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『KINGDOM HEARTS Re:Chain of Memories』は苦痛か?
「キングダムハーツの話通じる人、いないんですよねー」
「なんか長くて複雑なイメージがあるけど」
「しかも非ナンバリング作品も飛ばすとストーリーがわからなくなるんで、飛ばしていい作品がないんです」
「だいぶ昔から続いてたよね」
「今はリメイク版が移植されてて、それでだいたいカバーできます」
「⋯⋯全部で2万円するんだ」
この嘆きに応えられずして何が先輩だろうか。
調べたところ、この移植版は『KINGDOM HEARTS - HD 1.5+2.5 ReMIX』と『KINGDOM HEARTS HD 2.8 Final Chapter Prologue』の2本であり、加えてその続編である『KINGDOM HEARTS III』がPlayStation plusのゲームカタログというサービスに入っており、エクストラという真ん中のプランなら2万円も払わずとも遊び放題であるという。さっそくこれまでのエッセンシャルからアップグレードし、1作目の『KINGDOM HEARTS -FINAL MIX-』(以下、KHFM)をプレイした。
1作目 KHFM
KHFMは『原神』や『NieR Replicant』のような、3Dのアクションゲームだ。オープンワールドではなく、ある程度の広さのマップをロードありで行き来するシステムになっている。主人公のソラは主にキーブレードという近接武器を使用するが、魔法や技も駆使して戦う。条件を満たせば、ジーニーやバンビといったディズニーキャラの召喚も可能だ。
ボス戦もあり、使ってくる技を見極めてその隙を突く戦い方が求められる。ギミックを作動させたり弱点を露出させたりする必要のあるボスもいて、ここは現代のゲームとあまり変わらない。
ストーリーのラストで、闇へと繋がる扉を閉じるためにソラの親友、リクと王様は闇の中へと取り残されてしまう。しかし、冒険を終えたソラ一行の前に王様からの手紙を咥えている(=王様と会っている?)プルートが現れ、プルートを追いかけるところでKHFMの物語は終わるのだった。
そしてRe:COMへ⋯⋯
そして、その続編となるのが、『KINGDOM HEARTS Re:Chain of Memories』(以下、Re:COM)だ。
物語はKHFMの直後から始まる。リクと王様を探していたソラ一行は忘却の城という場所に入り込むが、城の中は不思議な空間となっていて、すべてがカードに支配される場所だった。ソラの記憶から生成されたこれまでのワールドを進み、城を登っていくうちに、「なにかを得ればなにかを失う」というルールによって一行は記憶をどんどん失っていく。
本作の大きな特徴となるのがバトルシステムだ。前作のような3Dアクションゲームであることは変わらないが、本作ではあらゆる行動にカードが必要となる。それは大技だけでなくキーブレードの一振りですら変わらない。
ゲーム中、キーブレードや魔法、キャラクターの描かれたカードが手に入る。それらを組み込んだデッキで、戦闘中の行動は決まるのだ。カードは使うと消えてしまうが、「リロード」というアクションで再使用が可能となる。
そして、カードには0から9までの数字が描かれている。この数字はカードの強さを示しており、場に出されたカード(そう、行動にカードを要するのは敵も同じなのだ)は基本的に数字の大きいカードが勝つ。ただし、0だけは少し特殊で、先に出せば最弱だが後に出せば9にすら勝てる。
以上のシステムを使い、ソラは忘却の城を進んでいく⋯⋯のだが。
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サジェストには「やる必要」だの「苦痛」だの「やりたくない」だのが並んでいる。見事なまでの嫌われようである。
後輩曰く、本作は「鬼門」であるらしい。自分でもつまらなくて声が出たゲームは久しぶりだった。
どうしてこうなった?
本作がつまらない理由は主に3つあると思う。
まず、プレイしていて爽快感を感じられない。
カードの強さについては述べたが、弱いカードは一方的に弾かれてしまう。カキーンという音と共にそもそもカードが発動しないか、ぼよーんという音と共に行動がキャンセルされるのだ。これは敵に対しても同じことであり、例えば強い技を撃ってくるのに0でカウンターすればその技を回避どころか不発にできてしまう。
だが、それを覚える前にとりあえずボタンを連打していると、あまり動けないままに相手だけが殴ってくるという状況に陥ってしまう。気持ちよくコンボを決めたいのに、最終撃で間抜けな音と共に弾かれて被弾する時のイラつきを考えてみて欲しい。ただの雑魚戦ですらこうなる。
ゲームを進めて数字の高いカードや0のカードを集めたりデッキに編成できるようになったりすればいいのだが、最初はそれもできない。最初の頃が最も戦いにくいのだから、そこで嫌になるのも当然である。
第二に、システムがかなり不親切だ。
もちろん最初にチュートリアルこそあるものの、有効な戦い方やデッキの組み方は身をもって学ぶしかない。前作と比べて急に複雑になったのに、特にストーリー的な必要性も感じられない(「ここはこういうところだから」くらいの説明しかない)のだから、ストレスも溜まるというもの。
「ストック技」という3枚のカードを組み合わせて発動する技もあるのだが、これを使うと1枚目のカードがリロードできなくなり、そのバトル中は基本的に使用不能になる。考えなしに撃ちまくれば使えるカードが少なくなり、ほぼ詰みという状況になってしまう。リロードも、行うごとに所要時間が増えて隙だらけになる。
また、バトル中は①ソラの移動、②カメラの操作、③カードの選択、④カードの使用をすべて同時に行わなくてはならない。もちろん敵はその間も待ってはくれないから、かなり忙しく処理すべき情報も多い。この点も難易度を上げている理由のひとつだと思う。
最後に、敵に対して「ズルい」と思うことが多い。
もっとも一般的なシャドウという敵がいて、こいつはほぼどこにでもいる雑魚なのだが、「地面の影に潜航できる」という能力を持っている。この能力、前作であればちょっと鬱陶しいくらいだったのだが、今作では攻撃1回にもカードを要するため、スッと潜って回避されるとかなり腹立たしい。
また、ある種のボスは多段ヒットする技を繰り出してくる。これを喰らうとヒットストップが発生し、こちらがカードでカウンターすることもできないままに大ダメージを貰うこととなる。
新しいバトルシステムにこちらが四苦八苦している一方、敵だけは前作と同じようにのびのびと戦っている気がする。これも楽しくないと思う理由のひとつだろう。
敗北
最初に感じたつまらなさは本物だ。以上の点はこちらの勘違いとかでは断じてない。
なのだが、進めているとだんだん慣れてくることに気づく。死にまくったボス戦ですら、ブレイクしつつ戦うのが割と楽しい。数字や種類、カードの順番まで考えてデッキを組んで、それがうまく機能するのはなかなか気分がいい。
とか思っているとソラ編のあとにあるリク編でその楽しさを全否定され、これまで学んだことが通じなくなるというのも味わうのだが、こちらも進めていくうちにいつしか慣れてくるし、こちらの戦い方も楽しくなってくる。
なにより、今作のストーリーはアツい部分も多く、途中で投げ出さなくてよかったと思えた。今作ではちょっと出ただけの匂わせに留まるキャラもおり、続編が楽しみになる。
『KINGDOM HEARTS Re:Chain of Memories』は、たしかにつまらない。だが、そのつまらなさもいつまでも続くのではない。
「慣れれば楽しいです!」という知恵袋の言葉を信じていなかったが、結局はそれしか言えない。うっそだーと思われることを承知で、こう申し上げるしかない。『KINGDOM HEARTS Re:Chain of Memories』は、慣れれば面白さが見えてくるのだと。