お金は入金されるまでは気を抜かないのが会社経営の基本
「5日に入る予定のお金がまだ入金されないのですが、どう思われますか?」
先日、ある経営者の方からメールで質問がありました。
メールを読んでから、もう少し詳細を確かめるべく、その経営者の方に直接電話すると、分ったのは以下の通りでした。
・既に契約書は締結済みで予定では5日に先方がお金を振込む旨規定されている
・契約相手先の代表者のご家族が亡くなられた模様
・6日以降先方とはコンタクトが取れていない状況が続いている
まだ全体の状況がはっきりしないため、今後どういう展開になるかは分りません。
そこで、私が相談されてきた経営者の方にアドバイスしたのは「先方からの入金はないという前提で動きましょう」ということでした。
この経営者にとっては、お金が入って来ないということ(このこと自体は大きな痛手ではありますが)以外には実質的な被害はないため、「原因究明に時間を割くよりも、まず次の資金手当てに全力を尽くした方が良いのでは」と申し上げました。
19年ほど前、私が2社目で資金調達をしていた際、ある海外の投資家から約10億円の出資を受けるという話がありました。
国内での先方の調査が終わり、会社としても取締役会で増資を決議。その後、副社長と担当部長がシンガポールへ出張して詳細を詰め、最終的に払込期日も決まりました。
そして、振込期日の前日、先方の担当者から海外送金依頼書がFAXで送られてきました。実はこの案件、1度先方の事情により仕切り直しした経緯がありました。そのため、今回は念には念をということで送金依頼書を取り寄せたのです。
事前に担当者からも「今度は大丈夫です。」という電話をもらっていたこともあり、私もやや安心していました。
そして、振込期日当日、午前中から銀行に何回か電話で確認しましたが、入金を確認できません。
午後も30分おきに確認しましたが、まだです。
そして、3時になってもやはり入金はありません。
海外送金の場合、3時過ぎになってお金が入ってくることもあるため、4時まで待ちましたが、結局約束されていた10億円のお金は入ってきませんでした。
貸付金の実行、売掛金の回収など、契約書や取り決めがあってもその約束事通り、お金が入金されるとは限りません。
営業担当者であれば、売上の受注が取れた時点でほっとひと息、という場面も多いのではないでしょうか。
前述した私のケースでも先方のサイン入りの海外送金依頼書を受領した時に、会社内にはちょっと安堵の雰囲気がありました。
けれども、残念ながら世の中には約束を平気で反故にする人たちがいます。そして、中には意図的に騙そうという人も・・・。
もちろん、やむを得ない事情が急に発生したというケースもありますが、ビジネスの基本中の基本であるお金の決済についての認識は会社によって、また、人によって様々です。そして、この現実を忘れると痛い目に会います。
お金は実際に受取るまでが勝負。それまでは、けっして気を抜かないで、取り組みましょう。