★条文解説【第22条の2(上映権)/第2条(定義)第1項第17号】
著作権法第22条の2(上映権):
「著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。」
著作権法第2条(定義)第1項第17号:
「1 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(ⅹⅶ) 上映 著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする。」
上映権とは
著作権法第22条の2は、著作者が上映権を専有する旨を規定したものです。つまり、著作者は、公に著作物を上映する排他独占的な権利を享有します。
ここで「上映」とは、「著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写すること」をいいます(2条1項17号前段)。「上映」という響き(語感)から、上映権は映画のみに係わる権利だと思われがちですが、そうではありません。著作権法上「上映」とは、上述のように、著作物を映写幕その他の物に映写することを意味しており、そこでは、対象のとなる著作物を映画の著作物に限定しているわけではなく(もっとも、公衆送信される著作物は除かれます**)、また、映写する場所を映画館のスクリーンに限定しているわけでもありません。したがって、「上映権」は、美術の著作物や写真の著作物等のいわゆる「静止画系」の著作物など、すべての著作物に認められる権利ですので、この点に注意してください。フィルムに固定された映画をスクリーンに公に映し出す行為はもちろん、CD-ROMに収録されている美術作品や写真などをパソコンのディスプレイ画面上に公に映し出す行為にも上映権が働きます。
**著作物を物に映写する行為であっても、「公衆送信される著作物」を物に映写する行為については上映権の射程範囲から除外されています。例えば、放送(公衆送信)されるテレビドラマを受信装置(テレビ受像機などの「物」)を用いて公衆に映し出す行為に対しては、上映権は働きません(当該行為に対しては、「公の伝達権」(23条2項)が働くことになります)。
上映権は、著作物を「公に」上映する場合に著作者に認められる権利です。「公に」というのは、著作権法では、「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として」という意味で統一して使われています(22条かっこ書参照)。さらに、「公衆」とは、不特定の者又は特定多数の者をいいます(2条5項参照)。この定義から、著作権法上、「特定少数」は「公衆」に該当しないため、家庭内やそれに準ずるごく限られた友人間におけるような「特定少数」に対する上映には、そもそも上映権は及ばないことになります。