風のつよい街。
「sunny」という名曲は
エラフィッツジェラルドの歌声のものが、ずっと好きだった。
持っていたプレイリストを
全部捨てて旅に出た。
海風が羽音のように両耳でステレオする。
安宿の隣での艶っぽい宴会の歌。
旅先で聴く音はなんでも寛容に脳に録音した。
あれから。
あれから3ヶ月が過ぎ。
風のつよい、かわいた街にきた。
久方ぶりに書き出すと
誰かを演じないとと不遜に、粋がってしまう。
ここは山からの風。
山からの風は、寡黙に人を強くする。
だからこんなに甘えたい。
ここは寡黙。寡黙に人を抱きしめる。
静けさの合間にアスファルトの上をくるくる回る
風の音だけがする夜には
ボビーヘブの「sunny」の方が似合うと、
電話機に入れた。
この街にあとどのくらい。
「sunny」に出会うのだろう。