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ジョルノ 2023#8 フロントフォーク交換

スクータのフロントフォークが、ステムと一体になっているものがある。
かつては、むしろ主流だったのではないかと思うくらい、街行くスクータに数多く採用されている。

ステム一体のフロントフォークは、車軸が直接刺さるわけではないので、純粋な意味ではフロントフォークではないようにも思うが、車軸を支えている一部分であることは間違いない。
衝突や転倒でダメージを受けやすく、しかも致命傷になりやすい。
フレーム側の、ステムを受けている箇所は、溶接されているのが一般的な構造で、衝撃によって変形したり、溶接が剥がれたりする。
この部分は外して付け直すことや、溶接をし直すことは可能だけれど、ダメージが他の箇所に波及している可能性はあるし、そもそも正しい位置に溶接することはできないとされている。
その箇所だけ修復しても、車体のバランスは回復できないので、廃車・スクラップに化す、と一般的には言われている。

けれども、原付、しかも一種ならそこまでシビアなものではないと、個人的には考えている。
走行中に常にハンドルが振動して手がしびれるほどなら話は違うが、前輪が小さいために、完全にハンドルの振動を止めることはむつかしく、むしろ、そんな車両のほうが少数だろうと思う。
だから、走行可能かどうかは乗ってみて判断することにして、依頼どおり、フロントフォークとホイールシャフト、ホイールベアリング、または、ホイールそのものを交換することは決めていた。

さて、ジョルノ、気にして調べてみないと気づかないが、同じ車名でいくつかのタイプがある。
今回、フロントフォークが歪んでいるのは、2スト、AF24の型式である。
AF70以降のジョルノは外観が「丸い」ので区別しやすい。
さいしょ、AF24と聞かされたときは、タクトの間違いではないか?と勘ぐったりした。

持ち主は姪で、友達と駐車場で乗り回しているうちに壁と激突したのだと言う。
フロントフォークが曲がって、車体側に食い込むようなかっこうになっており、ハンドルの切れ角が狭まっている。
正面から衝撃を受けたのは、間違いないが運転者は大丈夫だったのだろうか?

スクータのステム一体型フロントフォークを抜き取る作業は、実はそれほど大変な作業ではない。
車体前方を大きく持ち上げないとならないので、大がかりにはなるけれど、特殊工具を使わずに作業できる。
一般的な自動二輪車と比較すると、ステムナットが緩めに締めてあるので、大口スパナさえ必要ない場合もある。
ステアリングユニットをステムに被せる構造で、ナットが外れて抜ける可能性が低いので、あえてきつく締めなくてもよいのであろう。
インパクトレンチは持参していたが、使用することなく、作業開始から約60分でフロントフォークを抜きとった。

抜きとったフロントフォークを、これから取り付けるものと並べてみると、笑えるくらいカタチが違う。
「一目瞭然とはこのことですね」
持ち主の叔父も驚きを隠せない。
姪御さん無事で良かったですね、レベルですよ、これは。

フレーム側を観察してみると、溶接が剥がれた様子はない。
衝撃を受けると、溶接で盛った箇所の塗装が剥がれることが多いが、これも発見できない。
では、ステムが曲がってしまうほどの衝撃をどこで受け止めたのだろうか?と外した部品を観察すると、ベアリングレースが変形していることを発見できた。
こちらは新旧比べても明らかなほどではない。
が、ステムシャフトに通したときのガタつき具合を比べると、外したほうは明らかにガタつく。

この時点で、たぶん乗れるようになりますよ、と伝えはしたが、組み上げて、乗ってみてから判断することにしよう。
フロントフォークが曲がるくらいだから、前側の外装品が壊滅的に割れている。
できれば直してほしい、とは言われたが、どれくらい耐久性が回復できるものなのか約束はできません、と答えていた。
この作業は、屋内で時間をかけてやるものですよ、半田ごてを使いながら何度も呟いていた。

組み上がった状態を見て、持ち主の叔父は驚いたようではあったけど、時間と費用を掛ければたいていの物は修理できるものです。
問題は速度が上がったときにハンドルがブレるか?
ちょっと乗ってみます、と走り出したはよいけれど、道に迷って30分くらい乗る結果になった。

スロットルの遊びが大きいのと、ブレーキケーブルが伸びきっているのが気になるが、ハンドルがブレる感じはない。
左ミラーがヒビ割れているのが悲しくなってくるくらい、普通に走れる。

ミラーを覗くたびに、無茶してはいけないと思い返すがよかろう。

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