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帰り道

 基本的には一交代勤務、つまりは朝から翌日の朝までの24時間、職場に拘束されて仕事をしている僕でありますけれど。

今日は珍しく日勤でした。

というわけで、勤務が終了してその帰り道のことです。



 弱い雨が降っていましたので、お気に入りの長い傘を差して歩いていました。

今朝、自宅を出るときは長い傘を持って行くかどうか迷ったのですけれど、持ってきて正解です。役に立ちました。

それだけでも自分を褒めてあげたくて、少し嬉しくなっていたところに後ろから話し声が聞こえてきたのです。

どうやら電話をしながら自転車に乗っているようで。
狭い道ですから、一瞬迷いながらも脇にどいて先に行かせてあげることにしました。

すると、

「ありがとうございます!」

軽薄そうな電話の話し声とは裏腹に、投げやりでないしっかりとした感謝の言葉が聞こえてきたのです。

さらには通り過ぎざまに、

「お疲れ様でした!」

なぬ? あ、あの人は……!

そう、同じ職場で働いている違う会社、というか親会社の人でした。

普段は一緒に仕事をすることはまずありませんけれど、たまにすれ違ったときなどはきちんと挨拶をしてくれる人なのです。

「……お疲れ様でした」

まさかいきなり挨拶をされるとは思いませんでしたけど、何とか返せました。よかった。

ありがとうございます、お疲れ様でした。ありがとうございます、お疲れ様でした──。

つい頭の中で何回か復唱してしまいました。

だって嬉しかったのです。
少しばかりの気遣いにしっかりと感謝の気持ちが返ってきて、ねぎらいの言葉までいただけて。

道を譲ってあげてよかった、嬉しい! 
としみじみ思えました。


たとえ雨が降っていても、仕事終わりで疲れていても、ほんのちょっとした気遣いや言葉一つで、こうもほかほかとした気持ちになれるなんて。

かくも人の心というものは、複雑でありながらもどこか単純で、面白いものですね。

今日の夕食がいつもよりもおいしく食べられそうな気がするのは、きっとお腹が空いているからだけではないはず。🍚

なんだか無性に感謝したい気分です。
自分にもあの人にも、この世界にも
「ありがとうございます」と。

なんのはなしですか。

ちょっと大袈裟かもしれませんけどね。
帰りの電車が赤電で、これまた嬉しかったんです。




読んでいただきありがとうございました。

みなさまの帰り道が感謝の気持ちでいっぱいになりますように✨

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