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『ボクの幸せジェット』 vol.1

 ボクはその頃、歯を磨いて布団に入るまでの間、居間の窓から外を確認するのが日課となっていた。
探し物をしていたのだ。

それはちょうど、ボク一人が乗れる位の大きさの丸い飛行物体で、両脇に申し訳程度の飛行制御用の翼と、お尻にはジェット噴射装置、短い円筒形の物が二つ並んでいる。
そして、操縦席から覗けるように、丸い窓が一つ付いている。
機体は灰色。何度も大気圏に突入しているので、所々煤けている。
窓だけが黒くて、たまに光線の関係でギラリと光る。

キズ一つ無いのだけれど、その金属表面の汚れて光沢を失った様は、ボクに遥か彼方何万光年気の遠くなるような旅を思い起こさせた。
「きっと、ワクワクするような冒険なんだろうな」と。

 ここで、白状するけど、その飛行物体を見たのは、一回だけだ。

それは多分、幼稚園から小学校に上がる頃で、大雪の冬のこと。
夕飯を終えて眠る前の少ない時間、窓の外の降り積もった雪を見ていた。

雪は止んで、庭にある物すべてが、温かそうにふわふわマシュマロのような外套を身に付けていた。
ボクの背丈と同じくらいのヒバの木や(これは、ボクが生まれた時に、お父さんが、共に大きくなるようにと植えたものだ。いつも頭を撫でながら言われる。「早く大きくなーれ、キャッチボールしよう」と、まだ秘密なんだけれど、本当は幼稚園で、友達ともうしているんだ)、
ボクなんかよりはるかに大きくて、おじいちゃんみたいにガサガサの肌をした桜の木も、広げたたくさんの枝に、たくさんの雪の花ぼんぼりを付けている。
それから、置き忘れたままのボクの自動車は、そのままの形でふっくらと雪に覆われている。

何もかもが白く、ふわふわの雪で覆われている。
そんな外の景色を眺めながら、ボクの将来の自分を想像していた。

 ちょうどボクと同じ位の男の子がいて、お父さんになってエラくなったボクは、時々その子の頭を撫でて言う。
「早く大きくなるんだよ。そして、お父さんとキャッチボールしよう。お父さんはとても上手いから、お前は、もっと上手くなれる筈だ」なんてね。

そして、お父さんになったボクは、いつもにこにこして、その子の手を引いていろんなところへ遊びに連れて行く。いま毎週のように行ってる運動公園や、神社なんかじゃない。まだ行ったことがない、バスに乗っていく所だ。

そんな夢?を見ていた時に、目はずっと外の雪に覆われた庭にあったのだけれど、その大きく膨らんだボクの自動車の横のところに、「しゅーーーん」と、何かが降りてきた。
ゆっくりとだ。


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