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事業所を作った経緯(その2)

事業所を作った経緯として「二次障害を防ぎたい」
と思った3つのエピソードを書いています。

今回は2つ目の就労支援員時代のエピソードを書きたいと思います。

まず、「就労支援員」とは、というところから書きたいと思います。

就労移行支援とは、障害のある方が働くために必要な
スキルを身につけるトレーニングや、就職活動のサポートを受けられる
「通所型」の障害福祉サービスです。

私の場合、所属していた事業所が移行支援以外に「就労定着支援」という
サービスも行っていたため、定着支援のサービスも行っていました。

就労定着支援とは、障害のある方が就労先の労働環境や業務内容に順応し、
長く働き続けられるように支援することが目的となります。

障害福祉サービスですので、児童発達支援や放課後等デイサービス同様
市からの許可(受給者証)が必要となるサービスです。

以上、移行支援と定着支援をした時のエピソード書きたいと思います。

②特性(症状)にマッチしないと仕事は継続できないことを実感した話


双極性障害(Ⅱ型)、ASD、ADHDの3つの診断を受けていたAさん
当初の本人は、鬱と躁の繰り返しや天候(気圧)の変化を受けやすく、
起床時から希死念慮があり、朝10時の朝礼に間に合わず遅刻の常習犯でした。
最初の印象としては、発達障害による二次障害で困難さを感じている方に見受けられました。
事業所での訓練や定期面談を通して見ていると、他者とコミュニケーションが嚙み合わない様子が見受けられました。面談では、時折Q&Aが成立していないことがありました。
就活の軸としては、専門学校でPCを学んでいたことと、出勤型の事務職を希望されており2週間の企業実習でもそこそこの高評価を得られるスキルも持ち合わせていました。
コミュニケーション面では課題(指摘)がありながらも、ご本人の希望とスキルから事務職を中心に就職活動を進めていきました。

複数社の選考は受けましたが、事務職での就職活動の結果、内定は獲得できませんでした。
採用見送りの理由の中で、指示した内容通りの作業ができていないことが何回かあり、自分から確認することができていなかったことが、指摘事項としてありました。
作業内容としてはofficeソフトを活用したデータの作成や紙データのデジタル化です。
スキルとしては、内定を獲得できてもおかしくはないレベルではありましたが作業スキル面以外での課題が懸念事項となり採用に至りませんでした。

実習のフィードバックについて、全ての会社(人事)が採用見送りの理由を教えてくれるわけではありませんが「指示内容通りの作業ができていない」「確認ができない」というご指摘は、ご本人の就活軸に大きな影響を与えます。
それまで私の目線から以下が気になる点で挙がっていました
・履歴書等の文章作成が1人でできない
・口頭指示(一斉指示)で聞き漏れがある
・誤った漢字の理解がある(小学生レベルの漢字)
・自分の言いたいことが正確に伝えられない(面接や通院時)

上記内容にあわせて、企業からの指摘事項を聞いた際に担当の私としては「もしかしたら事務職自体、ハードルが高いのかもしれない」と思いました。ただ、「かもしれない」という感覚的な話であったため、通院同行の際に主治医の意見伺うことにしました。

主治医から言われたこと


「彼は子どもの頃に検査を受けていたようで、当時のIQは「72」。事務職とかの複雑な業務はあまり向かないかもね」
いわゆる境界知能といわれる知能水準であったことを聞きました。
その時にご本人に対する気になっていた点がすべて線で繋がり、納得感を感じたことを覚えています。
同時に、知能レベルとして「境界知能」の人は世間から気づかれにくく、二次障害の発症率が高いといわれているためこれまで沢山傷ついてきたということは容易に想像ができました。
私自身の主観ではありますが、「境界知能」としっていれば事務職はすすめません。すすめたとしても、処理能力や他者とのコミュニケーションスキルの必要とすることから長期的な就労は難しいと思われます。担当としては、もっとはやくに主治医からご本人の詳細を聞いておけばよかったと反省したこともありますが、ご本人からも聞き取れた内容であったので、支援における実力不足を感じました。

Aさんにとって、他のASDやADHDの特性より、ベースとして境界知能のレベルの上に特性が加わり生きずらさに繋がっていることがわかりました。
上記境界知能を含めた就活の軸や企業選びの場合は
事務職ではなく、他者とのコミュニケーションはほぼ発生しない単純作業があっていると思いライン作業はない工場での単純作業の業務に切り替えました。
幸いにも丁度マッチしそうな業種の人事の方からご連絡をいただき企業実習の機会をいただき、内定を獲得することができました。
ご本人としても、事務職より立ち作業の単純作業の方が集中して継続ができる、という反応もありご本人の状態にあった職に就けることができたんだなと思いました。
Aさんから後々聞いた話ですが、放デイは使っていたようですが主に集団での課外活動が多かったようで、楽しかった思い出はあるとのことでした。個人的に、「楽しさ」は公園で遊べば楽しさを感じられると思ってますので、Aさんにあわせた支援は受けてこなかったという解釈です。

思ったこと


Aさんは本来、未就学児から福祉サービスに繋がる必要があった方(就学期は支援級等)で、未就学期の時から理解を得て支援を受けることでいじめや双極性の発症も防げたのではないかと思っています。
また、親御さんとの関係性も良好ではなかった(理解がなかったようです)ことから、親御さんへの支援(理解促進)も絶対的に必要であると感じました。
特に境界知能と呼ばれる知能の方は、世間に埋もれやすく気づかれにくいです。Aさんは氷山の一角ということが正しいでしょうか。他にも気づかれていない方がかなり多くいるのではないかと思います。かつ、未就学の時期に直感でもなんでもいいので親御さんが気づいて福祉に繋げることは子ども未来を大きく変えるきっかけになります。

次は実際に当事者のご家族の方から伺った5080問題について書きたいと思います!

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