【稽古日誌】- ひきょう - #1


『- ひきょう - 』公演詳細はこちらから↓

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『ひきょう』の稽古開始から一週間。

私が新鮮なのはとにかく「雑談」の多さです。台本の中でも、稽古場でも、気がついたら皆で方向性の見えない世間話をしています。

稽古場が開くと、皆三々五々に集まり、ホットカーペットで座卓を囲んで温かい紅茶を飲みながら、雑談が始まります。まるで親戚の家に遊びに来たような緩やかな時間です。例えばタピオカについて「あれって緑茶とか中国茶とか何でも砂糖入れて甘くしちゃってるけど、美味しいよね」と盛り上がったり。
一見意味のない会話に思えるかも知れませんが、伊集院もと子さん - 通称モコさん - 曰く、この雑談が発声練習であり、またお互いのことを知ることで舞台上でも会話しやすくなるそうで、無くてはならない時間なのです。

しかし、私たちは日常的にたくさん雑談しているにもかかわらず、芝居でやろうとすると非常に難しいのが現実です。相手の言葉を聴き、返事をする、あるいは新たに質問する。当たり前に無意識で成り立っている会話が、芝居になるとちぐはぐになってしまうことが多々あります。特に、人を待つ場面のような目的の無い「雑談は一番難しい」とモコさん。
COoMOoNOでは「指差しをしながらしゃべる」ことで会話を稽古します。セリフを言いながら、文節ごとに一つ物を指差します。答える人は、聞かれた時に示された物を指しながら答えます。すると、如実にセリフのニュアンスが変わり、会話になっていくのです。例えば
A「何か食べに行こうか。」
B「食べに?」
というセリフ。三つ物を用意して、まず、Aさんは「何か」と一つ目を指差し、「食べに」と二つ目、「行こうか。」と三つ目を指します。次に、Bさんはどの物を指して返すのか。「行こうか。」の三つ目ではなく、二つ目を指して「食べに?」と聞くので会話が成り立つのです。
この日は1分弱の会話のみをひたすら繰り返して稽古は終了しました。

稽古中、モコさんがおっしゃった言葉で「カフェで、隣のテーブルの人の会話が聞こえてくる、そういう感覚でお客さんに芝居が届いたら良い」というのが印象的でした。
私は店や街で人の雑談を何となく聞いてしまうことがあります。頑張って理解しようとしなくても勝手に頭に入ってくる感覚なのです。境遇も関係性も全く知らない人なのに聞いているのが心地よいと感じます。これが自然に成り立っている会話なんだと気づきました。

雑談は奥が深い。

11月22日 関場理生

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