に書かれている通り、売上が上がっている調子のいい事業に隠れてしまわないように、常に、新規事業を行う組織だけで、人と事業とか評価され続ける形にしないといけないのです。新規事業はよく人を見ろ!といいますが、組織もしっかりと見るべきです。そうしないとダンボールの隅でひっそり腐ったみかんになりかねないのです。