著作権侵害サイトにおけるアフィリエイト報酬の「犯罪収益」該当性/判例セレクション~罰則~

著作権侵害サイトにおけるアフィリエイト報酬の「犯罪収益」該当性

▶令和3年6月2日福岡地方裁判所第3刑事部[令和1(わ)1181]
被告人がG[注: 「多数の漫画等の著作物を掲載し,閲覧可能にしたウェブサイト」をさす]の運営で得た広告収入(アフィリエイト報酬)が犯罪収益に当たるかについて
1 弁護人は,本件におけるアフィリエイト報酬は,Gを閲覧したユーザーが,著作物の閲覧とは関係なく,サイトに掲示されていた広告に関心をもってクリックすることなどによって生じるものであり,犯罪によって生じたものでないから,犯罪収益には当たらない旨主張する。
2 検討
犯罪収益とは,犯罪行為により得た財産等をいい,ある財産の取得が犯罪行為「により得た」といえるか否かは,財産の取得の趣旨及び状況を踏まえ,財産の取得と犯罪行為との結び付き等の点から判断すべきである。
アフィリエイト報酬は,著作権等を侵害して掲載された漫画等の画像の閲覧や取得そのものの対価ではなく,広告をGに掲載したことに対し広告主から支払われる対価である。しかし,その広告の価値は,閲覧者がGにアクセスし,そこに掲示された広告を目にすることにより生じるものであり,閲覧者がGにアクセスする動機が,専ら漫画等の著作物を無料で閲覧することにあることによれば,前提犯罪行為である送信可能化はアフィリエイト報酬の不可欠の前提であり,両者は強く結びついていると評価できる。アフィリエイト報酬には,広告が表示されただけで発生するもののみならず,閲覧者によるクリックや商品等の購入を要するものもあるが,送信可能化がアフィリエイト報酬の不可欠の前提であり,両者が強く結びついていることには変わりがない。
前提事実で認定したとおり,Gは,大量の漫画等の画像データをウェブサイト上に掲載し,大量の一般ユーザーの閲覧を誘引することで,広告収入を得ることを専らの目的として設計・運営されていた。
そして,被告人が,Bらに対し,サイトを毎日更新することに特にこだわって指示していたことや,親しい者らとのLINEグループにおいて,平成28年8月頃,「漫画見放題サイト見つけた」「無料で公開して広告貼った方がもうかりそう」,「アクセス倍増必須」などと送信していたことによれば,被告人自身も,送信可能化をアフィリエイト報酬を得るための手段と考えていたと認められる。
このようなアフィリエイト報酬と送信可能化の結びつきの強さ,目的と手段の関係,被告人の認識に照らすと,本件におけるアフィリエイト報酬は,被告人らによる送信可能化と密接不可分のものであるといえ,犯罪行為により得た財産(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律2条2項1号イ)に当たると認められる。
3 結論
以上によれば,本件におけるアフィリエイト報酬は,「犯罪収益」に当たると認められる。


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