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「総天然色ビーチ」① 聖なる静なる誓。

こんな風にここに住んでいる
私は何度この風景を夢に見たことだろう。そう実際に夢にまで見ていた。
夢に出てきた、浜辺までのあの土手は
もっと子供の頃に住んでいたまた別の風景だったけど。
いずれにしても、帰ってきたのだ。
ああ、かえる。「かえる」とは、ここだったのだ。
比呂乃は今やっとすべての物語がつながったのを感じた。
私の物語は私の物語だから、当たり前だけど、叶う。
こういう形で叶うのだ。

やっぱり、クニちゃんは待っていてくれるの?

何日も経って、ツユクサの時期じゃないから、供花を持って、あの家を訪ねた。
「お帰り、ひろちゃん」
クニちゃんは、昔おばあちゃんが呼んでくれたように、おじちゃんおばちゃんが呼んでくれたように、子どものクニちゃんが呼んでくれたように、僕を呼んでくれた。
「お帰り、ひろしくん。」
私はもう比呂乃を演じなくていいのね。
比呂乃でもひろしでも、僕が僕であったことを知って、僕でない僕のことを知らない人たち。
クニちゃんも、クニちゃんでない。きょっちゃんだもん。
二人は、見つめ合って、抱き合った。
もう分かっていた。
子供の頃から好きだった。
この優しい人、素朴で男らしい人。
私にないものを持っていそうな素敵な人。
貴方はどう感じていたの?
聞かなくていいのかな。
二人は抱き合っていた。
求めあってはいるのだ。そういう関係かどうかなどどうでもいい。
きっと、何かでお互いが必要で、きっと大きな流れの中で、きっと二人であることが重要なんだろうと、二人は予期している。
二人は抱き合って、キスをする。どういう意味かは本人たちにはわからない。
ただ、契約である、、、というか何かの誓い。むしろ二人と大いなるものとの誓い。
聖なる静なる誓。

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