パスピエ ライブレポート
ugokubakuを遂に目撃！
待望の仙台公演でパスピエが魅せた夜！
パスピエ（P.S.P.E）とは
2009年に成田ハネダ（key）を中心に結成。
バンド名はフランスの音楽家ドビュッシーの楽曲が由来。卓越した音楽理論とテクニック、70s～00sまであらゆる時代の音楽を同時に咀嚼するポップセンス、ボーカルの大胡田なつきによるMusic Videoやアートワークが話題に。11年に1st ミニアルバム「わたし開花したわ」でデビュー。その後、数々の大型ロックフェスにも出演、対バン形式の自主イベント“印象”シリーズや全国でのワンマンツアーを行い好評を博す。15年末には単独で日本武道館公演を行い成功を収める。16年12月にCDデビュー5周年を記念して初のホールツアーを東名阪で開催。17年1月に4th フルアルバム「＆DNA」を発売。春には過去最大規模の全国ツアー、パスピエ TOUR 2017 “DANDANANDDNA”を開催。その後、17年から18年にかけて「OTONARIさん」、「ネオンと虎」の2枚のミニアルバムを発売。18年10月には、初の野音ライブ企画、パスピエ野音ワンマンライブ “印象H”を東京/日比谷野外大音楽堂と、大阪/服部緑地野外音楽堂で開催し成功を収める。2019年には結成10周年を迎え、5th Full Album「more humor」をリリースし、全国ツアーを完遂。2020年2月には結成10周年イヤーを締めくくりに十周年特別記念公演“ EYE ”を 開催。あわせてユニバーサルミュージックとタッグを組み自主レーベル “NEHAN RECORDS”を立ち上げ「まだら」（MBS ドラマ特区"ホームルーム"のエンディング主題歌）を配信リリース。6枚目のアルバム「synonym」に収録されている「プラットホーム」は電子マンガ・ノベルサービス「ピッコマ」の新CMソングに抜擢された。勢いが止まらないパスピエは、その後、アルバムの先行配信曲として異例のデジタルシングルを５月連続でリリースした。アルバム「ニュイ」を引っ提げ、2022年初春に東名阪ツアー「PSPE TOUR 2022 ニュウ！」を無事完遂。その後、自身初となるBillboardでのライブを東阪行うなど幅広い分野から支持されているバンドである。
現在最新作「ukabubaku」の発売を記念し全国7箇所を回るライブツアー、「ugokubaku 」を実施中！
（パスピエ オフィシャルサイトより抜粋・一部加筆）
パスピエ PSPE TOUR 2023
「ugokubaku」
仙台公演に行った／クールマイン的見聞録
日付：1月21日（土）
会場：仙台darwin
天気は曇り。
車から降りた途端、キンと冷えた風に思わず身を屈める。
寒空の下、逸る気持ちを抑え開場を待つファンが長蛇の列を作り、街を行き交う人々から「一体何事？」と視線を集めていた。
さてパスピエ、今回はニューアルバムを引っ提げてのツアーである。
全国7箇所を回る旅で、仙台は折り返しの4公演目。
音源の内容に関しては以前こちらで紹介しているのでここでは割愛。
（⏬グッと力入ってますのでご一読いただけたら嬉しいです！）
とまぁこの熱量高めのレビューでも分かるように、本作はまごうことなき傑作なのだが、このアルバムをライブで再現となると、一体どうなるものかとますます興味津々なわけで。
脳裏に浮かんでいたbakuが目の前で動き出す瞬間に、いよいよ立ち会える期待に胸が高鳴っていたのだった。
個人的には久々に訪れた仙台darwin。
ライブハウス特有の閉塞感や圧迫感を感じさせない、清潔で洒落たハコ。ステージの高さもあるので、演者は映えるし、お客さんにとっては見やすい会場だ。
果たして”掴み”は何で来るのか、、、そんなことをボンヤリと考えていたら客電が落ち、温かい拍手の中メンバーが登場する。
幻想的なシンセ音が鳴り響き、
「潮騒の〜♪」
と始まった！（この印象的な出だしは！）
オープニング曲は新しいアルバムから『4×4』。
ドラマのエンディングテーマとしても話題になったこの曲からのスタートで、聴衆からの声にならない歓喜の声が伝わった。
