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Y.A.B(ヤファイアン・アッチャーズ・バンド) ライブレポート

噂の八重山・石垣島バンド、Y.A.Bが仙台初上陸!
バンド史上初となるライブハウスでのパフォーマンスで最高気温を記録更新?!



Y.A.B(ヤファイアン・アッチャーズ・バンド)とは

Vo. / Wash Board / AG:比嘉栄昇(BEGIN)、Vo. / Wash Board / AG :比嘉ケンジロウ、 EG:石垣ゆうま、Ba:メリーアラキ、Dr:安間ゼンタロウ

BEGINのボーカル比嘉栄昇が故郷石垣島で活動するために結成されたバンド。固定メンバーという形態ではなく島で暮らし、 仕事の都合が付くメンバーが集まってライブを続けて行くという「ゆる〜く」確かな信頼関係で結ばれた音楽集団。 島の先人達が残してくれた「うた」から土地の音楽を学び受け継いで行きながら今の「うた」を新たに生み出す事が自分達の使命だと考えている。特に八重山独自のリズムの感じ方を「上げ拍子」と名付け探求中である。 地元に誇りを持ち、その土地に似合う暮らしの中の「うた」を作り続ける事で、いつか日本中に同じ志を持った仲間が出来ると信じている。「万世館」という閉館した石垣島の映画館で月に1度のペースでライブを開催中! 1stオリジナルアルバム『漂着』発売中。

(株式会社アミューズ資料より)


Y.A.B(ヤファイアン・アッチャーズ・バンド)仙台公演に行った/クールマイン的見聞録


日付:2023年 8月28日(月)
会場:仙台LIVE HOUSE enn 3rd

天気は快晴。
いやぁ、本当に今年は暑い。会場に向かおうと乗り込んだ車のハンドルが熱くてなかなか握れない程だった。それもそのはず、今日の気温は仙台で今年最高を更新する36.8度(!)を観測していたのだ。これで今年の仙台の猛暑日は7日となり過去最多を更新し、真夏日は48日で2010年の過去最多に並んだそうだ。早くエアコンの効いた地下のライブハウスに逃げ込み、Y.A.Bの奏でる南国産ミュージックで涼もう!そう思い、駐車場から早歩きで向かう。
・・・この時はまだ良い裏切りがある事は予想だにしなかったのだ。


会場内に入ると、何度も来たはずのenn 3rdのコンパクトさに改めて驚く。前列で手を伸ばせば届くようなこの距離で、BEGIN栄昇さんのパフォーマンスを観れるのは今やレアだよなぁ、と再確認のように思ったのだ。Y.A.BのバンドTシャツを着ている方もチラホラ(いいなぁ…)みるみるうちに場内は入り口付近まで埋まり、来場者の期待と興奮の笑顔に満ちていた。2022年9月結成以来、今夜はバンド史上初のライブハウス公演となる。つまり歴史的な一夜がこの地仙台で行われることに、喜びもひとしおだ。(Y.A.Bの現在の主な活動拠点は故郷・石垣島の万世館。ここはかつて映画館で2009年の1月に閉館している。それから13年の時を経て、メンバーらはライブに向け座席や舞台、照明、トイレなどを約1週間かけて清掃し、万世館は再び息を吹き返した。)拍手に迎えられメンバーの登場。リラックスした中にも意気込みを感じる。


ライブが始まると、すぐに引き込まれ、時に圧倒されている自分がいた。板の上に立つ5人のチームバランスが絶妙で、年齢や性別がバラバラなのがかえってバンドの五角形チャートグラフを綺麗に華咲かせているように思えた。前半戦は一家の大黒柱のように守護神に徹する栄昇さん、ケンジロウさんの特徴的でよく通る声、ゆうまさんの抜けの良いギター、ゼンタロウさんの男らしいリズム、メリーアラキさんのメロディアスなベースのフレーズとカッコイイステージングにどんどん魅了されていく。
言わずもがな栄昇さんとケンジロウさんは実の親子なのだが、この二人の掛け合いが何ともたまらない良さ、面白さがある。心から父を尊敬しつつも、時に大好きな音楽を親友と語らうような人懐っこさがあり、それを愛と理解で許容する器の大きさも自然に見て取れる。甘やかしではなく、親も子を一人の人間として認めている感じ。なんて素敵な親子関係なんだろう。お二人共冗談もうまく話が面白いので、ずっと聞いていたくなる。

