「キラキラぼし」の振付けの著作物性を否定した事例/判例セレクション~舞踊無言劇著作物~

「キラキラぼし」の振付けの著作物性を否定した事例

▶平成21年08月28日東京地方裁判所[平成20(ワ)4692]
エ 「キラキラぼし」の振付け
(ア) 原告主張の「キラキラぼし」の振付けの著作物性について判断する。
証拠及び弁論の全趣旨によれば, 「キラキラぼし」は,作詞不詳のフランス民謡であり,手の平を星に見立て,夜空に浮かんだ星がきらきら光る様子を,手をひらひら動かすことで表現する手あそび歌であることが認められる。
また,原告書籍本体には,「キラキラぼし」について,「夜空にうかんだおほしさまがきらきらひかるようすを,ひらひら手を動かすことで表現します。“おおきなほし”ではうでを大きくふり,“ちいさなほし”では手をかわいらしくふって,それぞれのイメージに合った動きでうたってみましょう。」(108頁)との記載がある。
原告が独自に創作したと主張する振付けは,別紙目録記載のとおり,堀野真一が作詞した「キラキラひかる おおきなほしは たのしいうたを うたっているよ ピカピカひかる ちいさなほしと」の歌詞(堀野の歌詞)に合わせた振付けであり,「キラキラひかる」との歌詞に合わせて両手を頭上に挙げて両手首を回す,「おおきなほしは」の歌詞に合わせて両手を挙げたまま左右に振る,「たのしいうたを」の歌詞に合わせて手を順番に胸の前で交差させ首を左右に揺らす,「うたっているよ」の歌詞に合わせて手を順番に口の横に当て,首を左右に揺らす,「ピカピカひかる」の歌詞に合わせて両手を胸の高さに挙げて両手首を回す,「ちいさなほしと」の歌詞に合わせて両手を挙げたまま左右に振るというものである。
そこで検討するに,堀野の歌詞は,キラキラ光る大きな星が,ピカピカ光る小さな星と一緒に,楽しい歌を歌っているという内容のものであり,この歌詞に合わせた振付けを考えた場合,星がキラキラあるいはピカピカと光る様子,キラキラ光る大きい星とピカピカ光る小さい星との対比,楽しい歌を歌う様子を表現する振付けになるものと解される。そして,「キラキラひかる」や「ピカピカひかる」の上記歌詞に合わせて両手首を回すことは,星が瞬く様子を表すものとして,誰もが思いつくようなありふれた表現であり,また,「キラキラひかるおおきなほし」と「ピカピカひかるちいさなほし」の対比として,前者では両手を高く上げて腕を大きく振り,後者では,胸の高さに挙げた両手を小さく振ることも,大小の対比として自然に思いつく,ありふれた表現であると認められる。さらに,「うたっているよ」の上記歌詞に合わせて手を順番に口の横に当て,首を左右に揺らすことも,歌っていることを示す動作として,ありふれた表現であると認められる。
そして,「たのしいうたを」の上記歌詞に合わせて,両手を胸の前で交差させて首を左右に揺らすことについては,原告書籍より前に発行されたポプラ社書籍に掲載された「キラキラぼし」において,「おそらのほしよ」との歌詞に合わせて右手と左手を順に交差させて胸に当て,体を左右に揺らす動作が記載されていること(61頁)からすれば,両手を胸の前で交差させ,体を左右に揺らす動作は格別な表現ではなく,上記振付けは,ポプラ社書籍記載の上記動作と左右に揺らす部位が首であること及び対応する歌詞に違いがあるものの,特段創作性があるものとは認められない。
したがって,原告主張の上記振付けは,創作性を有する著作物であるものと認めることはできない。
(イ) 以上によれば,原告主張の「キラキラぼし」の振付けは,著作物には当たらない。

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