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私の昭和歌謡118 函館の女 1965

民謡も演歌も聞かない女の子今じゃほれぼれ函館の女


紅白歌合戦が大の楽しみだった頃。昭和40年代。

いや、もしかして、楽しみにしていたのは私だけで、家族は「日本国民の当たり前」としていただけかもしれない。

うちは小さな町の駅から続く、小さな商店街の真ん中にあるラーメン屋だった。

隣と前にはパチンコ屋。裏は東宝映画館。
商店街には、寿司屋、蕎麦屋、乾物屋、肉屋、魚屋、八百屋、洋服屋、文具屋、時計屋、などが、これも小さい店を並べていた。

商店街の大晦日。ラーメン屋だって蕎麦屋の次に大繁盛だった。いよいよトリを聞き終えた常連さんが帰ると、どんどん片付け始めて、大掃除のシメに入る。表で入り口の引き戸を洗うと12時少し前。

ゴーーンと除夜の鐘を聞けば「明けましておめでとう」

サブちゃんの「函館の女」は、紅白でたった1回歌われた。

出演は、美空ひばりや越路吹雪、畠山みどりなど、若く色っぽい女性歌手もなく、男性歌手だって立川澄人やデューク・エイセスなどのクラッシック系と、三波春夫やフランク永井、村田英雄が存在していた。

聖子ちゃんもジュリーも出ていない紅白は、まだ、かちっとした日本国民行事という番組だったんだ。

その中で思い出に残っているのは、西城秀樹の「星のフラメンコ」だった。

そして「函館の女」

このメロディーにガンときた。はじまりがハ長調で言うと・・・

ドーーレミソーラドレミーミミミーーー

ドからミへ一気に駆け上がるのは、オペラ歌手だって大変。それを地声で、声色を変えて歌う発声にびっくりした。

伸ばす時の声も変わる。そして聞かせどころの高音は、気持ちがいいほど、どこまでも伸ばす。民謡の醍醐味だ。

今こうして、民謡はすごいみたいに書いてるが、当時の私は、ハスキーな西城秀樹のが好きに決まってるw

この時に、いくらすごいなー、と思っても、私は洋風歌謡曲が好きだったんだから、それからずっと忘れていた。

21世紀になって、YouTubeなるものが登場して、ある番組で、「函館の女」と北島三郎を、逆輸入することになった。

日本人と数人の外人の若者が、日本の歌手を批評する番組だった。

お茶の間のテレビを見て「いいね」とか「すごい」とか言っている雰囲気の番組で、懐メロの歌手の歌のうまさを讃える番組だ。

彼らは、サブちゃんの歌唱力を褒めちぎり、こぶしも聞き取り、素直な賞賛を口にしていた。

ジャンルや声質の好き嫌いで差別する私と違って、ひとりの歌手に対する敬意が感じられた。

ものすごく反省した。もう一度きちんと聞いた。

曲も歌唱も見事だった。

逆輸入。それが私の「函館の女」の思い出だ。


それにしても、好きな女を捨てて、もう一度函館に戻った男は、結局女に会えたのだろうか?

いや、会えても会えなくてもいいか。

サブちゃんの歌声は、戻った男の気持ちだけを「オレは戻ったぜ〜。どこに行ったんだい。探しまくるぜ。待ってろよ」と気持ちよく歌い上げている。


*おまけ*
このB面の「北海道恋物語」はぜひ聞くといい。笑っちゃう。





【参考資料】



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