有り難いことに様々な都市からご来場いただいているわけだが、特に仙台のファンはスロースターターだ。別にそれは悪いことではなく、県民性/地域性なのか、シャイで様子見傾向があり、ド頭からブチ上がってるところをあまり見ない。
そんなことはとうにお見通しのパスピエは、焦りはせずとも場内のアイドリングに抜かりは無い。成田さんが笑顔で手を挙げながら奏でる魔法の箱からは色鮮やかな音のレイヤーが次々に生まれ、なつきさんも水を得た魚のようにサウンドの波で泳ぎながら感情豊かに歌う。
6曲目、熱のこもった導入からの『とおりゃんせ』が披露される頃には完全に会場全体が温まった感がある。
昔からファンに愛されてる曲というのが分かるぐらいマスク越しに歌っている人の多さを見てとれた。
その後も威風堂々、パスピエは世界を構築し続ける。
雑味を一切感じさせない、ソフィスケートされた三澤さんのギターが名器オレンジから立ち上がり、曲の物語性に厚みと深みを出していた。
そして個人的に特筆すべきは露崎さんのベース！
会場のdarwinはクラブイベントも盛んに行われているだけあって、低音の鳴りがイイ。ボトムの低い露崎さんのファットなベース音がめちゃくちゃ気持ちイイのだ。獲物を狙うピューマのように鋭く、しなやかに4弦が歌っていた。（佐藤さんのサポートドラムとの息もバッチリ！）
シアトリカルな表現で、新作『ukabubaku』の中でも異彩を放っていた『ニュータウン』。これが本邦初お披露目。成田さんは「人前で演奏するのさえ初めて」と語っていたので、仙台公演に集まった人はちょっとラッキー。
音源とは一味違う、ピアノと歌のミニマルな表現で会場を魅了した。
「仙台のお客さんは拍手の音で分かる。もうそんなところまで来たかも知れない」と達観したご様子で、「そんな街でニュータウンを初披露出来て嬉しい」と続けた。
例えリップサービスだとしても、「今日ここに来てよかったなぁ」とファンには届くだろうし、冒頭でなつきさんがMCで「お互い思い出に残る1日になるようなライブにしたい」と言っていたことにも帰結されるのではないだろうか。
だが、なかなかどうしてホンワカハートウォーミングオンリーでは終わらせないのがパスピエ。
先日最新MVが公開された『かはたれ時に』が始まると青天の霹靂が訪れたかのように目まぐるしい！
転調に変拍子の応酬、その超絶技巧プレイと予測不能のブレイクに、お客さんをちょっとだけ置いてけぼりにするのを演奏しながら楽しんでいるかのよう。
でも少しだけ意地悪をしてすぐに「ウソだよーん」と笑顔で手を差し伸ばし、こちらに連れ戻してくれる。そんな体験を音楽の中で何度もさせてくれる稀有なバンドがパスピエであり、そこに期待するファンも多いのでは無いかと思うのほどだった。
ライブ構成は新旧織り交ぜ丁度半々ぐらいで、ファンも満足度の高いセットリストだったのではないだろうか？
ここまで極力ネタバレ防止で書き連ねて来たが、アンコールで登場したパスピエが最後に送ったのは、ロックフェスなどでも必ず演奏されてきた人気のアノ曲、そしてラストを飾ったのは新しいアルバムからで、ライブでより一層グッとエモーショナルに伝播したアノ曲だった。
ツアーもまだ半ば、ファイナル含めあと3箇所あるので、各地へとbakuの足取りを追ってその目・その耳で確認するなんていかがだろうか。
ライブの熱気と打って変わって外へ出ると寒気が襲う。
駐車場までの道のり、歩きながら自然と口をつくのは『微熱』のメロディだった。
-追伸-
完全にこれは余談になるが、ジャケットアートワークの話。
アルバムレビューの際、「葛飾北斎や水木しげるが創造した獏の世界観を現代的なポップアートにアップデートしたようなタッチのイラスト」と自分は評したが、本当の答えは水木しげるミーツ伊藤若冲と今夜のライブで判明し、「なるほどっ」と心の中で膝を打ったのだった…。（非常に惜しい）
【作品情報】
アーティスト：パスピエ
作品名：ukabubaku（CD）
販売元：NEHAN RECORDS / UNIVERSAL MUSIC ARTISTS
通常盤 CD ¥2,800( 本体 )+ 税 / POCE-12195