美意識のある経営を。
「美意識のある経営」というのを、生涯のテーマに掲げていきたいと思っています(大げさですが)。それはもちろん「自社」もそうだし、「他社」に対しても普及していきたいテーマです。
「美意識のない企業」の仕事はしないし、「美意識のない提案」はしないようにしていきたい。そして「美意識のない企業」は淘汰されていくような社会になればいいなと思っています。
ここでいう「美意識」とは、「物理的な審美眼」だけではなく、「精神的・文化的な審美眼」をさしています。言ってしまえば、Googleが "Don't Be Evil." と書いていたものです。つまり、「儲かればいい」という概念だけでなく、その事業が「社会をよりよい方向に進めるか」ということを追求する経営者の意識です。
分かりづらいので「美意識のない経営」について話します。
「美意識のない経営」とは、社員を不当に残業させたりする経営です。その場限りの売上のために誰かに嘘をつくような経営です。食品偽装もそうだし、株式操作もそうだし、情報隠蔽もそうです。
そんなことしないよ、と多くの人が言いうと思います。しかしより細部を見ていくと「美意識のない経営」はたくさんのところで行われているように思います。
例えば「退会フォーム」をわかりづらくする、というような経営です。退会しずらければ、事業は儲かります。ケータイの契約などの不要なサービスに加入させて「3ヶ月後に退会してください」というのもそうです。「ポイント制度」にして金額感を曖昧にするような行為もそうです。1000円を支払って、150ポイントを購入する、というようなUXです。これは金額感を曖昧にすることで、お金の支払い感覚を曖昧にします。どれもとても悪意のあるモデルです。
上記のような小細工は、売上や利益の追求という意味においては、別に間違った戦略ではありません。企業というのは利益を出さなければ存続できません。利益は大事です。加えて、法律に違反しているわけでもない。だから、「何がいけないんですか?僕たちはルール違反はしていませんよ」と言われても、僕には大した反論ができない。
だからあえて「美意識」と呼びたいと思います。社会をよりよくしたいという意識。ユーザーに楽しんでもらいたいと思う意識。儲かればいい、という次元ではないところで戦う高貴な意識。そういった意識を持つ経営者をサポートしたいし、そういった意識で経営をしていきたいと切に思う。それがない人にはいくら儲かっていようが「ダサいですね」と突きつけていきたい。
だから「美意識のない経営」は全力で糾弾していきます。それにより、ユーザーが離れ、サービスがうまくいかなくなれば、よりよい社会に繋がるからです。SNSがある今の時代では、声をあげることができます。
上記のような「美意識のない経営」は論外ですが、もっと高い次元で言えば、全ての経営者に「その事業が生まれたことで社会がよくなったかどうか?」をもっと深く考えてほしいと思っています。いまの社会は「儲かるから」「トレンドだから」という理由で経営している人が多すぎるように思います。
儲かる=需要がある=正義だと考えている経営者がいますが、それは美意識の欠けた経営です。二番煎じの課金ゲームや出会い系アプリをつくって本当に意味があるだろうか。この事業が存在したことで、社会がより豊かになっただろうか。一歩前に進んだだろうか。経営者はそれを自問しつづけなければいけない。
いつの時代でも社会を豊かにするのは「事業」であり、ひいては経営と呼ばれるものです。アイデアをうみ、事業へと昇華し、雇用し、利益をうみだす。それは社会を豊かにする行為です。
何度も書いている気がしますが、原研哉さんの素敵な言葉を引用します。
世界は美意識で競い合ってこそ豊かになる。
本当にそう思います。だからこそ、高い志を、強い意思を、深い思考を、広い視野を持った経営者がこの国にはもっとたくさん必要です。それが文化的な成長への近道だと思います。
まだまだ足りていませんが、僕らの会社もそうであろうと全力で努力をするし、そういった経営者を応援していきたいと、切実に思います。