一級建築士の街歩き09 表参道・原宿 “素材達”シリーズ ...変幻自在の“ガラス”達【後編】
今回は “素材達”シリーズ ...変幻自在の“ガラス”達【後編】です。
目次
4 “ガラス”はそよぐ
5 “ガラス”は支える
6 “ガラス”は潤す
7 “ガラス”は魅せる
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4 “ガラス”はそよぐ
SANAA設計のDiorビル。
単純な四角い箱の8階建の建物に見えますがさにあらず4階建て。
一層毎に設備階が有り4階建てで各階の高さがイレギュラー。
ガラスの内側にアクリルのスクリーンがもう1枚。
これが風にそよぐ様で実に優しい雰囲気。
気持ちの良い風が周辺に吹いています。
このビル夜になるとライトアップされまた違った姿を見せてくれます。
そして夜空を見上げるとそこにはDiorの星が建物の上に輝いていると言うはまり過ぎた演出。
Diorに隣接するのはMVRDV+竹中工務店 設計のGyre。
何から何までDiorと対照的。
色も素材も形態も。
この建物は四角の箱を各階ずらしてコーナーをカットさせて成立しています。
箱の積重ね方一つ取っても先程のBlock Houseとは又違った直方体の形態操です。
Gyre上階に田根剛設計のレストランが出来ました。
ちょうど良いのでここでちょっと一息 珈琲ブレイク。
~そう言えば表参道には以前ハナエ・モリビルが有りました。
丹下健三設計のガラスカーテンウォールのビルでした。
今は建て替えられ一部に石と金属のモニュメントによるコンセプチュアルな空間。
ここは辺りの喧噪から離れた別世界で私の好きなスポットの一つです。
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それではまたそぞろ歩きを再開しましょう。
5 “ガラス”は支える
光井純設計のアップルストア表参道
ファサードのガラスが枠無しで納まっています。
方立(ほうだて)と言うガラス窓を支える縦部材もガラスで出来ていて
ガラスがガラスを支えています。
この工法はスタビライザー工法と呼ばれ広く採用されている力持ちのガラスです。
アップルストアの内部の螺旋階段も支柱がなくすっきりしたデザインです。
ノーマン・フォスター設計のアップル本社内のスティーブ・ジョブズ・シアター
また、東京でも構造体全てをガラスで徹底して構成した例が
有楽町の東京フォーラム地下鉄入口です。
今度近くにおいでの際には一目見て下さい。
また東京フォーラムの中庭に入るところの舗装面は
ガラスになっていて夜間ライトもつきます。
6 “ガラス”は潤す
表参道で珍しく水に接することの出来る場
安藤忠雄設計の表参道ヒルズの噴水です。
せせらぎの音が表参道を歩く時に潤いを与えてくれます。
そしてせせらぎの流れが表参道が坂道であることに気づかせてくれています。
浮世絵にも描かれた今となっては暗渠となった隠田川への郷愁を感じます。
安藤氏のプレゼントに感謝。
特に都会にある水場は本当に潤いをもたらしてくれます。
一級建築士の街歩き01 で紹介のニューヨークのペイリーパークの小さい滝も印象的です。
面白い使い方として
ニューオーリンズにあるチャールズ・ムーア設計のイタリア広場が有ります。
イタリアを形どった噴水があるほか、なんと古典建築モチーフの柱が細く吹き出る水で表現されています。
7 “ガラス”は魅せる
渋谷スクランブルスクエアの屋上展望台からも見ることが出来る
この青く輝くオブジェの様な建物はヘルツォーク&ド・ムーロン+竹中工務店設計のプラダ青山店です。
この建物が出来てからみゆき通りがすっかり建築のメッカになりました。
ガラスは結晶化していると思ったら通常は結晶化しておらず粒子は規則的には並んでないそうです。
(だから急熱急冷で割れる)
もしガラス粒子を綺麗に並べた結晶を大きくしたらこんな形になるのではと魅せられてしまいます。
外観を形作る斜めのラチス材構成で規則性が有りつつも
外壁を包むガラスは平面だけでなく、凸面、凹面のものが組み合わされていて、
冷たい感じのしない有機的な感じを受けます。
通常斜め材だけの構造では縦方向の力に不利です。
電車のパンタグラフを思い浮かべてみると分かります。
ましてその鉄骨は150mmx250mmの細さ。
それを達成するためにここでも免震装置がそのデザインを可能にしています。
この建物の設計はヘルツォーク&ド・ムーロンに加えて竹中工務店もクレジットされています。
日本の建築法規対応、工法提案等技術力を活かしたノウハウをフィートバックしている筈です。
外国建築家+日本の設計事務所又はゼネコンの組合せはよく見られます。
先程のMVRDVのGyreにおいても竹中が設計に参加しています。
日本の組織設計事務所、ゼネコンは本当に優秀と思います。
プラダの立地するこの交差点は道をはさんで反対側には
ガラスと石のThe Jewels of Aoyama:光井純設計、
はす向いにはコンクリート本実型枠仕上げの銕仙会(てっせんかい)能楽研修所、
向いには同じくヘルツォーク&ド・ムーロン設計のメタルパネルのミュウミュウ青山店
とまさしく建築素材のオンパレードです。
光の具合でそれぞれの建築が刻一刻と姿を変えるので
一日中いても見飽きない“日暮しの交差点”です。
さて今回もそぞろ歩きにお付合い頂き有難うございました。
設計者のこうしたいと言う思いとそれを実現するガラス技術のキャッチボールで、ガラスの可能性はこれからも無限に広がって行きそうで楽しみがつきません。
表参道以外のエリアでもそうした点に目を懲らすとまた面白い発見があると思います。
それではここらで珈琲をガラスのサイフォンで煎れてくれる店でも探して一息つく事とします。
最後までお読み頂きありがとうございます。
まだまだ面白い“こだわり建築”を見ていきたいと思います。
つづく