育成型の電子ペット玩具「ファービー」は美術の著作物か/判例セレクション~美術著作物~
育成型の電子ペット玩具「ファービー」は美術の著作物か
▶平成14年7月9日仙台高等裁判所[平成13(う)177]※平成14年7月9日仙台高等裁判所[平成12(う)63]同旨
「ファービー」のデザイン形態は,当初から工業的に大量生産される電子玩具のデザインとして創作されたものであるが,「ファービー」の最大の特徴は,あたかもペットを飼育しているかのような感情を抱かせることを目的に,各種の刺激に反応して各種の動作をするとともに言葉を発することにあり,そのため,そうした特徴を有効に発揮させるための形状,外観が見られるのである。
顔面の額に光センサーと赤外線センサーのための扇形の窓が設置され,額から眼球周辺及び口周辺にかけては一体成型のための平板な作りとなっており, 目,口は球状のものが三角形上に3つ配置され,眼球及び口が動くため,その周囲が丸くくりぬかれて隙間があり,左右の眼球を連結する軸を隠すように,両目の間に半円形に隆起した部分があり,美感上重要な顔面部分に玩具としての実用性及び機能性保持のための形状,外観が見られ,また,刺激に反応して目,口,耳が動くことを感得させるため,それらが大きくされていることが認められる。このように,「ファービー」に見られる形態には,電子玩具としての実用性及び機能性保持のための要請が濃く表れているのであって,これは美感をそぐものであり,「ファービー」の形態は,全体として美術鑑賞の対象となるだけの審美性が備わっているとは認められず,純粋美術と同視できるものではない。