バター擬態型チーズ
先日、剥き身の冷凍アサリを買ってきて酒蒸しでも作ろうかと考えていた。ルンルンで買い物かごに調味料を放り込んでいく。
冷蔵庫には何があっただろうか?
醤油、ある。酒、ある。塩、ある。バター、ある。
一人暮らし男子大学生の冷蔵庫にないものランキングがあったら確実に上位に来るであろうバター。
ちょっと前にシチューを作ったときに小麦粉と一緒に買ったはずだ。
具材をどう調理してやろうかと考えながら、原付を走らせる。
ガチャッとドアを開け、買ったものを冷蔵庫に詰めていく。
調理に使うものをキッチン横の洗濯機の上に載せる。
アサリ、醤油、酒、塩、バター…………バター?
それらを鍋に入れて水気とアルコールを飛ばしていくが、バターがどうも溶けない。ずっと固形のままだ。
水分が蒸発しきっても、それは形を保っていた。
おかしい。
バターの外装を見る。
黄色いパッケージ、中心には写実的な牛がこちらを見ている。成分表示にはナチュラルチーズの文字。
やられた。
鍋から香ばしい匂いが漂ってくる。間違いないチーズだこれ。
となると、先日作ったあのシチュー。もどきだったのか。
あまりの衝撃に気分が下がる。
アサリの酒蒸しは牛乳、ケチャップ、スパゲッティと煮込んでトマトクリームパスタにして食べた。普通に美味かった。