モンタージユ写真(パロディ)は同一性保持権を侵害するか/★判例セレクション~著作者人格権~
モンタージユ写真(パロディ)は同一性保持権を侵害するか
▶昭和61年5月30日最高裁判所第二小法廷[昭和58(オ)516]
本件モンタージユ写真からは、本件写真の本質的な特徴部分、すなわち、雪の斜面をシユプールを描いて滑降してきた6名のスキーヤーの部分及び山岳風景の特徴部分を感得することができるものである。
右事実関係のもとにおいて、上告人が、被上告人の同意を得ないでした本件モンタージユ写真の作成、発表は、たとえ、本件モンタージユ写真がパロデイと評価されうるとしても、被上告人が著作者として有する本件写真の同一性保持権を侵害する改変であり、かつ、その著作者としての被上告人の氏名を表示しなかつた点において氏名表示権を侵害したものであつて、違法なものである、とした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。
[参照:原審]
▶昭和58年02月23日東京高等裁判所[昭和55(ネ)911]
前記の事実を総合し、本件写真及び本件モンタージユ写真を対照して検討すると、本件モンタージユ写真は、カラーの本件写真の一部を切除し、これに本件写真にないスノータイヤの写真を合成し、これを白黒の写真とした点において、本件写真に改変を加えて利用作成したものということができる。
そして、利用された本件写真部分は、外見的には本件写真そのものと同一ではなくなつたが、本件写真の本質的特徴をなすとみるべき、雪の斜面をシユプールを描いて滑降して来た六名のスキーヤーの部分及び山岳風景の部分中、前者はその全部、後者はなおその特徴をとどめるに足る部分からなるものであるから、本件写真における表現形式上の本質的な特徴は、利用された本件写真部分自体において感得することができるものである。また、本件モンタージユ写真は、これを一見しただけで、右の本件写真部分にスノータイヤの写真を付加することによつて作成されたものであることを看取しうるものであるから、それが前認定のような非現実的な世界を表現し、本件写真とは別個の思想感情を表現するものと見ることができるとしても、なお本件モンタージユ写真から本件写真の本質的特徴を直接感得しうるというに妨げない
ものである。
してみると、控訴人のした本件写真部分の複製利用は、被控訴人が本件写真の著作者として有する本件写真についての同一性保持権を侵害する改変であるといわなければならず、また、その著作者としての被控訴人の氏名を表示しなかつた点において、氏名表示権を侵害したものといわなければならない。