そしてY.A.Bは自身のルーツ&カルチャーを大切にしているバンドである。観光客には到底知ることが出来ない、その島で暮らして初めて分かる心情を、自虐じぎゃくや皮肉を交えながら、ユーモアたっぷりに随所で語ってくれた。
”自分がどこから来た者なのか、自分は何者で何がしたいのか。”
メンバーはそれをどこまでも探求しているかのように感じる。
ツアー中のエピソードで印象的だったのは、日系ペルー4世のアーティスト、メリーアラキさんのお話。彼女はペルーの首都リマ出身。自身のルーツを求め2018年に沖縄へ移住し、現在は石垣島で暮らしているわけだが、なんと大本おおもとのルーツは宮城県は大崎市の三本木さんぼんぎだというではないか。そしてこの機会にペルー移住前に曽祖父そうそふ(ひいおじいさん)の暮らしていた三本木の地に降り立ち、歩いて来たという。自分のルーツの足取りをたずね、感じたインスピレーションが今後の歌に生きると思うと実に感動的だ。『Ishigaki my love』はじめメリーさんがリードを取る曲は、どれもラテン独特のバイブスが吹き込まれており、耳触りが新鮮で情熱的。ペルー、日本、うちなーんちゅ、その全ての故郷に誇りを持っているかのようで、りんとしていた。


メンバーは曲によって様々な楽器を次々と持ち変え、民謡、マドロス歌謡、音頭をライブ中に高配合でブレンドしていき、『歌津さきてけさい』や『節祭支度』では遅れて来た盆踊り大会の雰囲気を楽しめた。老いも若きも歌と踊りで盛り上がる、これほど精神衛生上健康で豊かな事はないのではなかろうか。

そしてY.A.Bのエンジンは想像よりずっと大きかった。ここからまだまだアクセル全開で飛ばしていく。ライブの構成として後半に当たるのは、弱冠二十歳・ケンジロウさんの承認欲求と日常のいきどおりがポジティブなエネルギーに変換・昇華しょうかされ爆発していくロックンロールショーで、筆舌ひつぜつに尽しがたいものがあった。”俺は絶対に諦めない、絶対に全国区に成り上がってみせる!”という未来のロックスターの気概と才能をビンビンに感じる圧巻のステージングだった。その熱さに呼応するメンバーのシンクロ具合も渾然一体こんぜんいったいとなりマジカル!特に栄昇さんが隣で「行け!もっとやれケンジロウ!どこまでも飛んでいけ!」と背中を押しているかのような姿を勝手に誇大解釈こだいかいしゃくして感動していた。魂の『畑ブルース』、チャック・ベリーのJohnny B Goodeのカバー、アンコール含め本日2回プレイした『島サバジェンダー』、真骨頂『ゲンキクールロックンロール』で気付けばこちらも汗だく。持っていたペットボトルの緑茶もいつの間にか空になっていた。


ショーの幕引きは栄昇さんの説得力の塊のような声で染み入る『漂着』。上がり切った心拍数と胸の高鳴りをゆっくりと正常な状態に戻していってくれた。夕涼みのつもりで心構えしておった自分がこのレポートの冒頭で語った、「この時はまだ良い裏切りがある事は予想だにしなかったのだ。」の意味が少しでもお伝え出来ただろうか。ホットなライブハウスの階段を駆け上がり、「元気もらったなぁ」と心で呟く。あんなに熱かったハンドルの熱も冷めており、窓を開け夏の夜風で汗を乾かしながら帰路についた。

しかいとぅ みーふぁいゆー (どうもありがとうございました)


【アーティスト情報】

▼Instagram
https://www.instagram.com/yafaiian.acchars.band.0980/



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