メルカリっテックカンパニーのはずなのに、実務のスピードが日系大企業より遅いのは何故か?
インターネットの中の論調は日系大企業は、”重厚長大”=「腰が重い、意思決定するまでの階層が厚い、決断までの時間が長い、調整範囲が大きい」つまり何事も決めるまでの時間がかかると言われています。逆のベンチャーやスタートアップ、テック企業はその反対である、と。
メルカリがようやく重い腰をあげたようです。
2020年5月1日のプレスリリースで、
出品商品について
現在の緊急的な状況において、 医療機関で必要とされる商品を通常の経済的価値と著しくかい離した価格で出品することは、医療機関・医療関係者に影響を及ぼすおそれがあるため、2020年5月2日(土 )より当面の間、「医療機関で必要とされる商品」を禁止出品物とします。具体的な商品例は以下のとおりです。
・手指消毒液
・除菌シート・スプレー類
・高濃度エタノール製品
・精製水
・アイソレーションガウン(防護服含む)
・フェイスシールド
※感染の流行状況や社会情勢に鑑み、その他、新型コロナウイルスの感染予防に関する商品も対象とする場合があります
えーーーーーーーーーーーーーーー!!!!いまさら!!!!っていうのが世の中の反応なのではないでしょうか?
もちろん、やらないよりはやった方がいいとは思いますが、この件ってだいたい問題としては解決している段階にはいっているものだと思うんですよね。
など、各社が増産を進め、酒造各社も消毒にも使えるアルコールを販売してるわけです。また、企業より腰が重いはずの官庁も、
税金の免除を決めているわけです。そんな中、アルコールの転売を容認していたのはメルカリなどのフリマアプリでした。
では、これまで本当に何にもしていなかったかというと、そうではありません。
メルカリでも、社会通念上適切な範囲でのマスクの出品・購入をお願いし、取引状況によっては入手経路の確認や商品の削除・利用制限等を行ってまいりました。しかしながら、現在の状況に鑑み、マスクに加え以下の商品についても入手経路の確認や商品の削除・利用制限等の対象とさせていただきました。
・除菌用ウェットティッシュ
・除菌用ハンドジェル
・消毒用アルコール
・その他、コロナウイルス感染の予防を謳った商品
上記は、2020-02-27にでているリリースです。「入手経路の確認や商品の削除・利用制限等の対象」にはしていたということになります。が、それまで普通に売られていたことを考えるとリリースだけ出して何もしていなかったのでしょう。
上記、メルカリの社内サイトのインタビュー(2019-11-5)の中でメルカリ創業者の山田氏は、
いまメルカリの社員数は約100名です。半分以上はカスタマーサポートで、60人規模です。仙台にオフィスを作って、そこに40人近く。東京にも20人ぐらいいます。結構な規模感でやっています。後はプロダクトを作ってる側の人とコーポレート側の人が40人くらいです。カスタマーサポートの規模が比較的大きいのは、メルカリはサポートがいいよね、安心して使えるよね、と思ってもらえることを重視しているからです。メルカリって個人間取り引きなので、どうしてもヘンな出品があったりして通報がくるんですよね。比率としては数千件に1件とかであっても、モノが届かないといったトラブルというもあります。そういう問題を解決するための専任のチームです。
メルカリの従業員は半分以上がカスタマーサポートだと答えています。それだけカスタマーサポートがいれば、「入手経路の確認や商品の削除・利用制限等」はかなりの数の対処ができているのでは?と思うのですが、、、
前述で”何もしていなかった”と書きましたが、それは間違いで、”するつもりがなかった”が正しいのかもしれません。それは、2月6日付のキャリネコニュースに記事にあるように、
削除が進まない理由については「『いくら以下なら良い』などと価格面の基準が設定できないから」という。また、マスク出品の全面禁止については、マスクが法律上の禁止出品物に当たらないことから「今の段階では考えていない」と答えた。
キャリネコの記事が2/6で、「マスクなど感染予防用品の取引に関するご協力のお願い」が2/27なので、流石に何かしらのリリースを出さないといけないということで、しぶしぶ出したのが「ご協力のお願い」だったのかもしれません。
「ご協力のお願い」でわかるように、メルカリのお客様は購入者ではありません。出品者です。出品者が商品を出し、それを消費者が購入して初めて、メルカリは手数料収入を得ます。つまり大事なのは出品者です。なので、メルカリは出品を規制したくないのです。だって、出品者が高額で売ってくれればくれるだけ、自分のところに利益があがるためです。
大阪市が防護服が足りないと雨がっぱの買取を呼びかけたのが4月14日です。帝人が医療用ガウンの生産をニュースがでたのが4月15日で、例えば、住之江区が受付を締め切ったのは4月20日。
そして、メルカリが「アイソレーションガウン(防護服含む)」を今回出品禁止にしたのは5月2日です。
これは出品者がほぼ売り切って、新規出品を禁止しても問題ない状況になったから禁止のリリースを出したと思われても致し方なしかなと思います。だって、これだけ判断が遅い理由が他に考えられないからです。
前述の帝人も含めですが上記はマスク、人工呼吸器、消毒用アルコールの生産を始めるという日系大企業の記事です。3月下旬から4月上旬です。これ以外にももっと多くの企業が本業ではないモノの生産を決めて活動しています。
モノを作るには、原材料が必要であり、生産ノウハウが必要で、工場で働く人が必要だし、生産したものは出荷・配送する人もいります。つまり、大変大がかりなことを各社がやっているわけです。”重厚長大”な日系大企業が。
2018年の記事ですが、メルカリはテックカンパニーを目指すと高らかに宣言されています。
「私はSF作家アーサー・C・クラークの『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない』という言葉が大好きです。良いテクノロジーを使って、これからは誰もできなかったことをできるようにしていきたい。そして最終的にはメルカリを魔法のようなプロダクトへと変化させていければと思っています」(濱田)
理想が高いのは素晴らしいですし、そのように発展していって欲しいと思います。しかし、その”良いテクノロジー”が結果として、転売ヤーの巣窟として、人々が必要としているものを買い占め、価格を釣り上げて売るマーケットプレースとしてしか人の目に映っていないのはどうしてでしょうか?
今回、5月1日にでたリリースはあくまでも、
現在の緊急的な状況において、 医療機関で必要とされる商品を通常の経済的価値と著しくかい離した価格で出品することは、医療機関・医療関係者に影響を及ぼすおそれがあるため、2020年5月2日(土 )より当面の間、「医療機関で必要とされる商品」を禁止出品物
医療機関で必要とされるものに限定されています。しかし、現在の状況で転売で問題になっているのは、それだけでありません。
ゲーム機や食品など転売が激しくなっています。
こんな状況だからこそ、自分たちができることをすることが大事なのだと思います。メルカリはリアルな在庫や工場、販売店などを持っていないはずなので、いわゆる大企業なんかより素早い判断や決断ができると思います。少しでも良いニュースがでてくればいいなと思います。
こんなのも書いていますので、良ければどうぞ。