GPz550F 2023#44 フロントフォークシール交換
いよいよ、この日がやってきた。
というほど、やってよ、と言われてから時間はたっていないけれど、かなり気合のいる作業である。
一般的なフロントフォークのオイルシールを替えるだけでも、けっこう大変なんだけど、GPz550Fは現代からすると、すごく特殊なフロントフォークだから。
第一に、アンチノーズダイブ。
80年代に各社が競うように載せた機構である。
ブレーキングのさい、フォークが沈み込まないように動作する。
当時は革新的な機能だったけれど、あまり効果が感じられなかったか、メンテナンスがめんどくさいと評判になったか、で、バイク史の遺物になっている。
第二に、エアサスである点。
「エアサス」と呼んでよいのかわからないが、インナーチューブ内に空気を入れて調整する。
フォークオイルも、フォークスプリングも入っているので、セミエア、と呼ぶのが妥当かもしれない。
とにかく、普通じゃない。
いうなれば、ヘンテコなフォークである。
逆にヘンテコなものがパーフェクトに機能している姿は妙に美しい。
目指すはそこなんだな。
じつのところ、フロントフォークのオイルシール交換は今までに3回くらいしかやったことがない。
トップキャップがリングで固定されるカワサキ車だった。
トップキャップがサビで外れないし、ボトムボルトが抜けないし、やっと組み上げてもシールできなかった。
その後、マニュアルに書いてある手順は、設備や工具が充実している前提で書いてあることに気づいた。
そんなわけで、どうやったらうまくできるかを、時間をかけて検討して当日を迎えた。
けれども、実車をろくに見ないで思い描いた手順は、フロントフォークを観察している時点で崩れた。
そうか、アンチノーズダイブはブレーキラインと接続しているのか。
つまり、ブレーキラインを解放してやらないと、車体からフォークをはずせない。
もしかしたら、アンチノーズダイブのシリンダー部を先に外せば、ブレーキラインは解放しなくてもよいかもしれない。
ただ、その手順で進めると、アウターチューブに巻き付くように接続されている細いパイプを損傷する可能性が高い。
けっきょくブレーキラインのエア抜きをやることになったけれど、損傷させるよりはずっといい。
旧車のパーツは高いからな。
その点を除けば、だいたいシュミレーションしたとおりに作業は進み、オイルシールも交換できた。
では車体に戻しましょう。
これがとても大変で、アンダーステムを通したところでリングを入れ、さらに持ち上げながらエアの通る輪っかに通す。
(この「輪っか」正式にはなんと呼ぶのか調べてみたところ、「チューブ」としか書いてない。)
この輪っかは、内側にOリングが入っていてズラさないようにインナーチューブを慎重に入れる。
左右は金属製のパイプでつながっているので、左右同時進行で入れていかないとならない。
と、書いているわりにはすんなり入ったので、ヤマは越えたか的に、その後は一気に組み上げた感がある。
ここはしくじった。
輪っかを通して、トップブリッジで固定した後、いったん空気を入れて漏れていないか点検が必要だった。
ハンドルを戻し、カウルをつけた段で、いよいよ空気を入れてみた。
抜ける、空気が。
やり直しだ。
けれど、なにが悪いというのだ?
輪っかを通すのは無理なくできた。
Oリングをキズつけたか、インナーチューブがヤセているのか、輪っかが歪んで正円ではないのか。
シールしちゃうかなー、と安易な方向に流れそうだ。
結果はいずれ、また。
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